ゲーム開始
智樹が真剣な表情になる。
「だからこそ……僕は君と協力して元の世界に帰りたいんだ」
「協力……?」
「そう。君と言う『主人公』が強敵を倒せば……『物語』が完結する。そうすれば元の世界に戻れるんじゃないかなって思ってるんだ」
智樹がレンの手を握る。
「一緒に頑張ろうよ。僕達だけが帰れるんだ」
レンは動揺していた。確かに元の世界に帰りたい……でも……
「……あなたのやり方は間違ってます」
「まぁまぁ堅苦しいこと言わずにさ」
突然、入口の扉が勢いよく開く。
「レン!無事か!?」
「団長……!?」
グレイスが部屋に飛び込んでくる。続いてガロウも姿を現した。
「ほうほう……君達が噂の騎士団さんか……嘘嘘、知ってるんだけどね」
智樹が余裕の表情を見せる。
「お前は誰だ……?」
グレイスが剣を抜く。
「簡単に言うと全ての黒幕ってとこかな。改めて自己紹介しようか。僕は智樹。この世界を『ゲーム』として操作している者だよ」
智樹が席を立ち、手を広げる。
まるでショーでも見せるかのように。
「みんな集まったところで……本当の物語の始まりを教えようか?」
「実はねぇ……」
智樹が微笑みながら説明を始める。
「この世界は……『召喚ガチャ』の結果で全てが決まるんだ」
「な……何だと?」
グレイスの表情が険しくなる。
「ガチャから出たアイテムやモンスター……それらが世界に干渉してる。例えば……」
智樹が机上の黒い卵をポンと叩く。
「この卵を割ると……どこかで魔獣が召喚される。それらが村を襲ったり、冒険者の行く手を阻んだりするんだ」
「つまり……すべてお前の仕業だと?」
「その通り!だからこそ君たちには感謝してるんだよ」
智樹が親指を立てる。
「だって……君たちが必死に戦ってくれるからこそ『物語』が動くんだから♪」
「ふざけるな!!」
グレイスが一歩踏み出す。
「僕がやってきた『ゲーム』の中でも……今回の『主人公』は特別なんだよねぇ」
智樹がレンを見る。
「これまでガチャからはアイテムやモンスターしか出なかったのに……初めて虹色の卵から『主人公』らしい君が出たんだ」
「それが何だというのだ」
「つまり……僕は確信したんだ」
智樹が目を輝かせる。
「『主人公』がこの世界を救えば……僕たちは元の世界に帰れるはずだってね!」
こほんっと芝居がかった咳をする
「だからこそ……これから本格的に『ゲーム』をスタートさせるよ。準備はいいかい?」
智樹が指を鳴らす。
「まずは……『魔王軍襲来編』かな?」
「何……?」
「これから……大量の魔物と魔獣をガチャから呼び出して……村や町を襲わせる」
「貴様……!」
「大丈夫、『主人公』であるレンくんがいれば……きっと乗り越えられるよ!」
智樹がウインクする。
「待て!!」
グレイスが一瞬で距離を詰め、智樹に斬りかかる。
しかし智樹はスッと消えた。
「残念だけど……また会おうね!」
声だけが響く。
コトンッとその場に木出てきた形代のようなものが落ちて消える
おそらくはこれも『ガチャ』のアイテムなのだろう
「くっ……!」
グレイスが悔しそうに床を蹴る。
「団長……」
レンが呆然としている。
「大丈夫か……?」
「はい……」
「奴が黒幕だ。全ての元凶だ……」
グレイスが低く唸る。
「……僕の責任かもしれません」
「レンのせいではない」
ガロウが肩に手を置く。
「智樹とかいう男……絶対に捕らえるぞ」
グレイスの目が鋭く光る。
「それまで……用心しろ。奴は何を仕掛けてくるかわからん」
「はい……」
レンが俯く。
「そして……」
グレイスがレンの肩を掴む。
「もし元の世界に帰りたいのなら……我々と共に戦うべきだ」
「……!」
「奴の思惑通りにはさせん。我々が奴の『ゲーム』を打ち砕くんだ」
「団長……」
レンが顔を上げる。
「俺たち騎士団が……俺が必ず守る」
グレイスが強く宣言する。
その目に揺るぎない決意が宿っていた。
***
「わお~みんな驚いてるねぇ」
廃墟から離れた屋根の上で智樹が愉快そうに眺めていた。
「さてさて……これからどんな楽しい展開になるかなぁ?」
彼が取り出したのは……複数の卵。
「さぁいよいよ……『魔王軍襲来編』を始めようか」
智樹が笑いながら次々と黒い卵を地面に投げつける。
バリンッ!
各地に黒い渦が発生し……恐ろしい咆哮と共に魔獣たちが這い出してきた。
「僕の『ゲーム』を存分に楽しんでね!」
新たな悪夢の幕開けが……始まろうとしていた。




