狂った歯車
「くそっ!何であんな事言われなきゃいけないんだ!!」
俺はただ弟が人の物を勝手に持ってった上に壊しやがったから、叱っただけだ。
「たっくあのババアは自分の息子だけ贔屓しやがって。だから、アイツも調子に乗るんだ」
弟を叱ってたら母親が割り込んできて俺が一方的に責められた。
曰く「あなたが持ってかれる様な場所に置いとくのがいけないの。お兄さんなら弟に優しくしなさいよ」
だってさ。そう言うお前はどうなんだよ。弟も勝ち誇ったような顔しちゃって。
そんな事があって思わず家を飛び出してきた。
しかし、どこに行って良いのか分からず土手沿いをブツブツ文句言いながら歩いていたがある程度来たので腰を下ろす。
オレがそこでしばらく一人で怒っていると誰かが声を掛けてきた。
「…お前、春ちゃん?」
その懐かしい呼び方に驚き、振り返ってみると
「えっ?もしかして夏樹か!?」
「やっぱり春ちゃん!久しぶり~」
オレの幼なじみがいた。
夏樹は小学一年の入学式の時に向こうから声を掛けてきて仲良くなったんだ。
だが、長年付き合ってきたのに小学校を卒業すると同時に東京に引っ越してしまった。
そう言えば、確か近所のオバさんたちが夏樹が戻ってきてると噂をしていた気がする。
アレは本当だったのか。
「てかさ、いい加減春ちゃんはやめろよ、返事しないぞ」
「えー、いーじゃん!!春ちゃんは春ちゃんだろ?」
「うっ…そりゃあそーだが」
いつまで春ちゃんと呼ぶのかと思いやめろと言ったのだが見事に言い返されてしまう。
「ところで、春ちゃんは何でこんな時間にこんなトコにいるんだ?」
「それは………」
どうしようかと迷った。
幼なじみとは言え所詮は他人だ。
こんな人の家の下らない事に巻き込んでいいのか。
そう考えていると夏樹は何かを察したのかこう申し出してくれた。
「あの、さ…何があったのか知らないが良かったら俺ん家に泊まっていくか?」
またもや迷ってしまう。
嬉しいが夏樹やその家の人に迷惑ではないのか。
そう思い聞いてみる。
「その申し出は嬉しいが、家の人に迷惑じゃないか?」
「あーうん…家族は東京だよ。少し色々あってね」
そう言えば、東京に行ったハズの夏樹がどうしてここに。
「夏樹は何でこんな田舎に戻ってきたんだ…あれ?戻ってきたんだよな?」
「あぁ、この話は取り敢えず家に来てからゆっくり話さないか?」
「ん、分かった」
何か気付いたら流されてしまっている自分がいる。
まっ、良いか。
「ここだ。入れよ」
「おじゃましまーす……ホントに一人暮らしなのか?」
「ん、まあな。言っただろ?家族は東京に置いてきたって」
家に上がると真っ暗で人の気配がない。
アレは本当だったのか。
何だか一人暮らしってのに憧れてたが、案外寂しそうなんだな。
「なぁ、それでさ。どうしてコッチに戻ってきたんだ?」
「ん、あぁ…。取り敢えず嫌々向こうに行ってからも中学の三年間は頑張ったんだ。けどさ、やっぱり土地に馴染めなくて両親に頼み込んで、家賃だけは出して貰うんだけど他は自分で働いてどうにかするって条件で一人だけコッチに戻らせて貰ったんだ」
「ふーん…そうなのか」
本当は向こうでもっと嫌な事が色々とあったんだろう。
でも、夏樹は言い出さない。
だから、オレも聞かないでおこう。
そこでふと家での出来事を思い出す。
何であんなに秋人はひねくれたのだろうか。
初めてあった頃はオレに「春樹兄ちゃん!」とか言って懐いてくれていた。
それがどうしてああなってしまったのだろうか。
気付くとそんな事を考えていたせいで黙り込んでいた。
「どうしたんだ、やっぱり家で何かあったのか。嫌なら聞かないが…」
どうやら心配を掛けてしまったらしい。
オレは慌てて否定する。
「そんな大したことじゃねぇよ。ただ、秋人とケンカしてその勢いでムカついて家を出ただけだ」
「そっか…なら良いんだ。あっ、泊まるのは良いが家に連絡は入れとけよ」
ホッとした様子で安心したように、でも連絡は入れるように注意する。
オレは言われた通りメールで連絡を入れておく。
何か話題はないかと探して、あぁ、あの話をしよう、と話始めた
「なぁ、そう言えばさ、覚えてるか?昔、幼稚園の頃だったっけ?夏樹がオレの事が好きだとか言ってさ。んで、『大きくなったら春ちゃんをお嫁さんに迎えに来るから』とか泣きながら言ったの」
オレは笑いながら続けた。
「アレ、今考えたら可笑しいよな。男同士で。どんだけ仲良いんだって話だよな。バカだなぁ~」
昔の話をネタとして持ち出す。
小さい頃の自分の発言に夏樹も笑ってるだろうと顔を横に向けてみる。
でも………ゾッとした。
夏樹は少しも笑っていなかった。
愛想笑いや苦笑いさえも浮かべていない。
何が一体夏樹をそんな顔にさせているのか。
「なつ、き?んんっ!!」
どうしたのか聞こうと顔を近付けた瞬間、向こうから目の前に顔が迫ってきた。
「っん、ん…ふっはぁっ!!なっ、ちゅっふぁ…き……」
最初は何が起きているのか分からなかった。
口に何か柔らかいものが当たっている、分かったのはそれだけ。
しかし、次の瞬間ぬるっとした温かいものが口の中に無理矢理押し入ってきた。
頭がパニクってて何が起きているのか理解するのに暫く掛かった。
でも舌をその侵入者に絡め取られてやっと分かる。
「っんぁあっ!!な…つき?何、を…ふぁっあっ、するん、だっっ!!」
必死に押し退けようとするが、ガッチリ捕まっててビクともしない。
舌も口の中で逃げようとするが、どこまでも追い掛けられて最後には捕まる。
最後の手段で離してくれるまで、ドンドンと夏樹の胸の辺りを叩いた。
「んんんっっ…ふっ、ハァハァ……何す、るんだ…」
それから少し経つと、やっと諦めてくれたのか口だけ解放してくれた。
体の方はまだガッチリ捕まってたが。
「何って…ディープチュー?でも、さ…春樹が悪いんだよ?あの告白、別に全然冗談じゃねぇし。今でも大好きだ………なのに春樹ってばホント、ヒドい。」
そう、耳元で囁いてきた。
気付いたら春ちゃんから春樹へと呼び方が変わってる。
「オレの事が好…き?冗談だったんじゃないのか!?」
小さい頃のただの冗談、そう思っていたオレは夏樹を傷付け、ヒドい事を言ってしまった。
「ごめん…いくらでも謝るから、何でも夏樹の言う通りにするから…許してくれ…」
夏樹に許して欲しい。
その一心で許してくれ、と頼み込む。
不思議と夏樹の思いをキモいとか迷惑などとは思わなかった。
むしろ嬉しい。
そんなに思っていてくれたなんて。
それをオレが言った一言で傷付けてしまった。
「何でも?ホントか!?」
そんなオレに対し夏樹は驚いて見せる。
「ああ。何でもする。」
そう言うと、夏樹はこんな事を言ってきた。
「じゃあ春樹、お前を抱かせろ」
いきなりこう言われ最初はポカンとするが次第に意味を理解し体が熱くなる。
「……え?…え!?ちょっま、待てって!!だだだ抱くって…え、そう言う…?」
自分でも何て言ってるのか分かんない。
しかし、夏樹はニヤッとして肯定する。
「そう。『そう言う』だよ。ダメなのか?イヤなら別に良いんだぜ?ただもう許さないだけなんだからさ」
ホントに人が拒否れない言い方を心得てる。
そんな事言われたら断れない。
「……正直言うとさ、夏樹に好きだと言われて嬉しかった。嫌だと思わなかった。それは多分、心のどこか奥底で自分でも気付かないうちに夏樹を好いてたのかもしれない。でも、今はまだ好きだと断言は出来ない。夏樹は大切な親友だ。それしかハッキリ言えない。………でも、抱きたいと言われて嫌だとか逃げようとか思ってない自分がいる」
そこまで言うとオレは一旦深呼吸する。
「いいよ。オレを抱いてくれ」
「ッフウ…分かった。じゃあ遠慮はしないぞ?」
躊躇うような素振りを見せたがそれも一瞬だった。
オレはすぐ後ろにあったベッドに押し倒されてしまう。
夏樹がオレの服を脱がせズボンを下げる。
「んっ…」
手がオレのパンツの中まで入ってきて撫でる様に一通り触り握り締める。
上手い。
童貞のオレと違って夏樹はどうすれば良いのかを知っていた。
「んんっ…あっ!!」
自分のものとは思えない妖艶さを含ませた声が部屋中に響く。
乳首を噛まれて感じてしまった。
恥ずかしくて思わず口を押さえるが夏樹にあっさり取り払われる。
「感度良いじゃないか。…数増やすぞ?」
夏樹は後ろの穴に突っ込んでいた指を一本から二本へ変えてきた。
暫くグリグリとしていたがもう良いだろうと自分のちんぽを取り出す。
「もう結構慣らしたから入れるぞ」
そう言うとゆっくりとオレの事を気遣いながら入れてくる。
「よし、全部入った。動かすぞ」
夏樹と繋がったと分かった瞬間身体中に喜びの震えが駆け巡った。
「な…つき…」
痛みに耐えながら名前を呼ぶ。
「何だ?」
痛さをなるべく和らげようと努力してくれながら春樹は返事をする。
夏樹と一つになった時、自分の気持ちが分かった。
「あのさ……オレ、やっぱ夏樹の事が好きだわ」
そう言ってからこうも言う。
「夏樹と繋がれて嬉しい。っつ…きも、ち良いよ……」
どこで歯車が狂ったのか分からない。
でもコレだけは言える。
オレは今、とても幸せだ。