魔王龍
翌朝
荒野には騎士団、冒険者、市民志願兵が集結していた。
「レン!」
ガロウが駆け寄ってくる。
「緊張してるか?」
「少しだけ……」
レンは正直に答えた。
「当然だろ」
ガロウが肩を叩く。
「だがお前なら大丈夫だ」
バスクも現れた。
「団長がお呼びだ」
二人はグレイスの元へ向かった。
「全員配置についた」
グレイスは地図を広げていた。
「レン……お前には特別な役目がある」
「なんでしょう?」
「魔獣との戦いで発現した剣聖スキルを最大限に活かしてもらう」
グレイスの目が鋭く光る。
「お前こそが……奴の心臓を貫く剣となれ」
「はい!」
レンは力強く頷いた。
「始まるぞ……」
遠くの地平線上に黒い渦が現れた。それは徐々に大きくなり、雷鳴と共に大地を震わせる。
「魔王龍の出現だ!」
ハルクが叫んだ。
「全員戦闘態勢!」
***
巨大な龍の影が荒野を覆った。
「あれが……魔王龍?」
レンは言葉を失った。
山のような巨体。鱗は漆黒に光り、翼を広げれば空を遮る。目は燃えるような赤だ。
「来るぞ!」
グレイスの号令と共に全軍が散開した。
「盾陣形!」
騎士団が前列で防御陣を組む。
「遠距離攻撃隊前へ!」
弓と魔法が雨のように龍に向かって飛んだが、龍は片手で簡単に弾き返す。
「くそっ……効かない!」
冒険者たちが焦る。
「怯むな!」
レンは前に出た。
「みんな……信じてください!」
彼は剣を構えた。体内に眠る全てのスキルを解放するイメージをする。
「剣聖……!」
レンの周りに青白い光が渦巻いた。全身に力がみなぎる。
「行くぞ!」
レンは風を切るように走り出した。
龍の足元まで瞬時に到達する。
「レン!」
グレイスが叫ぶ。
「任せてください!」
レンは剣を振るった。
龍の鱗に刃が食い込む。
「うおおおおっ!」
剣が光り輝き、鱗が裂けた!
「やった!」
冒険者たちが歓声を上げる。
だが次の瞬間—
「愚かな……」
龍の口から黒い炎が噴き出した。
レンの回避が間に合わない!
「レン!」
ガロウとバスクが同時に飛び込み、レンを突き飛ばした。
代わりに二人が炎に飲み込まれる。
「ガロウさん!バスクさん!」
レンが叫ぶ。
二人は黒焦げになって倒れた。
「大丈夫……だ…」
ガロウがかすかに答える。
「お前が……無事なら……」
「なぜ……なぜ僕なんかを……」
「俺は……お前に……借りがあるからな……」
バスクが微かに笑った。
「死ぬなよ……」
レンは涙を堪え、再び剣を握った。
「ありがとう……」
その時だった。
「皆さん!力を貸してください!」
レンが大声で呼びかけた。
「僕と一緒に……あの龍に立ち向かいましょう!」
荒野に響くレンの声。
騎士たちが、冒険者たちが、そして志願兵たちが一斉に応じた。
「「「「おおおおおっ!」」」」
全員の力が一つになる。レンを中心に巨大な波動が生まれた。
「行くぞ!」
レンは龍に向かって走り出した。
今度は一人ではない。
全員の想いを背負っている。




