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グレイスの独白
獣人たちの喧騒が聞こえる窓辺でグレイスは星を見上げていた。
「異邦人の器……か」
呟いた声には複雑な響きがあった。
(召喚の儀式をしたという話は聞かん、ならばたまたま迷い込んだとでもいうのか?)
遠くから聞こえる弦楽器の調べに耳を澄ます。
こことは異なる世界から特別な『器』を召喚する
過去に例がないわけではない、しかしあれには様々な条件があり、人や物が大きく動くはずだ。
過去語られる英雄のほとんどは異界からの『器』だという。
所謂ユニークスキルという強力な力を持つことが書物や口伝で語られている。
(国がやるのであれば……こそこそと隠れてやる意味がない。しかし……小さな傷とはいえあの速度で傷跡すら残らないとなると……)
あの少年、『フジミヤ レン』聞き慣れない名前、見慣れない髪色、あまりに綺麗すぎる身姿
剣どころか鍬すら握ったことが無さそうな掌だった。
月明かりに照らされた大槌の柄を握り直すグレイス。その金の瞳には緊張と静かな決意が宿っていた。




