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黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第8章 政府の使命 ――サフェルト州――
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第28話 政府の使命

 【ポートシティ ポート州庁 飛空艇離着陸場】


 わたしが帰ろうとした時、顔色の悪いトーテム議員がやってくる。


「ライト議員、メサイア長官! あなたたちポート州軍を勝手に動かしましたな! これは、不当だ!」


 相変わらずの甲高い声であったが、それはやや震えていた。


「いえいえ、わたしたちも気が付いた時には1000人ほどの兵士とクォット将軍は出撃した後でして、いやぁ、困ったものです」

「なにをっ」

「彼らは違反をしました。しかし、2万人もの哀れな難民を救った事は、事実ですなぁ」

「ぬぅぅっ……!」


 悔しそうな顔をするトーテム議員。彼らは違反として処分されるだろうが、それも形式的なもので終わるだろう。本当に処分しようものなら、市民が黙っていない。すでに、ポートシティでは彼らを賛美している人々が出ている。


「この件、我らは忘れないぞ!」


 かなり内心焦っているようだ。トーテムは捨て台詞を吐き、去って行く。さて、彼らには、連合政府・コマンド総督からどんな処分が下る事やら……


「ライト副議長、この度は我らにもう一度、政府の人間としての使命を思い出させて頂き、ありがとうございました」


 連合政府と裏で繋がる財閥連合のトーテム議員らが去ると、急にメサイアさんが頭を下げ、礼を言う。


「いえ、礼を言うのはわたしの方ですよ。あなたの決断で、2万人の難民が救われたのです」

「実は今回の件を通して、先ほど申し上げた通り、政府の人間としての使命を思い出しました。事実上の中立、少し考えさせて頂きます。……今度、南西将軍・北西将軍を兼任される方がいらっしゃるそうです」

「…………!」


 それは、娘のパトラーのことだった。あの子はレーフェンス州・ポート州・サフェルト州・グランド州の警備軍を統括する南西将軍に、更にはフランツー州・テクノ州・パスリュー州の警備軍を統括する北西将軍に任命された。

 また、クラスタは多数の清廉な議員・官僚・社会科学者を引き抜いている。崩壊した大陸西部の行政システムを立て直すためだろう。


「わたしたちポート州としても、パトラー将軍に最大限、協力したいと考えております」

「……ありがとうございます。娘を、よろしくお願いします」


 わたしは深々と頭を下げる。厚い雲の間から、光が差し込むのを感じた。大陸西部における戦争の終結を感じた気がした。
















































◆◇◆

















































 【連合政府首都ティトシティ ヴォルド宮】


 わたしは最高司令席に座りながら、目の前の大型コンピューターから映し出されるデータを見ていた。大陸西部における戦況だ。ディランスの愚か者によって、大陸西部の連合政府勢力は、消えていた。


「生き残っていた有能な人材とその軍を全てホープ州に集めるとはなんと愚かな……」


 ディランスに対して、怒りに似た感情が湧きあがっていた。いや、もちろん、全てディランスの責任ではない。

 連合政府のリーダーであったコメット、メディデント。九騎のログリム中将、グレート中将、リーグ中将、コスモネット中将、ゴリアテ中将、ギャラクシア中将が死んだことも大きな要因だろう。そして、アレイシア本部のキャプテン・フィルドに至っては命令を聞かなくなり始めている。


[ティワード総統、また凶報です。東部戦線にて、我が軍劣勢との――]

「分かっておる」


 バトル=タクティクスがまた凶報を受信したようだった。最近、東部戦線における戦況も思わしくない。東部戦線が陥落すると、この連合政府首都に雪崩れ込まれる。

 ……やむ負えん。もはや大陸西部は失ったも同然。ここはアヴァナプタ将軍、プロパネ将軍の七将軍2人とプロヴィテンス中将、フリゲート中将、アクセラ中将の九騎3人を呼び戻すしかない。


 わたしは画面を見る。すでにフランツー州・テクノ州・グランド州・サフェルト州・ポート州の5州が陥落した。ケイレイトが防いでいるパスリュー州も陥落は時間の問題だろう。幸いにして、レーフェンス州には攻め込む様子がないが……


「バトル=タクティクス」

[はい、なんでございましょう?]

「アヴァナプタ将軍、プロパネ将軍、プロヴィテンス中将、フリゲート中将、アクセラ中将をホープ州から撤収させ、この首都に集めよ」

[イエッサー]


 このままでは戦争に負ける。政府の使命は、戦争に勝つことだ。戦争に勝ち、連合政府を世界唯一の統治機構とすることだ。

 いつの日か、パトラー、ライトを敗北させ、国際政府を滅ぼし、連合政府による統治を実現させよう。それが、この戦争を引き起こした張本人である“パトフォー閣下”の命令だ。


[ティワード閣下、ディランス閣下はどうなさいますか?]


 連絡を入れ終ったらしいバトル=タクティクスがわたしに話しかけてくる。


「あの愚か者には、死んで貰おう。ホープ州をあのような侵略をした以上、あの地を我ら連合政府は今しばらくは統治出来ぬであろう。彼と連合政府の距離を置き、パトラーらに殺させるのだ」

[そうですか]

「…………」


 バトル=タクティクスは去って行く。本来であれば、ディランスを見捨てるというのも、あまりよくない手段だ。

 だが、もはや彼を連合政府リーダーの1人と呼ぶには相応しくない。残念だが、彼には死んで貰うしかない……

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