対峙
二人が路地裏に駆け込んだ時、遠くから蹄の音が轟いた。人さらいと思われる荒くれ者たちが子供を馬車に押し込め、城壁の門へ向かって疾走している。
「追うぞ!」
スクイヤーが馬に飛び乗る。レンも必死で続く。城壁の門衛たちが騒動に気づき槍を構えるが、スクイヤーは素早くハルクからの緊急通行許可書を提示した。
「緊急だ!あの人さらいを追う!」
レンとスクイヤーは門外へ躍り出た。
薄暗い森道を逃走する馬車。レンの胸が熱くなった。彼の中の『剣聖』のスキルが疼く。
(助けなきゃ……何があっても)
レンとスクイヤーは森の中を疾走していた。木々の間を縫うように飛ぶ馬の背でスクイヤーが叫ぶ。
「チッ!森の奥へ誘導してやがる!」
前方の馬車は不自然な速度を保ちながら木々の隙間を巧みに抜けていく。明らかに手慣れている。
「スクイヤーさん!あの人さらいの目的地は?」
「……わからねえ。だがただの人身売買じゃねぇな」
スクイヤーの目が鋭く細められる。この速度で森を抜けられるルートはないはずだ。
「まさか……」
その時──
**ガシャーン!!**
馬車が急停止し、荷台から子供が引きずり降ろされる。続いて現れたのは黒い外套をまとった人物だった。
「よくぞここまで追ってきたな、偽善の器よ」
嗄れた声が森に響く。スクイヤーが飛び降りて馬車の横に立ちはだかった。
「てめぇ……!何者だ!」
外套の人物がゆっくりと振り返る。顔は黒い布で覆われていたが、唯一露出した口元が歪むのが見えた。
「貴様には用はない」
黒布の隙間から赤い光が漏れた。瞬間──
**ズガン!**
スクイヤーの肩を何かが貫通した。彼の巨体が吹き飛び、木に叩きつけられる。
「スクイヤーさん!!」
レンが悲鳴を上げる。
黒衣の人物が子供の首に刃を当てる。
「お前も用済みだ」
「やめて……!助けて……!」
子供の泣き叫ぶ声。
レンの視界が怒りで赤く染まった。その刹那──
**シュパッ!!**
鞘を走る音と共にレンの右手から剣が閃く!
「させない……!!」
放たれた剣撃が黒衣の人物の外套を裂く。布が舞い散った中に現れたのは──
ヒョウの顔を持つ獣人だった。




