表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒い夢と白い夢Ⅳ ――動乱の世界――  作者: 葉都菜・創作クラブ
第3章 貪欲の利権 ――政府首都グリードシティ――
10/38

第9話 利権と裏切りと被害者

 【商業都市ポートシティ 上空】


 私とクラスタは商業都市ポートシティへと向かっていた。ところが、ポートシティの周辺には、球状に左右に大きな翼を付けた黒色の飛空艇が15隻も浮かんでいた。財閥連合のコア・シップ艦隊だ。

 1隻のコア・シップに近づくと、通信が入る。パネルを操作し、立体映像を映し出す。青色をした小さな立体映像。映っているのは、1人の男性。――財閥連合の幹部だ。


[ようこそ、パトラー=オイジュス将軍…… わたしはこの艦隊の指揮官アイロートです。ナード議員がお待ちかねです。前方の旗艦に着陸なさいませ……]


 それだけ言うと、映像は消えてしまう。通信を一方的に切られたようだ。

 産業都市ポートシティはポート州の州都。財閥連合の本拠地がある都市でもある。だから、別に財閥連合のコア・シップ艦隊があっても、何らおかしくはない。

 私たちは小型飛空艇を進め、旗艦のコア・シップへと近づいて行く。それにしても、待ち構えているという事は、私たちがここに来ることが分かっていたのか?


 私たちはコア・シップ内へと入り、飛空艇を着陸させる。随所に赤いラインが入ったバトル=アルファが15体もいる。身体の色は連合軍のバトル=アルファと同じく黒色。赤いラインが入っているとこだけが違った。

 私とクラスタは小型飛空艇から降りると、バトル=アルファの1体が予想通りのセリフを吐く。


[捕まえろ!]


 私はサブマシンガンを握り、クラスタは剣を引き抜く。15体ものバトル=アルファがアサルトライフルを片手に、近寄ってくる。

 私たちは次々と撃ってくる赤ラインの入ったバトル=アルファたちを相手にしていく。性能は連合軍のバトル=アルファとなんら変わりがない。あっという間に全15体の機械兵士を倒す。


「おおっ! いきなりやって来て我らのバトル=アルファを破壊するとは! これは器物破損だ! 彼女らを逮捕しろ!」

「はぁ!?」


 いつの間にか飛空艇着陸場に出てきた1人の男性が叫ぶ。黒い服を着た財閥連合の幹部――アイロートだ。その後ろには黒い軍服を着た財閥連合の兵士たち。酷い言いがかりだ。

 私たちは別方向から飛空艇格納庫から出ると、廊下に入る。コア・シップ内の廊下。けっこう広く、床や壁は灰色のコンクリート製。建物内みたいだけど、これでも飛空艇だ。


[敵だ!]


 またバトル=アルファだ。おっと、正式名称は“財閥連合警備用バトル=アルファ”だったかな? “連合軍戦闘用バトル=アルファ”ではないらしい。

 私は剣を引き抜くと、赤いラインの入ったバトル=アルファを斬り壊す。クラスタもハンドグローブを振り、魔法弾で2体のバトル=アルファを破壊する。


「このコア・シップに何体のバトル=アルファが?」

「さぁ…… 20万体ぐらいはいるかもな」


 まぁ、この巨大な球状飛空艇は輸送艦でもある。連合軍も多く使用する機体だ。これを使って全世界にバトル=アルファやバトル=ベータを始めとした軍用兵器や軍需物資を送り込んでいる。


「アイロート艦長やナード議員はなにがしたいのかな?」

「……大方、私たちを捕まえてティワードにでも引き渡すのだろう。そうすれば、財閥連合は莫大な報酬がもらえるハズだ」

「また利権、か。そろそろ聞き飽きた」


 そんなことを話している間にも、またバトル=アルファの集団が現れる。アサルトライフルをコッチに向け、発砲して来る。

 私たちは弱小の軍用兵器を素早く破壊し、再び長い廊下を走る。なんとかしてここから脱出しないと……

 走りながら出会うバトル=アルファを破壊しつつ、十字路に出た時だった。不意に右の封鎖壁が開かれ、1人の男と数人の兵士が現れる。真ん中のスーツを着た男はナード議員だ。


「あっ!」

「おい待て!」


 驚いた声を上げて逃げようとするナード議員を私は素早く取り押さえる。周りの兵士たちは私にマシンガンの銃口を向ける。


「ひぃぃ、な、なにをするっ! 離せぇっ!」

「まぁまぁ、落ち着いてくださいな、ナード議員」


 暴れるナード議員の頭にサブマシンガンの銃口を当ててつつ、私は彼に話しかける。本当は話したくないケド。


「私のお父さんは元老院の副議長。私は政府の特殊軍将軍。もし、私がここから脱出してこの有り様を元老院議会に報告したら、あなたはどうなると思いますか?」

「な、なに!?」

「元老院議会は財閥連合の責任を追及し、財閥連合はあなたに全ての責任を押し付け、あなたは国家反逆罪で逮捕、かも知れませんね」


 正直、コア・シップからの脱出は、困難を極めそうだ。それに、プランナーさんの息子さんも見つけられそうにない。ならば……


「いや、いや、わたしは、トーテム議員に……いや、知らん! なぜお前たちがここにいるんだっ!」

「……ええ、そうでしょうね」

「…………!?」


 財閥連合の議員や幹部は、脅しつつも、美味しい話をチラつかせながら、人を誘惑する。上手に貪欲な利権を貪るスペシャリストだ。時にはその手法を使ってみよう。


「私はアイロートっていう人に案内されたんですよ。彼、もしかして、連合政府と内通しているんじゃないのですかねぇ……?」


 私はチラリとクラスタの方に目を向ける。彼女は苦笑いしながら私たちを見ていた。まぁ、時にはこんな方法も……


「そうだ、ナード議員、私たちの捜査に協力してくださいよ」

「なに?」

「今、プランナーさんの息子さんを探しているんです。もし、アイロートが連合政府の仲間だったら、居場所を知っているかも知れませんね。連合政府としても、ハーベスト地方に軍用基地が出来ると困るかも知れない……」

「だからアイロートに命令して、プランナー氏の息子を攫った。ハーベストに基地を造ることを許可すれば、2人の命はない、というのか?」

「さすが、ナード議員、素晴らしい推理です!」


 なんで2人とも攫われたことを知っているんだ、コイツ。私は息子としか言ってないぞ。素晴らしいのは私の推理だ。

 そんなことをしていると、廊下の奥から6体の赤いラインが入ったバトル=アルファを連れたアイロートが走ってくる。


「おい、パトラーとクラスタは捕まえ―― ってナード議員!!?」

「ナード議員、裏切り者ですよ!」

「お? おお! アイロートを捕まえ、監房へと連れて行け!」

[イエッサー!]

「は?」


 私の誘惑に乗り、腐敗した議員の命令を受けたバトル=アルファは、アイロートに銃口を向ける。そして、呆然とする彼をそのままどこかへと引っ張って行く。


「パトラー将軍、我が部下が迷惑をかけた。プランナー氏の子供もすぐに捜し出そう」

「ええ、よろしくお願いします」


 私はカタチだけの笑みを浮かべ、頭を少しばかり下げる。貪欲に利権を貪る人は使いやすい。私は内心ニヤニヤしながら、その場を後にした。





 その後、プランナーさんの息子は助け出された。彼によると、ポートシティの財閥連合本社に閉じ込められていたらしい。

 一方、お父さんもプランナーさんの娘を助け出した。ただ、残念なことに、リーク中将は裏切り、コマンダー・ライカに付いた。その理由は……またしても利権だった。


 利権を狙った財閥連合の狙いは、利権を確実なものにしようとした自分たちの作戦が元になって、崩れ去った。

 私は利権でナード議員を誘惑し、誘惑されたナードによって、誘拐作戦を計画・実行したアイロートは逮捕された。

 コマンダー・ライカはリークを誘惑し、彼は私を裏切った。


 貪欲の利権。それは裏切りと悲劇を招く。プランナーさんの子どもたちは利権によって生まれた悲劇だった。ハーベスト地方の自然だって、利権の被害者になるところだった。

 戦争は貪欲に利権を貪る心、一種の悪魔を助長するのかも知れない――

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ