魔王軍襲来編8
グレイスは怒りに震えていた。
「あれは……レンだ!我らが同胞を救うために戦っている!」
だが周囲の恐怖は簡単には収まらない。
「バケモノ……」
その言葉がレンの耳に届く。
彼の動きが一瞬止まった。
その隙を突いて、ドラゴンの尾がレンを直撃した。
「うわぁっ!」
地面に叩きつけられるレン。
意識が朦朧とする中で、さらに死者からの力の流入が激しくなる。
***
「いいよ、いいよ!素晴らしい!」
神楽坂は満足げに拍手した。
「勇者というのはね、こうでなくちゃ」
画面には変貌を続けるレンの姿が映し出されていた。
「多くの命を犠牲にして力を得る……それが物語というものだ」
***
レンは立ち上がった。全身が光り輝いている。
「僕は……ただの……人間だ……!」
剣を振るう。今度はドラゴンの鱗を切り裂いた。
「僕は……僕は……!」
涙が流れながらも戦い続ける。
そして—
「終わりだぁぁぁぁ!」
剣がドラゴンの喉を貫いた。
轟音と共に倒れる巨体。
戦いは終わった。
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静寂が訪れた。
周囲には多くの屍が転がっている。
レンは血まみれで立ち尽くした。
「レン……」
グレイスがゆっくりと近づく。
「ありがとう……レン」
その言葉と共に、騎士団の一人が倒れた。
「君のおかげで……救われた」
別の兵士が膝をつく。
「お前は……俺たちの英雄だ」
一方で—
「バケモノめ……」
「人間兵器め……」
恐怖と憎悪の言葉も囁かれていた。
レンは震える手で顔を覆った。
「僕は……僕は……」
その時—
「レン!」
グレイスが走り寄り、レンを抱きしめた。
「お前は英雄だ。誰がなんと言おうと—お前は我々の希望だ」
巨漢の胸に顔を埋め、レンは声を上げて泣いた。
「グレイス団長……僕…人間兵器じゃないよね……?」
「馬鹿者!お前は……一人の人間だ」
周囲から歓声と罵声が交錯する中、グレイスはレンを抱え上げた。
「行くぞ」
二人は戦場を後にした。
***
「ふぅ〜!」
神楽坂は伸びをした。
「最高の展開だ」
画面には二人が去る姿が映っている。
「さぁて……最終決戦に向けて準備を整えようか」
彼は次の「召喚ガチャ」を回す。
「待っていろよ、藤宮 蓮。お前にはまだ役目がある」
***
王都に戻った二人。
「お前はしばらく休め」
グレイスの言葉に、レンは小さく頷いた。
「はい……グレイス団長……」
レンは宿舎の部屋で一人泣いていた。
「僕は……何なんだ……?あいつに召喚された……まさか……」
窓の外に広がる夕焼け。
血のように赤く染まる街が自分の身体の中を表しているような気がしていた。




