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黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第2章 戦乱の弱者 ――産業都市グランドシティ――
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第4話 女奴隷と生きた爆弾

 さっきまでのフラフラとした動きはどこへ行ったのか、奴隷の女性たちは勢いよく私たちに向かって走ってくる。


「ど、どうしよ―― クラスタ!?」


 クラスタは剣を握り、迎え撃つ。抱き付こうとする女性たちを次々と殺していく。剣で首を斬り、胸を貫き、その命を奪っていく。

 剣で斬られ、貫かれた彼女たちは血と蛍光色のドロドロした液体を撒き散らしながら、倒れていく。緑色のスライムは気化して消えていく。


「お、おお!? あの女、全くお構いなしじゃねぇか!」

[しかし、パトラーは違います。狙うなら、彼女にするべきかと]


 コスモネットの側にいた黒色の鋼のロボットが言う。マントまで羽織った機械なんて初めて見た。あのロボットは何者なんだ!?

 そんな事を思っている間にも、クラスタの迎撃を逃れた一部の女性たちがこっちに走ってくる。私は……撃てなかった。


「……パトラー!?」


 私を勢いよく押し倒した女性はがっちりと私の身体を掴むと、無理やり口を合わせてくる。私の口の中に何かがねじ込まれそうになる。

 だが、その直前に彼女の首が斬られ、床に転がる。身体を抑えていた腕の力も失われる。私の服にべっとりと血が付く。

 クラスタは私の手から無理やりサブマシンガンを奪い取ると、それを使ってすぐ近くにまで近寄って来ていた女性を次々と撃ち殺していく。

 私はその光景をただ見ているしかなかった。分かっていた。さっきの彼女が、私に何をしようとしたのか。


「ええい、女を増員しろ! こんなのは想定外だ!」


 コスモネットが焦り出す。反撃が予想外なのだろう。

 さっきの彼女は私の口に何かを流し込もうとした。きっと彼女たちの体内にあるスライムだろう。それを入れられれば、操られる。

 私が操られれば、今グランドシティ外縁部で戦っている私の部下たちはどうなる? 私を人質に、撤収させられるかも知れない。いや、最悪、殺されるかも知れない。クラスタだって……

 でも、――


「クラスタ、やめて!」

「パトラー!?」

「…………!?」


 私はクラスタに飛びかかろうとする。その動きを読み取った彼女はさっと避け、私を蹴り倒す。私の背に足を乗せ、迎撃を再開する。


「もう、あの女性たちの運命は決まっている。彼がここを去れば、体内のスライムは消え、あの女性たちは死ぬ」

「でも!」

「死期が少しだけ早まるだけだ」


 そう言うと、彼女は最後の1人に向け、心臓を狙い撃つ。最後の女性はまだ年若い少女だった。彼女は撃たれると、胸を抑え、苦しそうな声を上げながら、血を吐き散らし、息絶える。

 一方、コスモネットは、バトル=メシェディに身体を支えられた女性の口に、自らの口を合わせようとしていた。


「いやあぁぁ! 助けて、いやだあぁぁッ!」

「アイツ!」


 コスモネットは構わず、口を合わせる。少女の目から涙が頬を伝って流れる。その身体は激しく暴れるが、スライムの身体を持つコスモネットには全く効果がない。


「んん! んんん!!」


 少女の白い身体が激しく痙攣する。私は残ったサブマシンガンを握り、走り出す。いや、コスモネットに物理攻撃は効かない。どうすれば……

 私が近くに寄ってくるとコスモネットは勢いよく彼女の口から離れる。私は床に倒れそうになった少女を抱き抱える。その間に彼は距離を取る。


「いやだぁっ、死にたく、死にた、く、な……」

「大丈夫だ! 絶対に助け――」

「パトラー!」

「えっ?」


 クラスタが魔法発生装置を内蔵したハンドグローブを振り、私に物理シールドを張った時だった。抱き抱えていた少女の身体が爆弾のごとく爆発した――



◆◇◆



 ――爆音。間に合ったかどうかは分からない。パトラーが抱き抱えた少女は、もはや生きた爆弾だった。大量に飲まされたスライム。それが爆発したのだろう。


「クッ……!」


 爆風が収まる。少女の身体は木端微塵になり、パトラーは壁に叩きつけられて気絶していた。辛うじて物理シールドが間に合ったらしい。上手い具合にまだメイン・ロビーにいたバトル=アルファやバトル=ベータの多くが、床に倒れ込み、機能を失っていた。


「あのれ、よくもスライム・ボムを!」

[コスモネット中将、気絶したパトラー=オイジュスを犯し、スライム奴隷化すれば、当初の計画通り、政府軍を撤収させることが可能です]

「おっ? おお、そうか!」


 当初の計画だと? そうか、あの黒い新型戦術ロボットのヤツ、私たちを罠にハメたんだな。私たちがここに来る事を予測していたのか。

 コスモネットは床に転がったパトラーに触れ、彼女の服に手をかける。ズボンのベルトを緩め、脱がそうとする。


「死ね、ブタ!」


 私はコスモネットの大きな背中にサンダーを落とす。彼は物理攻撃は効かないが、魔法攻撃は普通に効く。

 だが、彼は全く動じずに、私の方を振り向き、ニヤリと笑う。笑うと、再びパトラーの服に手をかける。どうなっている!?


「ふへへ、俺がなんのために装甲服を着ていると思ってんだ?」

「…………!」


 しまった! あの装甲服、魔法防御に特化した装甲服だったのか! そうなると、私の付けているハンド・グローブから発することの出来る魔法程度じゃ打ち破れない。

 しかも、新型戦術ロボットまで立ちはだかる。その黒いロボットは強力なシールド――キャンセル・シールドを張り、私の行く手を塞ぐ。


[ワタシが相手をしましょう]

「邪魔だ!」


 私はサンダーと火炎弾を飛ばす。だが、キャンセル・シールドと戦術ロボット自身の頑丈な装甲に阻まれ、ダメージを与える事が出来ない。その間にも、パトラーは下半身の衣服を剥ぎ取られ、床に転がされる。


[コスモネット中将とディランス閣下の前にお前たちは死を迎える。残念だったな]


 笑いながら、話す黒色の戦術ロボット。その後ろでは、コスモネットがパトラーに覆い被さろうとしていた――

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