襲撃
治療所は阿鼻叫喚の渦に飲み込まれていた。レンの眼前に広がる光景は地獄絵図
だ。負傷した騎士や冒険者が担ぎ込まれてくるたびに悲痛な呻き声が響き渡る。
「右肩の出血がひどい!すぐに止血を!」
「左脚の骨折です!固定して下さい!」
カイレンが冷静な指示を飛ばす中、レンは一心不乱に手を動かしていた。額には汗が滲み、指先は震えそうになるがここで退くわけにはいかない。
ここが人々の命をつなぐ最前線なのだ。
「はい!次の方こちらへ!」
レンの治癒の力はまだ未熟だが、確実に傷を癒していく。それでも刻一刻と増える患者の数に追いつかない。
「くそ……まだ続くのか……!」
治療所内には緊迫した空気が立ち込めている。
と……その時だった
突然、治療所の入口が大きく揺れた。木材が裂けるような不吉な音と共に扉が吹き飛ばされる
そして───
黒いローブをまとった男がゆらりと姿を現した
「あっ………!」
レンは目を見開いた。以前聖女を襲ったあの黒衣の男だ
男は薄気味悪い笑みを浮かべながら手にした奇妙な卵を落とす
すると床に歪んだ亀裂のようなものが走り───
亀裂の奥から幾匹もの異形の影が這い出してきた!
「スパインラットの群れです!」
「くっ……何てタイミングだ!」
カイレンが叫びながら後退する。その瞬間、男の哄笑が響き渡る
「おやおや……今回は邪魔者がいませんね……」
「何故……こんな事を……!」
レンの問い掛けに男は嘲るように鼻を鳴らした
「これも崇高なる使命の為ですよ」
その言葉に怒りが込み上げてきたが今はそんな場合じゃない
治療所には負傷者たちが詰めかけている……ここで奴を止めなければ更なる犠牲者が出てしまう!
剣を構えたレンが立ち上がるのと同時に
「待て!俺たちが相手だ!」
背後から聞き覚えのある声がした
振り返ると……冒険者PTリーダーのアーサー達が立っているではないか
「皆さん!どうしてここへ!」
驚きながらも駆け寄るレンにアーサーは軽くウィンクしながら
「団長さん……グレイスさんに頼まれたのさ」
レンは胸の奥から熱いものが込み上げてくるのを感じる
「ありがとうございます!」
アーサーは軽くうなづくと仲間達に指示を出した
「スキットとマルーシアは周囲の警戒!ギャリットは援護射撃!俺はあの魔物を抑える!」
冒険者達は即座に動き出す
黒フードの男が苛立たしげに舌打ちした
「ほう……私の計画を邪魔するつもりですかね」
「当然だ!」
アーサーが鋭い声で答えると黒フードの男は不敵な笑みを浮かべる
「ならば……あなた方にも消えて頂きましょう……」
そう言うと黒フードの男は新たな卵を取り出し床に投げつけた。亀裂から溢れるように出てくるスパインラットたち。
「レンは負傷者を守っててくれ!俺達が奴らを押さえ込む!」
「わかりました!」




