Chapter1-4
もしもの時に備えて、ディエゴの倉庫(※Chapter1-1の場所)に仕込みをしていて正解だった。整理の行き届いていない倉庫ほど、出入りしやすいのものはない。侵入口も、そこだ。
実際のところ、仕込みがしてあったのは、侵入が楽だったから半分暇つぶし、半分遊び心の賜物だったりする。
今回の件で結構な出費になった分、鍵を開けた先が宝の山で有ってほしいもんだ。
ディエゴなら、きっと俺の行動を読んで数日後に鍵を使いにくると予想する。その裏をかいて行動するしかない。
予想通り邪魔一つなく、目的の扉に辿り着くことが出来た。
「人の気配が一切しないのは不気味だが、鬼が出るか蛇が出るか……ってなんだよこれ!?」
薄暗い部屋にはレディッシュブラウンの髪を持ち、グリーンアイの青年の写真が壁いっぱいに貼りつけられていた。更に眼帯を必要としていない頃の姿まである。
あまりにも異様な光景に驚きが隠せないでいると──
「どうです。素晴らしいでしょう?」
突然の声に警戒レベルを急激にあげた。
背後からの声だけで分かる。ディエゴの声だ。
──最初から仕組まれた罠だったのか? いや、ツトムは信頼できる仲間だから違うだ。
「罠、と考えましたか? そうです。あなたの為だけに仕組んだ罠ですよ。わざわざ、あの情報屋がいるところで形だけの取引をしたんですからね」
「……ここで待ち構えるだけで良かったのかよ」
「一応メンツと言うものがあるので、あそこでは追わせていただきました。それと、あのプレゼントは文字通り、肝を冷やしましたよ」
もう逃げ場はないぞ、といった態度で説明してくる。初めて入る場所に仕掛けなんてあるわけでもないから不快なものだ。
ひとまず冷静に装って疑問を口にする。
「それよりなんだよこれ。壁一面、俺の写真だらけじゃないか」
「分からないんですか? 私は、あなたのことを愛してやまないんですよ」
──あなたのことを愛してやまないんですよ。
意味が分からない。世間には同性を愛する、同性愛者などと呼ばれる者がいるとは知ってる。それで俺が対象にされるとは考えてもなかった。