第11話 アレイシア本部の戦い
【アレイシア空域 政府軍大型飛空艇プローフィビ 最高司令室】
私は最高司令席に深く座りながら、部下たちに司令を出していた。最高司令室から見えるアレイシア方面の光景。100隻近い軍艦の大艦隊。こりゃ凄いな。よっぽどアレイシアが大切らしい。
「クェリア将軍、敵は予想以上の数です!」
「フフ、そうか。皆殺しにしろ」
「イ、イエッサーっ!」
人工の魔女ども。人工の生命体。造られた生き物。クローンは人間ではない。彼女たちなら、殺しても文句はないだろう? ――元老院議会、いや、パトラー=オイジュス。文句あるか?
「クェリア閣下、数が多すぎます。予想数の倍はいます」
「……軍艦を操縦するのはクローンか? やたらシールドに回すエネルギーが多いな」
私は軍艦を操縦する者を見抜いていた。アレはクローン・パイロットに多い戦い方だ。彼女たちはやたら仲間を大切にする。……そこが穴だった。
「攻撃はさほどしてこないハズだ。シールドを強化し、一気に突破しろ」
「万が一、突破直前に反撃してきた場合はどうしますか?」
「スロイディアとクォットの部隊に命じて軍艦の艦隊を一斉攻撃させろ。反撃時はエネルギー・シールドを弱めるハズだ」
「イエッサー」
白色に緑色のラインが入った12兵団の大型飛空艇1隻、中型飛空艇10隻は一斉に速度を速め、アレイシアに突っ込むようにして進んでいく。8隻の中型飛空艇は艦隊の上を、私を乗せた大型飛空艇1隻と中型飛空艇2隻は艦隊の下を通る。
予想通り、軍艦の艦隊は、一斉に反撃を開始する。艦隊の下を通り、アレイシアへと向かう飛空艇3隻は集中砲火を浴びる。
「クェリア将軍、攻撃が強すぎます! このままですと、後続の中型2隻は破壊されます!」
「問題ない。スロイディアとクォットに反撃させろ」
「イエッサー!」
カーコリア中将は無線機を使い、他の部隊に連絡を取る。……まぁ、10隻も落とせればいい方か。
「……将軍、多勢に無勢です。味方は大型3隻に中型30隻です。敵は司令艦5隻、軍艦60隻、それと新型の軍艦10隻」
「後続の中型飛空艇は無事か?」
「内容物が“アレ”ですので、多少の傷は大丈夫でしょうが……」
「ならいい」
私は砲撃を受け、激しく揺れる最高司令室で自分の剣を見ていた。青色の刃を持つ特殊な剣だった。また赤色に染まりそうだ。
そうする内に艦隊を突破した飛空艇はアレイシアへと近づきつつある。後続の2隻は炎上し、今にも墜落しそうだ。
「予定通り、後続の飛空艇1隻をアレイシアに突っ込ませろ。上空の8隻からガンシップを出し、戦闘を開始しろ」
「イエッサー」
イスに座る部下たちは素早くコンピューター・パネルを操作する。炎に包まれつつある中型飛空艇2隻は速度を上げ、アレイシアの要塞へと突っ込んでいく。
アレイシアからも何発もの砲弾が飛んでくる。その攻撃を受け、1隻の中型飛空艇がアレイシア飛空艇着陸場へと落ちていく。辛うじて不時着した。予定通りだ。
1隻の中型飛空艇は、黒色のアレイシア要塞へと突っ込んでいく。爆音。その飛空艇と一帯が吹き飛ぶ。おっと、“中身”は大丈夫か?
「クェリア将軍、まもなく目標地点です」
「……部隊を上陸させろ」
私は白色に緑色のラインが入ったガンシップが何十機も飛んで行くのを見ながら行った。すでに外では戦闘が始まっていた。
◆◇◆
【アレイシア本部 小型戦闘機着陸場】
艦隊を突破した政府軍が次々とアレイシアの小型戦闘機着陸場へと入ってくる。装甲服を着た兵士たちが次々とやってくる。
「撃て、撃てっ! 魔女を狩り尽くせ!」
「政府軍を撃退しろ!」
激しい銃撃音が巻き起こり、嵐のごとく銃弾や魔法が飛び交う。政府軍の兵士たちも魔法発生装置で魔法を使って来る。
私のすぐ近くで爆発音が起こる。数人の姉妹が爆発で吹き飛ばされる。その内の1人が頭から血を流しながら、再び立ち上がるが、その頭に再び銃弾が当たる。血を噴き散らし、床に倒れ込む。
「クッ……!」
私は拳を握り締め、走り出す。剣を引き抜き、緑色のラインが入った装甲服を纏う政府軍兵士の首をハネる。更に、近くにいた兵士に手をかざし、超能力の斬撃で首を斬る。赤い血が舞い、金属の白色をした床に、べっとりと流れる。
「あぐっ!」
私の側で戦っていたクローン兵が苦痛の声を上げ、アサルトライフルを落とす。彼女はお腹を抑え、血を吐きながら、床に手をつく。恐らく、お腹に銃弾が当たったのだろう。
「ひぐっ、痛いっ……! たす、け……」
彼女は横になり、お腹を両腕で抑えながら、震え、私に助けを求めてくる。私は魔法弾を飛ばしながら、彼女を見る。おびただしい量の血が出ていた。重傷だ。早く医療センターに連れて行かないと、命が危うくなる。
だが、今は戦いの真っ最中。彼女を医療センターに連れて行けるだけの余力がない。敵に背を向ければ、狙い撃ちされかねない。
その時、遠くからロケット弾が飛んでくる。それはあのクローン兵のすぐ近くに着弾し、爆発する。私とそのクローン兵は吹き飛ばされる。
私は近くの壁に背を叩きつけられ、床に倒れ込む。あのクローン兵は……木端微塵になっていた。彼女だったモノが、そこら中に散らばっている。
私は赤色をしたぐにゃぐにゃしたモノから目を背け、走り出す。残酷な戦いだ。だが、それが戦争なのだろう。
「イヤだ、死にたくない!」
政府軍の兵士が叫ぶ。追い詰められた彼は震え、尻餅を付きながら助けと許しを乞う。だが、彼を追い詰めたクローン兵は、彼に銃口を向け、発砲する。装甲服から血が噴き出る。
彼女はその場を離れる。離れた途端、別方向から飛んできた銃弾が首に当たり、血飛沫を噴きながら、崩れるようにして倒れる。
一瞬で命が消えていく。望まなかった死を迎えさせる。死者は二度と動かない。強大な軍事力を誇ろうとも、その力の構成員には望まない死がやってくる。それが、戦争だった――




