第2話 第2次グランドシティの戦い
戦争とは残酷だ。
死ぬのはなにも戦争の執行人――軍人だけではない。
“舞台のいる者”全員が死の危機に瀕す。
なにも好き好んで戦争の舞台にいる者ばかりではない。
中には、巻き込まれた者もいる。
そして、戦争は弱者から順に幸福と生命を奪っていく――
【産業都市グランドシティ 上空】
中型飛空艇5隻。兵力2万人。
[全部隊、かかれ!]
それぞれの飛空艇から何機もの白色のガンシップが飛ぶ。政府軍のガンシップは大型の戦闘ヘリだ。機体上部左右にプロペラが取りつけられ、そこそこ速い動きで飛べる。
何十機ものガンシップの中の1つに、私も乗っていた。
「パトラー! 連合軍だ!」
向かう先から何機もの黒い小型戦闘機が飛んでくる。対空戦闘用の小型ロボット――バトル=スカイだ。やや楕円形をした黒い小型機の左右にあるマシンガン。機体中央の砲身。合計3つの武器で攻撃してくる。
何十機ものバトル=スカイは激しくガンシップを攻撃してくる。私たちも応戦する。ガンシップの機体左右に取りつけられたガトリングガンで撃ち落としていく。
「…………!」
窓から外の戦闘を見ていると、ガンシップが1機、爆発し、砕け散りながら、地上へと落ちていく。そのガンシップだけじゃない。他にも、何機ものガンシップが破壊され、炎と共に落ちていく。
「将軍、連合軍の軍艦です!」
ライポート准将が指をさす。黒い大きな飛空艇がグランドシティの方角から飛んでくる。4隻もある。あの軍艦からこのバトル=スカイは飛んできているのだろう。
「敵は連合軍・九騎のコスモネット中将です。あの様子だと、グランドシティはもう……」
「陥落したって? だったら、取り返すだけだ!」
コスモネットがグランドシティを攻撃してからすでに3日。グランドシティが陥落した可能性は高い。連合政府の統治は褒められたものじゃない。かつて、ある連合政府リーダーは子どもを実験台に使った。また、別の連合政府リーダーは市民を戦闘実験に使い、多くの命を奪った。
彼らに平和な世界を実現させることは不可能だ。そもそも、弱肉強食を間接的に謳っている。絶対的な資本主義。絶対的な、自由な市場主義。彼らの頭に、力ない人のことは考えてない。弱者のことが頭にない。
「予定通りだな」
「私たちのガンシップはグランドシティ南部へ回れ!」
「イエッサー」
運転席に座る兵士が言う。私たちを乗せたガンシップは急に向きを変え、隊列から離れる。私たちは他の部隊とは別行動を取る。
グランドシティ北部から侵攻するのは本隊。私たちだけが南部から市内に入り、敵の指揮官コスモネットを捕まえる予定だった。
私たちのガンシップは大きく迂回し、30分ほど飛んだ後、南部から市内へと入る。予想通り、市内に連合軍の姿は見えない。いや、見えないだけ、か。
「パトラー将軍、着陸地点です」
「よし、行くぞっ!」
私たちはガンシップ後方の扉が開くと同時に飛び出し、走り出す。これ以上、飛んでいると撃ち落されかねない。
三日月が出ている薄暗い夜のグランドシティ。私たちは無人の市内を走り抜ける。コスモネットがいるグランド防衛師団要塞まではそんなに遠くない。
[あ、敵だ!]
[殺せぇ!]
市内を警備していた黒色の人間型戦闘ロボット・バトル=アルファが私たちを発見すると、手に持った連射可能な銃火器であるアサルトライフルを使い、発砲してくる。
私は腰に装備していたサブマシンガンを引き抜くと、警備していたバトル=アルファらに銃口を向け、発砲する。コンパクトな銃弾が何十発も飛び、バトル=アルファを撃ち倒していく。
「ぐぁっ!」
「…………!」
私のすぐ側を走っていた兵士の1人が倒れる。後ろから誰かに狙撃されたようだ。銃弾が飛んできた方向を見ると、バトル=アルファと同じく人間型ロボットのバトル=メシェディがライフルで狙撃していた。
私はライフルを持ったバトル=メシェディに向かって手を振る。その途端、サンダーが落ち、その戦闘用ロボットはガクリと首を落とし、倒れる。
私の付けている藍色のハンドグローブには魔法発生装置が内蔵してあった。これを使う事で魔法を使う事が出来る。
「パトラー!」
クラスタが前方を指差す。私たちの向かう先から、濃い緑色をした戦車が進んでくる。連合軍の低空浮遊戦車だ。戦車上部の蓋を開け、身を乗り出すバトル=コマンダー。私たちに向かって手を振る。
[攻撃セヨ!]
戦車の周りを歩いていた10体ほどのバトル=アルファ部隊が一斉に射撃してくる。何度も射撃音が鳴り響き、弾が飛んでくる。
私はサブマシンガンで、兵士たちはアサルトライフルで応戦する。バトル=アルファは強い敵じゃない。簡単に倒す事が出来る。
「パトラー将軍、バトル=メシェディです!」
「クッ……!」
後ろからナイフを持った2体のバトル=メシェディが走ってくる。細長く、逆三角形に近い目をした機械の兵士が走ってくる。彼らのレッド・アイは私を捉えていた。
私はサブマシンガンを使い、バトル=メシェディを撃ち倒そうとする。でも、バトル=アルファと違い、彼らはそこそこ強い。いや、強いって言うか、素早く柔軟な動きをする。
人間じゃ到底出来ない動き――ジャンプしながら素早く身体を捻じ曲げ、銃弾を全て避ける。バトル=メシェディが迫ってくる。
「バトル=アルファじゃなくて、メシェディを量産すれば、勝てるだろうに!」
私は剣を引き抜く。すぐ近くに迫っていた機械の兵士に対し、横から斬りつける。ナイフで防ぐが、私は素早くもう一度斜めに斬りつける。今度は上手くいった。そのバトル=メシェディは肩から斜めに斬り裂かれ、火花を散らしながら倒れる。
ところが問題はもう1体だ。
「う、うわっ!」
私のすぐ横にまで迫っていたそのバトル=メシェディはナイフを振り上げていた。ナイフが振り降ろされる。私は反射的に腕で防ごうとする。
しかし、ナイフが私の腕を斬りつける事はなかった。剣がくるくると回転しながら、その機械の兵士の首をハネる。
「大丈夫か?」
「クラスタ!」
剣を投げたのはクラスタだった。彼女も剣を主要武器として使う(私は1本だけど、クラスタは2本――二刀流で戦う)。
私は剣を拾い上げ、クラスタに渡す。すでに襲ってきた敵の機械兵は全滅していた。しかし、部下の数も減っていた。戦闘でやられたようだ。
「4名が死傷しました」
「そ、そうか……」
私はサブマシンガンを腰に戻す。死んだ兵士たち。彼らの死を無駄にはしない。絶対にコスモネットを捕まえる! 私はすぐ近くに迫ったグランド防衛師団本部を視界に入れながら、心の中で思った。
※サブタイが「第2次グランドシティの戦い」となっているのは、「夢Ⅱ:7章」で第1次グランドシティの戦いがあったからです。その時の戦いではパトラーは全く関わっていません。本章とも特に関わりはありません。