コンビニの灯りが世界のすべてだった夜
今日も寒い。
寒風は身体だけではなく、心まで冷え切ってしまいそうだ。
無意味にコートの前を塞ぐ。寒さへの、心理的な抵抗。
ついでにお腹も空いている。
足早に帰路に着いてると、煌々と灯るコンビニが見えた。
一時でもいいから、この冷たさから逃れたくて、コンビニに入る。
気の抜ける、バイトのいらっしゃいませーの声と、温かい温度がなんだか身に沁みた。
棚にある食品を物色する。お腹が空いているのに、何も買う気にもなれない。寒さのせいで食欲まで無くなってしまったのかもしれない。
ふとカウンターを見ると、おでんが売っていた。
もうそんな季節か。
ふいに可笑しくなった。
いつの間にか、季節がひとつ過ぎていた。
私が仕事に忙殺されている間に、コンビニではおでんが売られる季節になったのだ。
うん、おでんを買おう。
私はカウンターに行って言った。
「すみません。おでん下さい」
「何にしますかー?」
「たまごと、大根と、こんにゃくと、ウインナー巻きください」
「はーい」
バイトが慣れた様子で容器におでんを入れ、汁を流し込み、蓋をする。
手渡された袋から、温かい物が込み上げてくる。
お会計が終わった後、バイトがポツリと言った。
「外、寒いですか?」
「え、あ、はい」
「そうですか。お疲れ様です」
「あ、ありがとうございます」
思わずバイトの目を見た。お互い疲れている顔をしていた。
コンビニを出る。
また寒風が身体に叩きつけられ、手指がツンと冷たくなる。
でも心は、なんだか温かいままだった。




