魔王軍襲来編6
そこは何処でもあって何処でもない空間
「ふぅ……」
神楽坂は満足げに椅子に腰掛けた。
暗い部屋の中で、目の前の画面には戦場の光景が映し出されている。
サンドリザードロードとの激闘を終えたレンは、疲労困憊の様子だが生き延びていた。
「やれやれ、ここまで育てたかいがあったなぁ」
画面の中のレンを見つめながら、神楽坂は小さく笑った。
異世界に召喚されてから1年余り。
あの何も知らない少年が、今では立派な勇者候補として成長していた。
「さて……」
神楽坂はポケットから小さな金色の卵を取り出した。
表面には複雑な紋章が刻まれている。
「これが最後の仕上げだ。頑張ってくれよ、レン」
そう呟くと同時に、神楽坂は卵を地面に落とした。
***
王都へ向かう途中の街道。
戦いを終えた一行は疲労の中にも達成感を漂わせていた。
「グレイスさん……僕たち……勝ったんですね」
レンの声は掠れていた。身体中が痛むが、今は勝利の喜びが勝っていた。
「ああ。よくやった」
グレイスの大きな手がレンの頭を優しく撫でる。
その感触にレンは思わず目を細めた。
「でも……」
レンが不安げに空を見上げた。
突然、上空に暗雲が渦巻き始めたのだ。
「何だあれは?」
騎士団の一人が指差す先に、空から何かが落下してくる。
それは黒く輝く卵だった。
「みんな!警戒しろ!」
グレイスの声が響き渡った瞬間、地面に衝突した卵が砕け散った。
轟音と共に出現したのは—巨大な竜。
「ブラッドスケイルドラゴンだと……!?」
ガロウが驚愕の表情で呟いた。
伝説級の存在。並の軍勢では太刀打ちできない化け物。
「逃げろ!」
グレイスの叫び声と同時に、ドラゴンの口から紅蓮の炎が放たれた。
「グレイスさん!」
レンが駆け出した。剣を構えながらも、彼の心は恐怖に支配されていた。
この敵は桁違いだ。今までのどんな魔獣よりも強力で凶悪。
「レン!お前は下がれ!」
グレイスが叫ぶが、レンは止まらない。
無謀にもドラゴンの前に立ち塞がった。
「くそっ……!」
剣聖スキルを解放するが、体は悲鳴を上げている。
先ほどの戦闘で既に限界を超えていたのだ。




