○○予報
ゆるい感じで読んでいただけますとありがたいです。
「らんらんらん らららららららん~ 多貴子のらんらららん♪」
「うわ~、何からツッコんでいいのかわからないけど、とりあえず、何でそんな無表情で、そこまでテンション高く歌えるの・・・。」
「え、修行のタマモノ?」
「あー、そう。修行で、アニソンを。・・・もう、何か、ツッコミたいけど、ちょっと役不足な気がするから、やめとくわ。」
「もう少し、ガッツをもてよ!」
「いや、そんな熱く語られても。」
「諦めんなよ!もっと粘れよ!!」
「え、何その手振り・・・。修造のつもり?何?ファンなの?」
「いや、そうでもないけど、流行にのっかってみただけ。」
「流行とはまた別だから・・・。」
「スルーされてばっかりも面白くないしー。」
「そんな、一昔前の女子高生の口調で言われても・・・。
って、え、何、ふぐのマネ?それともリス?」
「スネてみた。」
「あんた何歳なんだ。いつのリアクションよ、それ。」
「と、まぁ、冗談はおいといて、って、そこダラけない。え?もう疲れた?帰る?
何言ってるの!あんたの役目はこれからでしょうが。」
「えー、またアレやんの!?」
「当たり前でしょうが。その格好させた意味がないでしょう。はい、早く、脱ぐ!」
「ど、どうしても?」
「いや、別にそのままでいいならいいけど。まだ残暑の残る中、ベンチコート着てる上に、フードまで被ってる方がいいならね。」
「あ、あんたは、鬼やぁぁ~~~。このくそ熱い中、こんな格好をさせるなんて~!!」
「下に着せたものは、そこまで暑くないでしょ。」
「・・・泣いていい?」
「脱げ。
脱いだら、泣いてよし!」
《 騒がしい虫けらどもめ。この場をどこと心得るかぁっっ!!!》
「ほら、怒っちゃったじゃない。」
「ひぃぃぃぃっっ!!って、これはいくらなんでも無理でしょう!!」
おいでになっちゃったのは、人を虫けらとのたまう、オドロオドロシイ、巨大な影。
駄目でしょう、これ。
普通、呪い殺されてアウトでしょうよ!!
「大丈夫よ。自信を持って!」
「持てるかぁ~い!」
「そう。じゃあ、お手上げ。」
「は?」
「降参~。」
「・・・も、もしかして、作戦って、これしかないの?」
「当然じゃない。一番効果があるんだし、楽だし。」
「・・・。」
(お母さん、叔父さん、ごめんなさい。背に腹は変えられません。)
《 虫けらの分際で、調子にのるんじゃあ
バサッ
《 な、何を、お、お主 !?!》
見詰め合うこと、きっちり、5秒。
「 いい男ではないか!!」
ポンッ
一瞬で、影から乙女の姿(十二単)に早変わり。
って、近っ!!
「 お主、名は何というのじゃ?」
「え、えぇっと、名乗る時は、ご自分からおっしゃっていただかないと・・・。」
できる限りの低音ボイスと引きつった笑顔をプレゼント・・・。
「 にくいやつよのぉ~! わらわの名前かぁ~。人は、黒炎と呼ぶぞ。」
こうなりゃあ、自棄だ!!
「そらとぼけるなんて、ひどい方だ。そんなに私を焦らして楽しいんですか?あなたと違って、私の時は短いんですよ。」
「 そうじゃなぁ。人間なれば、時は短かろう。わらわにその時を差し出すというのであれば、教えてやらんではないが。」
「私のようなものをお望みになるとは。光栄至極、勿体ない限りです。」
跪いて、その手へ両手を差し上げる。
「 くちづけよ。」
白魚のごとき、麗しい手を受け、唇を近づける。
「 よぉく覚えておくがいい。主人の名を。
わらわの名は******じゃ。」
近づけた顔を止める。
「 どうした? 早くせぬか。」
「よし、上出来。」
その声を聞いて、すっと身を引き、立ち上がる。
「どういう・・・。まさか!」
「ほぉ~んと、すごい威力。」
「もう、ほっといて下さい。」
もう、泣いてもいいかしら?
「な、謀ったな!」
「何いってんの。目の色変えて、ナンパしてたのは誰よ。」
「な、なんぱだと?」
「うーん、盛った犬の方が近いか。」
「 !!! 虫けらの分際で!!」
「その虫けらに言い寄ったのは誰かしら?」
「 これ以上の侮辱、許せん!!!」
「伏せ。」
「べふっ。」
「メス犬はメス犬らしく、ご主人様のいうことを聞きましょうね。」
悔しそうに歯噛みする乙女(怨霊)
「あ、ちなみに、その子、女の子だから。」
「 何!?」
「ひぃっ!」
身長175cm、細身、黒髪ショートカット、直衣着用。
要するに、平安時代のお貴族様(光源氏モチーフ)を着た青年、にしか見えない。
生まれてこの方、性別を正しく認識されたことは一度もない・・・。
何度、男として生きようかと思ったことか・・・。
でも、できなかった・・・。
だって、女の子にときめかない。
どこまでも中身は女なんだ!!
「 勿体ないのぅ。いや、男でなくても別に構わんか。」
ぞくぞくぞくっ!
「はい、メス犬はそこまで。ハウス!」
乙女は、西遊記の瓢箪に吸い込まれるように、多貴子の数珠玉の中へ。
何で、いつもこうなるの!!
「・・・相変わらず、すごい威力ね。むしろ、魅力?」
「うぅっ。もう、やだ・・・。」
なぜ、母親に似なかった!
あの馬鹿親父に似さえしなければ!!
「ほら、行くよ。」
「・・・うん。」
「それ、借り物だから、汚さないでね、それ以上。」
「それが落ち込んだ友にかける言葉か。」
「しょうがないでしょ。あんたはそういう星の元に生まれちゃったんだから。」
「巻き込んだ癖に。」
「ちっ。うっとうしい。」
「ひぃぃっ!!な、何か別の人格がでたぁっ!!」
「はぁ。帰りに晩御飯おごってあげるから、好きな物を。」
「ほんと!?」
「今から予約取れる所だったらね。」
「じゃ、じゃあ、錦家さんの所は?」
「いうと思ったわ。電話してみる。オススメで頼むから。」
「うん、それで頼んます!」
「先に戻ってて。」
「了解。」
ベンチコートを忘れて走って行く。
「・・・。」
「ふぅっ。転ばないといいけど。」
足元のコートを拾い上げ、音もなく歩き出す。
さぁ、次はどいつがひっかかるのか?
「ま、手を出したら、ただじゃおかないけど、ね。」
雑魚にくれてやるつもりは更々ない。
あなたは、そう、私の元へ。
最後まで目を通していただき、ありがとうございました。