魔王軍襲来編5
『完全なる治癒』によりレンの傷が癒えたのだろう
だが治癒では失われた体力は戻らない
震えながら立ち上がるレン
「まだ……負けられない……」
再び剣を構えようとする。
だがその手は小刻みに震え、視界は霞んでいた。
「レン……!」
バスクが駆け寄ろうとするが、グラスウルフの群れが阻む。
「バスク! お前は自分の仕事をしろ!」
ガロウが叫ぶ。
彼はシャドウストーカーと交戦中だった。
「今は……信じるしかない」
グレイスが呟いた。
「あいつの……強さを」
再びレンの身体が動き出した。
剣を振るい続ける。だがその動きは明らかに鈍くなっていた。
「もう少しだけ力を貸して……!剣…聖ッ!」
レンの叫びとともに再び時間が遅くなったかのような感覚。
剣が閃き、サンドリザードロードの鱗を切り裂く。
だが
サンドリザードロードの反撃。
巨大な尾が横薙ぎに振り払われた。
レンは避けることもできず直撃を受けた。
地面を転がり、再び血を吐く。
「うっ……」
意識が薄れていく中、グレイスの姿が見えた。
必死に戦いながらも、常にレンを気にかけている姿が。
「僕は……まだ……」
剣を握る手に力を込める。
今ここで倒れるわけにはいかない。
急速に傷が癒えていく
なぜなら
「この人達は僕を必要としてくれる……」
それだけで戦う理由は十分だった。
再び立ち上がったレン。
その目に映るのは
サンドリザードロードの巨大な姿。
シャドウストーカーの影。
そして
自分を守ろうとするグレイスの背中。
「負けられない……」
剣を構え直す。
そして再び剣聖スキルを解放した。
時間の流れが変わる。
すべてが見えた。
サンドリザードロードの次の動き。
シャドウストーカーの位置。
そして
グレイスの戦い方。
「いける……!」
レンは一気に駆け出した。
サンドリザードロードの隙を突き、足元に潜り込む。
剣を突き立てて動きを止める。
「グレイス団長!!」
その合図とともに
「任せろ!」
グレイスの大槌が唸りを上げた。
サンドリザードロードの頭部へ一直線に振り下ろされる。
轟音とともに、その巨体が大きく揺らいだ。
しかし
まだ終わりではない。
シャドウストーカーが影から襲いかかる。
「レン!!」
グレイスの警告より早く、レンは動いていた。
剣聖スキルの効果が続いていたのだ。
シャドウストーカーの喉元へ正確に剣を突き立てる。
「これで……!」
だがサンドリザードロードが最後の抵抗を見せた。
大きく暴れ出し、レンを弾き飛ばす。
「ぐっ……!」
地面を転がるレン。
だがすぐに立ち上がった。
もう限界を超えているはずなのに。
「うおぉぉぉぉぉ!」
再び駆け出すレン。
剣を振り上げ、サンドリザードロードの首筋に叩き込んだ。
グレイスの大槌が同時に振り下ろされ
「うぉおおおおおおおおおおお!!」
最後の一撃が決まり、ついにサンドリザードロードが膝をつく。
ズシーン———
巨体が大地を揺るがすほどの音を立てて崩れ落ちた。
シャドウストーカーも既に倒されていた。
「やった……」
レンはその場に膝をつき、剣を支えにしてようやく立っていた。
呼吸は乱れ、身体のあちこちが痛みに震えている。
それでも笑顔が浮かんでいた。
「レン……!」
駆け寄るグレイス。
その腕がレンを優しく抱きかかえた。
「よくやった。無茶しすぎだ」
「でも……勝ちましたよ」
「ああ……お前のおかげだ」
戦場は静寂を取り戻しつつあった。
散らばった魔獣の亡骸。
疲弊した騎士団と冒険者たち。
だが全員が生き延びた。
レンの身体はまだ震えていた。
限界を超えた反動が今になって押し寄せていた。
「今日はゆっくり休め」
グレイスが言い、レンの肩に手を置く。
「お前がいてくれて良かった」
その言葉に
レンの心が温かくなった。
「ありがとうございます……」
小さな声で答えるレン。
だがその瞳には
新たな決意が宿っていた。
「次はもっと……強くなります」




