魔王軍襲来編4
「シャドウストーカーまで……!」
ガロウが苦々しく呟く。
漆黒の狼に似た魔獣が影から影へと移動し、騎士団の足元を狙ってきた。
戦場はまさに混沌としていた。
四方八方から押し寄せる魔獣の群れ。
サンドリザードロードの圧倒的な威圧感。
シャドウストーカーによる奇襲。
加えて、遠くからはアイアンオーガと思われる雄叫びも聞こえてきた。
「こんなの……対処しきれない……!」
若い冒険者の一人が震える声で呟いた。
そんな中、レンは必死に状況を把握しようとしていた。
剣を握る手が汗ばむ。鼓動が耳に響く。
それでも……
「……僕も戦うしかない」
昨日感じた身体の重さが頭をよぎるが、今は怯んでいる場合ではない。
グレイスやバスクさんを助けたい。
その一心で剣を構え直した。
「レン、下がれ!」
グレイスの叫び声が響く。
サンドリザードロードの巨大な尻尾が地面を叩きつけた。
衝撃波が巻き起こり、周囲の建物の壁が崩れ落ちる。
「ぐっ……!」
レンは吹き飛ばされそうになったが、なんとか踏みとどまった。
グレイスは大槌を振り回し、サンドリザードロードの脚に一撃を与える。
「これくらいでは止まらないか……!」
サンドリザードロードが咆哮を上げ、次の攻撃態勢に入った。
一方でシャドウストーカーが冒険者たちの足元を狙い始めた。
「くそっ……!」
ガロウの槍が影を貫くが、本体には当たらない。
レンは深呼吸をして目を閉じた。
「剣聖」
呟くと同時に世界が変わった。
時間が遅く感じる。
周囲の景色が鮮明になる。
サンドリザードロードの動きも
シャドウストーカーの位置も
すべてが「分かる」。
そして
レンの体が風のように動き出した。
剣が閃き、シャドウストーカーの喉元を正確に貫いた。
さらに続けて飛びかかる。
サンドリザードロードの背中へと剣を突き立てた。
「レン!」
グレイスが驚愕の声を上げる。
だが同時に気づいていた。
レンの動きに昨日までの躊躇いがない。
しかし
「……っ!」
突如、レンの身体が大きく傾いた。
剣を握る手が震え始める。
呼吸が荒くなり、額から汗が滴り落ちた。
「限界か……!」
グレイスは理解していた。
剣聖スキルの代償。
スキルの過剰使用による身体への負荷。
「もういい! 引け!」
グレイスが叫ぶが、レンは応えなかった。
いや、応えられなかった。
意識が朦朧とし始めていたのだ。
次の瞬間、レンの身体が宙を舞った。
サンドリザードロードの巨大な爪が襲いかかり、
避けきれずに弾き飛ばされたのだ。
「レン!!」
グレイスの叫び声が戦場に響き渡った。
土埃が舞い上がる中、レンの小さな身体が地面に叩きつけられる。
「くそっ……!」
グレイスはサンドリザードロードを睨みつけたまま動けない。
今ここを離れたら全滅する。
分かっていた。
その間にレンの体は淡い光に包まれる




