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黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第10章 弱者の反撃 ――ホープ州――
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第33話 逆襲

 【希望都市ホープシティ 最高司令室】


 余の元に届く報告は全て凶報であった。ホープ州各地に配備した余の軍勢は次々と突破されていく。すでにテトラル本部も氷覇本部も陥落したという。


「こんなハズでは、こんなハズでは……」


 兵力では遥かに連合軍の方が多かった。なのに、クラスタとパトラーの率いる政府軍は破竹の勢いでホープ州を制圧していく。一部では市民が反乱を起こし、政府軍と協力を計っているともいう。


[ディランス閣下、クラスタ率いる軍勢がホープシティの南に現れました]

「ぬぅ、人垣を盾にし――」

[閣下、ホープ州の各地で反乱が連鎖的に起きています。ホープシティの人垣とてやがて反乱を起こすでしょう。ここは直ちに連合政府首都へとお逃げください。みっともないでしょうが、今ならまだ間に合います]

「…………! ふざけるな! 余はまだ負けておらぬ! すぐに軍勢を収集させよ! 余自らクラスタを血祭りに上げてくれる!」

[イエッサー]


 バトル=タクティクスは余に背を向けて去って行く。何が連合政府首都ティトシティへの撤収だ! 逃げれば、余の名声は、地位は、権力はどうなるというのだ!

 しばらくすると、再びバトル=タクティクスが戻ってくる。どうやら軍の準備が出来たらしい。余は豪華な装飾品が施された美しき装甲服を纏い、最高司令室から出ていく。



「クラスタ率いる政府軍は連戦で疲れ果てておるハズだ。この戦い、余の勝ちだ!」

[演説は結構です。早く出撃してください]

「黙れ! 貴様、たかが高位戦術ロボットのクセに口を挟む出ない! お前はこの都市を死守するのだ!」

[イエッサー]


 余は黄金や宝石などの装飾が無数に取りつけられたスピーダー・カーに乗り込むと、ホープシティの連合軍と警備軍を率いて発進する。バトル=アルファやバトル=ベータといった軍用兵器が30万。人間の兵士が3万。なに、余の勝ちは決まっている。

 ホープシティは、戦乱に巻き込まれて逃げ惑うしか能のない市民と、連合軍10万の軍勢で守られている。こちらも安泰だ。





 【ホープ州 ジェイクレイ山地】


 大軍を発進させて2時間。余の軍勢はジェイクレイ山地に入った。ここを超え、更に南下すると、クリハスト地方に出る。その地にクラスタはいるらしい。


[あー、ディランス閣下]

「なんだ?」

[敵の指揮官・クラスタです]

「な、なにっ!?」


 余は窓のカーテンを勢いよく開ける。そこにはスピーダー・バイクに乗った女が見えていた。白色の軍服に青色のマントを羽織った女――間違いなくクラスタだ。彼女は小高い丘の上にいる。その周りには少数の兵士。


「くそっ、余をバカにしているのか! 丘を登り、あの女を殺せ!」


 余は近くのバトル=アルファやバトル=ベータに命令する。命令を受けた軍用兵器たちは、丘に向かって走り出す。何百体もの軍用兵器が走って行く。

 その時、一帯の山から銃撃音が鳴り響く。と、同時に爆音まで鳴り響く。余を乗せた浮遊車も揺れる。


「なんだ!?」

[あー、えーっと、山のアチコチに伏兵がいたようです]

「伏兵? なんだそれは?」

[政府軍の兵士が茂みや森を利用して隠れていたようで――]


 そこまで言ったバトル=アルファの首が、どこからか飛んできた銃弾によって弾き飛ばされる。火花を散らしながら、その首は余の車に当たる。


「お、おお!? に、逃げるのだ!」


 余は慌てて車を運転するバトル=メシェディに命令する。だが、やや大型のこの車。後ろを向くのに時間がかかる。これでは浮遊戦車の方が早い。

 しばらくして、ようやく逆方向を向いた余の車。部下のバトル=アルファやバトル=ベータを弾き飛ばしながら、発進する。周りにはスピーダー・バイクに乗ったバトル=パラディンが4騎いた。……4騎? 確か最初は16騎いたハズだぞ!?


「全部隊に余を死守するように命令せよ!」

[しかし、クラスタ軍の伏兵は数が多いです。これは何重にも仕掛けられたワナです。伏兵の包囲網。その真ん中に我々は――]

「ええい、なにを言ってるのか分からんぞ!」


 そもそも戦いは軍人の仕事だ! 余がここにいること自体がおかしい! ここにいるべきはギャラクシアやコスモネットだ!

 車を通常の倍の速度で走らせる。もう何十体と軍用兵器を轢き壊したか分からぬ。だが、余さえ生き延びればもう一度、立て直す事が出来る。

 やがて、余のホープシティが見えてきた。あそこにいけばバトル=タクティクスもいる。しつこく追って来る政府軍を一網打尽に――


[ディランス閣下、ホープシティはすでに陥落しています]

「は? それはどういう意味だ?」


 余は窓から身を乗り出してホープシティを見る。ホープシティの前にはすでに政府軍が陣取っていた。先頭にいるのは、政府軍の将軍・スロイディア。


「ほう、まだ生きていたのか、ディランス」

「そ、そんなバカな……」

「バトル=タクティクスはお前が出撃したと同時にすぐに撤収したぞ」

「…………!?」


 そ、そうか、あの戦術ロボット、余を見捨てたな……! いや、違う。余をわざと出撃させ、最初から見殺しにする算段だったか! あの戦術ロボットが考えたことではあるまい。ならば、連合政府総統のティワードが……!


「余は負けてはおらぬ! ホープ州から東進して首都を目指せ! グズグズ――」


 その時、どこからか銃弾が飛んでくる。それは余の右肩を貫く。車から身を乗り出し過ぎていた余はそのまま地面に転がり落ちる。同時に辺りで銃撃戦が始まる。


「こ、今度は……」

[連れてきていたホープシティの警備軍が反乱を起こしました]

「早く、鎮圧――」


 目の前のバトル=アルファが撃ち倒される。白い装甲服を着たホープシティの警備軍が数人、走り寄ってくる。余は慌ててその場から走り去ろうとする。


「お前に殺された市民と同士の怨み――!」

「あんたによって殺された仲間の仇だ!」

「連合政府の終わりだ!」


 後ろから飛んでくる銃弾が、余の背中と右脚を貫く。余は地面に再び倒れる。こんなハズでは――


「トドメだ!」


 兵士の1人が腰に装備していた剣を引き抜き、思いっきり振り上げる。彼はそのまま何の躊躇もなく、余の首を勢いよくハネた――

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