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黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第1章 混沌の世界 ――政府首都グリードシティ――
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第1話 苦悩の女性軍人

 3年に渡る戦争は、世界を順調に壊していた。


 罪のない無数の人々が、戦いに巻き込まれ、死んでいった。


 とある女性軍人は、平和を求めて戦いに身を投じる。


 それが本当に正しいのかどうかは、私は分からない。


 だが、行動しなければ、彼女の夢も叶わない。


 問題は、『やり方』だろう――





















































































 【政府首都グリードシティ 軍事総本部】


 連合政府と対立する国際政府の首都グリードシティ・軍事総本部。私たちは軍事総本部の城壁の上から市街地を見下ろしていた。


「パトラー将軍、デモ隊の数は増える一方ですな」

「……そうだね」


 私の横にいた男性――強化プラスチック製の装甲服を着たラスポート准将が声をかけてくる。彼の言うように軍事総本部の前には何百人もの市民が集まる市民の数は増えつつあった。彼らの持つプラカードには『戦争反対』や『和平解決』、『戦犯クェリア辞任しろ!』、『独裁反対』などと言った“声”が書かれていた。

 戦争が始まって、すでに3年になる。市民の生活は破壊され、めちゃくちゃになりつつあった。生活の破壊はなにも戦いによるものだけじゃない。増え続ける税金。減っていく社会保障。泥沼化し、長期に渡る戦争は、市民に多大な負担をかけていた。


[サラマ・テクノで一般市民を虐殺ジェノサイドしたクェリアを許さないぞ!]

[税金を減らせ! 餓死者が出ているぞ!]

[難民を見捨てるな!]

[マグフェルト総統の独裁を許すな!]


 怒りの声が私たちに浴びせられる。少し間違えば、暴動になりそうな勢いだ。軍事総本部の城壁と言っても、5メートルほどしかない。やろうと思えば、入り込める。

 彼らの声は、確実に国際政府への不信を現していた。政府軍による横暴。独裁化していく政治。市民を守るという、かつての国際政府はすでに消えつつあった。今の国際政府は、戦争に勝つだけの組織になりつつある。


「パトラー将軍、そろそろ時間です」

「うん、そうだね」


 私は怒りの声を上げる市民に背を向け、その場から去って行く。

 空はオレンジ色。日が傾いていた。血の色をした不気味な夕日。その空を飛ぶ白色のベースとした政府軍の大型飛空艇が軍事総本部から飛んでいく。どこかの戦場へと行くのだろう。

 ――世界は、どうなってしまうんだろう……





 【首都グリードシティ 元老院議事堂 元老院議会場】


 私は元老院議会場へと入ると、自分の椅子に座る。横には私の補佐官として女性軍人のクラスタがいた。


「それでは、ただいまより元老院臨時議会を再開します」


 中央の議長席で、国際政府のリーダー・マグフェルト総統が大きな声で話す。元老院議会場では、議長席を囲む形で、議員席が配置されている。合計で1800人の元老院議員の議席がある。とは言っても、辞任や死亡で空席もある。


「一週間前より出されている特殊軍将軍・12兵団管理官クェリアの不信任案について、――」


 さっきの市民たちが言っていたクェリアの名が出る。私と同じ政府特殊軍の女性将軍だ。彼女はサラマシティとテクノシティで連合政府の市民を虐殺している。そのせいで、今こうして不信任案が出ていた。これが可決されると、彼女は軍人としての地位を失う。それは同時に戦犯として扱われることになる。


「さて、あの女のしたことがいいのか悪いのかが決まるな。一応」


 もし、可決されれば、彼女は大量虐殺の罪で処刑されるだろう。可決されればの話だけど。


「それでは議員の皆様はお手元の採決ボタンを押してください」


 マグフェルト総統の言葉に、私は議員席のコンピューターパネルに触れる。――押したのは、賛成。彼女のしてきたことはメチャクチャだ。絶対に許さない。

 私はクェリアと何度か任務を共にしたケド、彼女の行いは絶句する。彼女の任務地では必ず虐殺が起こる。だからこそ、私は数人の議員・将軍と共に、彼女の不信任案を議会に提出した。


「――賛成645票、反対1131票。よって本案を否決とします」


 拍手が鳴り響く。多くの議員がクェリアの続投を望んだようだった。私は分かり切っていた結果に顔色を変えず、その場から出ていく。後からクラスタも付いてきた。


「あれだけのことをしておきながら彼女の罪を問えないとは、国際政府も末期だ!」

「…………」


 強い口調で言うクラスタの言葉に偽りはない。私もそう思う。反対票を投じた多くの議員が、クェリアらの賄賂を受けたのだろう。もちろん、マジメに考えて反対票を投じた議員もいるだろうけど。

 でも、連合政府も末期だ。そもそも連合議会の上院議員は、連合政府の母体ともいえる大企業のリーダーや将軍たち。下院議員もその大部分が企業の幹部や軍人。市民の声が届く場所じゃない。





 私は元老院議事堂内にある自分のオフィス兼自宅に戻ると、さっさとシャワーを浴び、着替えると、ベッドに寝転ぶ。冷たいシーツが素肌に触れる。


「明日から私たち、産業都市グランドシティに行くんだよな?」


 私の横にあるベッドに入っていたクラスタが言う。そう、明日から産業都市グランドシティへと向かう。また戦いの日々だ。


 3年前まで世界は平和だった。なのに、今は戦争の時代だ。毎日、どこかでたくさんの人が死んでいる。生き残っても、救済されずに死んでいく。

 私は平和を取り戻したい。なのに、明日は戦いに行く。平和を取り戻すために戦う。平和と戦争。相反する存在。平和にするため、戦争する。





















































 私のしていることは、おかしいのだろうか――?

 【社会と人物】


◆国際政府

 1800年前、中央大陸(コスーム大陸)を統一した巨大統治機関。長き平和の間、緩やかに汚職が統治機構を蝕み、今では腐敗は奥深くにまで到達している。


◇マグフェルト(男性/)

 国際政府総統。議員・官僚を上手く操り、自らの支持を保ちつつ、戦争を利用して法改正を繰り返し、権力を集中させている。


◇クェリア(女性)

 政府特殊軍の将軍。第12兵団の管理官。前作「夢Ⅳ:2章/6章」にて連合政府支配下にある一般市民を虐殺した。マグフェルト同様、議員・官僚と癒着している。


◇パトラー(女性/20歳)

 政府特殊軍の将軍。本作の主人公。第11兵団の管理官。平和を欲しているが、状況は悪化の一途を辿る。父親のライトは元老院副議長。母親はすでに死亡。その原因は交通事故とされるが……?


◇クラスタ(女性)

 パトラー率いる第11兵団の副監理官。階級は中将。何度もパトラーと共に任務を共にし、その絆は深い。


◇ライポート(男性)

 第11兵団所属の男性。パトラーの部下。



◆連合政府

 6つの大企業と辺境の南大陸に存在する国家バトル・ラインを支持母体とする反政府勢力。絶対的な資本主義とより自由な市場経済を確立させようとする新政府。2年前に統治機構が成立した。

 すでにこれまでの戦いで4つの大企業が崩壊。残りは2企業と、バトル・ラインのみ。


◇ティワード(男性)

 連合政府の総統グランド・リーダー。かつては有能な国際政府の軍人だったが、腐敗した議員や官僚、大手マスコミによって失脚したらしい。

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