第8話 コマンダー・ライカ将軍
ライトとプランナーの娘はさっさと逃げていく。クッ、待てっ! 彼を捕まえれば、私は昇格間違いなしなのにっ! ……おっと、貪欲な利権を貪る悪魔が心の表面に出てきたようだ。
「君も不憫だな。そんな能力を持っていたが為に、国際政府の中将だ」
「…………。軍に入ったばっかの俺には知ったこっちゃねぇが、コマンダー・ライカ、お前はレベル5クラスの戦犯だ。以前、ビザンティア将軍を殺しているらしいな」
……ああ、あの人。キャスティクスの戦いとかいう戦いの後、フラフラしていたのを私とコマンダーレスとで一緒に仕留めた。
これに対して、国際政府も怒り爆発らしく、私をレベル5の戦犯にした。レベル6は私たちクローンのボス、キャプテン・フィルド(別名がキャプテン・ヒュノプスらしい)やその他の連合政府リーダーたちだ。
「俺も暮らしがかかっている。悪いが、お前の命は頂くぞ」
藍色の髪色をした青年は私を睨みながら言う。うわっ、こわっ。
あんな男が来るなんて予想外だ。また国際政府に恨まれそうだケド、さっさと片付けるか。私は両手に魔法ソードをもう一度握る。
両手に魔法ソードを握った私は走り出す。走りながら、大きくドーム状に張られたシールドに炎と雷の剣を突き立てる。そのまま、シールドを破ろうとするが――
「…………!」
リークが手をかざす。その途端、新手のシールドが飛ばされ、私の身体はまた弾き飛ばされる。私は宙を舞い、歩道橋の下へと転落していく。
交差点にはすでに交通規制がかけられ、一般人の姿はどこにもなかった。代わりに、何百人ものクローン兵がいた。そのど真ん中に私は倒れ込む。
「クッ……!」
歩道橋の上からリークが飛び降りてくる。私は素早く距離を取る。
そもそも、ビザンティアを討ち取れたのは、彼が戦いに疲れ果て、ボロボロの状態だったからだ。普通に戦ったら、私が勝てるワケない!
黒いレザースーツを着たクローン兵たちがアサルトライフルをリークに向ける。あの頑丈なシールドだったら、恐らく銃弾も防ぐだろう。銃火器は通用しない。
「国際政府も冷たいよね。生活という名の人質を取って、軍人にするんだもの」
最近、連合政府のディランスがカネで傭兵や賞金稼ぎを雇っているっていう。国際政府も似たようなものだ。カネで人を雇っている。
「……政治の話は知らんな」
リークが手をかざす。その途端、後ろに壁――シールドが出来る。私は慌てて横から逃げ出そうとする。……横にもシールドがある。気が付けば、上後左右にシールドがあった。そして、目の前からはリークが……
「あ、もしかして私、閉じ込められた?」
「……シールドの使い方は何も防御だけじゃない。壁にもなる」
「…………!」
よく見れば、私とリークを包むようにして大きなドーム状のシールドまで張られてあった。私の部下たちが魔法や銃撃・爆撃でシールドを破壊しようとしているケド、あまりにシールドが厚いのか(何重にも張られている?)、破れそうにない。
「ひぃ……!」
リークがナイフを引き抜いて近寄ってくる。彼の身体にもシールドが張られている。簡単には破れそうにない。
私は超能力や魔法で応戦しようとする。……あれっ? 身体が動かない。金縛りにあったように、身体がほとんど動かない。
よく見れば、私の身体は板状のシールドで拘束されていた。手足が左右のシールドと繋がった別のシールドで拘束されている。まるで手枷みたいなシールドだ。
リークが私の首にナイフを押し当てる。冷たい金属が、首に触れる。やばい、やばい! イヤだ、死にたくない!
「ね、ねぇ……」
「命乞いはやめとけ。お前の首に大金がかかってんだ」
「…………!」
あ、そうだ、いい方法があった!
「き、君を雇いたい」
「は?」
「君を国際政府よりも高値で雇って上げる。いや、雇いたい」
……買収作戦だ。この青年、どうにも自分のおカネと生活ばかりを気にしている。貪欲に利権を貪るヤツなら、どうにでもなる。さすが、コマンダー・ライカ将軍っ(将軍じゃないケド)! 頭いいっ! 私は自分の一瞬の閃きに内心、自画自賛しながら、話を続ける。
「生活もおカネもぜーんぶ私が面倒見て上げるからさ!」
「…………」
「…………」
っと、やっぱりマズイか? もし断られたら私、死ぬじゃん。いや、以前、ビザンティアを殺している私がそんなことを言うのはおかしい……いやいや、厳密には部下が数十人がかりで殺して、指揮官だった私がその手柄を貰っただけ、だけど……
「……その話、乗った」
「…………!?」
私はついニヤリと笑う。よしっ!
「別に雇い主は誰でもいい。要は……カネだな」
「だよね!? 貧乏将軍パトラーじゃぁダメだよね、アハハ!」
……給料を払うのは国際政府なんだからパトラーの財布は関係ないか。部下の給料を横領してない限り。
私は部下となったリークにシールドを解いて貰うと、さっそく一番最初の命令を下す。
「さっき逃げ出したライト=オイジュスを捕まえろ」
「……イエッサー」
ライトは元老院の副議長。連合政府のディランスでもティワード総統にでも差し出せば、また手柄を得られそうな気がしてきたっ!
もし、その手柄を得られれば、いよいよ私は将軍かも知れないっ! そうなれば……私はコマンダー・ライカ将軍!? いや、キャプテン・ライカ将軍になるのか!? つまり、クローン・リーダーのキャプテン・フィルドと同等の地位――私もクローンのリーダーに……!
今後起こりうるであろう大躍進に胸を期待でいっぱいにしている時だった。
「あ、コマンダー・ライカ中将」
「フフ、私はもうすぐ将軍に――」
空から聞こえる飛空艇が飛び去る音――
「あっ……」
それは、恐らくライトとプランナーの娘を乗せたであろう飛空艇がタイミングよく飛んでいく。飛空艇はあっという間に北の空へと消えていった。
私は、はっとしてリークに近寄る。呆然とする彼を後ろ向かせ、マントに覆われた首辺りをごそごそと触る。硬い装甲服に何か硬い金属状の物が付いている。私はそれを半ば無理やり取る。……小型盗聴器だ。
「盗聴器!? いつの間に!?」
「……ライトは君のことを信用していなかったようだね」
……ライトは、私とリークの性格を見抜いていたのかも知れない。――コマンダー・ライカ将軍は再び夢となった。
※戦犯レベル
・戦犯レベル5には、第2章にて登場したコスモネット中将などがいます。
・戦犯レベル6には、キャプテン・フィルドやディランスなどがいます
・戦犯レベル7には、連合政府のグランド・リーダーであるティワードがいます。