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黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第9章 結晶の友情 ――アイス・クリスタル城――
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第29話 パスリューシティの戦い

 戦争は友情さえも引き裂く。


 戦争が終われば、より親密な関係になれるであろう2人。


 戦争が終わらぬ故の悲劇。


 戦争は友情さえも引き裂いてしまうのか――
































































 【結晶都市パスリューシティ 市街地】


 パスリューシティは大陸北西部の最果ての位置するパスリュー州の州都だ。雪が降るこの地で戦うのは第10兵団を率いる私と、第8兵団を率いるジェルクス将軍。

 地方の州都なだけに首都グリードシティや商業都市ポートシティのように大きな建物は少ない。クリスタル=レンガ造りの建物が多い。幻想都市ファンタジアシティほどではないが、ここも結構美しい場所だ。

 そんな場所で、私たちは連合軍と戦っていた。相手はシリオードから戻ってきた七将軍ケイレイトとコマンダー・レク。


「ピューリタン将軍、連合軍の大多数は敗走しました」

「よし、このままパスリューシティから連合政府勢力を排除するんだ!」

「イエッサー!」


 ケイレイトはさほど有能な将軍じゃない。風のパーフェクターとはいうケド、指揮官としての能力は低い。私たちがパスリュー州に攻め込んで長くなるケド、連戦連勝だった。すでにパスリュー州東部は制圧。中部のパスリューシティを今は攻撃中だった。


「ピューリタン、油断するなよ!」

「なに、大丈夫だ! 私がケイレイトなんかに負けるワケない!」


 仲間のトワイラル少将の忠告を受けつつも、私はバトル=アルファやバトル=ベータを楽々と斬り倒していく。ホープ州だったら、ここまで楽にはいかないだろう。あそこにはプロヴィテンスやプロパネといった有能な指揮官がいるからな。


[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]

[攻撃セヨ! 破壊セヨ!]


 雪が降る中、ご苦労な連中だ(まぁ、もうすぐ春だけど)。私は陣形の崩れた連合軍の軍勢を、斬り倒していく。

 仲間のミュートという女の子が、弓状の武器を使って、魔法アロー(矢)を飛ばす。アローは正確にバトル=アルファらの身体を撃ち抜いていく。さすがだな。


「そういえば、パトラー将軍、第4・5・7・9・11兵団の指揮官になったんだって!」

「ああ、そうらしいな!」


 私の友達にパトラーという女性がいる。彼女は5つの兵団の指揮官となり、北西将軍・南西将軍の地位も得た。

 彼女の兵団に所属するクラスタが中心となって、つい先日、遂にテクノ州・フランツー州・グランド州・サフェルト州・ポート州の5州を完全に平定した。西部戦線における戦いを終わらせたという。

 クラスタは清廉な議員・官僚・社会科学者を大勢引き連れ、5州の行政システムを復興させている。大勢の難民の救済を行っている。

 5州平定後は、ホーガム将軍、スロイディア将軍、クディラス将軍の3人とその兵団を呼び寄せ、復興と防衛・治安維持を行っているらしい。


「このパスリュー州も制圧後は、パトラーの傘下に入る予定だ」

「じゃ、頑張らないとね!」


 私は頷きながら、バトル=アルファ軍団と戦い続ける。このパスリュー州が制圧されれば、大陸西部7州の内、レーフェンス州を除く6州がパトラーの管轄地となる。

 私は内心、期待しながら剣を振る。戦い続けた甲斐があった。大陸西部には再び平和な時代がやってくる。戦乱の時代は終わりを迎える――



◆◇◆



 【結晶都市パスリューシティ 郊外 アイス・クリスタル城】


 パスリューシティの西部。市内からやや離れた場所に、美しいクリスタル=レンガで造られた城がある。私たちはそこに拠点を設けていた。

 コマンダー・レクとバトル=アレス、バトル=アテナ率いる連合軍は敗北した。すでにバトル=アレスとバトル=アテナは破壊されたらしい。


[ケイレイト将軍、コマンダー・レク少将率いる軍勢は敗北しました]


 私の側にいたバトル=アレスが報告する。私はアイス・クリスタル城の正面テラスから遥か遠くのパスリューシティを眺めていた。


「バトル=アレス、ここの軍勢を率いて連合政府首都ティトシティに撤退して」

[しかし、このアイス・クリスタル城が陥落すれば、連合政府勢力はパスリュー州での支配権を完全に失います]

「……構わない」

[イエッサー]


 バトル=アレスは私の側から去って行く。このアイス・クリスタル城にいる兵員は10万ほど。軍艦6隻。これだけの兵力で政府軍と戦うのはムリだ。

 それに――


 しばらくすると、アイス・クリスタル城の周辺に配備されていた軍艦5隻は遥か東方を目指して飛んでいく。

 この時には、コマンダー・レクもパスリューシティからアイス・クリスタル城に戻って来ていた。私は彼女の元へ足を向ける。



「あ、ケイレイト将軍」


 アイス・クリスタル城の1階にはコマンダー・レクと数人のクローン兵が集まっていた。さっき、機械の軍勢は全て撤収させたから、残っているのは僅かな数のクローン兵だけだ。


「…………!?」


 クローンたちに混ざって、誰か違う人がいる。あの服装は政府軍人だろうか? 私は慌てて側に駆け寄る。……そこにいたのは、クローン兵に両腕を掴まれ、無理やり引きずって来られたと思われる政府軍人。既に気絶している。


「ケイレイト将軍、“この人”、知ってますよね? 油断して私に斬りかかってきたのでとっ捕まえました! この人を使えば、連中は攻め込めませんよ!」


 嬉しそうに話すコマンダー・レク。捕まえて来られたのは、政府特殊軍将軍のピューリタンだった。


「…………」


 私の当初の計画では、特に連合政府のために戦うつもりは全くなく、これまでのパスリュー防戦も全て形式的にやっているだけだった。そして、この城もコマンダー・レクと一緒に捨てるつもりだった。

 これは、少しマズイ……

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