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救った命

三日間の行軍は困難を極めた。切り立った岩壁を縫うように続く山道は、大型の馬車にとっては試練だった。揺れる馬車の中で、レンは治療道具を整理しながら外の景色を眺めていた。


「あの……レン殿」


馬車の窓から顔を覗かせたアーサーが話しかけた。


「実はあの時……私が瀕死の重症を負った時のことを聞いていただきたいのですが」


アーサーの話によれば、彼はダンジョン探索中に深手を負い、魔物の追撃を受けながら必死に逃げていたという

ようやく逃げ切ったものの意識が保てず自分が死んでゆくのだと言う事を受け入れていたと言う


「追手があるかもしれないから俺を置いて行けと言ったんですが…」


パーティの仲間が彼を置いて逃げる事ができず皆重傷を負いながら必死で帰還したと言う


「あなたが……私を救ってくださったのです」


彼はレンの手を強く握り締めた


「あっ……いえ……カイレンさんのお陰ですから……」


彼の真摯な瞳を見てレンは少し涙ぐんでしまう


「レン殿……いえ、すみません。貴方がそう仰るのであれば…そう言う事なのでしょう」


アーサーは優しく微笑むと


「カイレン先生とレン殿の手柄として私は構いません……だけどこれだけは伝えさせて下さい……私の命は二人が救ってくれました」


「あの……ありがとうございます……」


レンは俯いたまま小さな声で答えた。その耳はほのかに赤くなっていた。


昼休憩のタイミングでガロウが提案した。


「レン。彼らは君への恩返しを含めて今回の任務に志願したんだ。少し付き合ってあげてくれるかい?」


レンが馬車を降りると、待っていたのはスキットだった。

彼は目を輝かせてレンに駆け寄ってきた。


「おお!レン坊!ハルクの旦那から聞いたぜ!お前さんの治療のおかげでアーサーの命が繋がったってな!」


ネズミ獣人の陽気な声が谷間に響く。


「俺たちにとってあいつは大切なリーダーなんだ。本当にありがとうな!」


スキットはレンの手を取り、嬉しそうにぶんぶんと振った。


「いえいえ……皆さんご無事で何よりです……!」


「いやいや、お前さんの行動がなければ今頃アーサーはおっちんでたからな!ほんと命の恩人だ!」


スキットはレンの肩をバンバン叩きながら言った。


「そ……そんな大袈裟な……」


レンは恥ずかしさと照れくささで顔を真っ赤にした。

マルーシアが笑いながらスキットをたしなめる。


「ほらほら、レン君が困ってるじゃない。でも本当よ?私たちみんな、レン君には感謝してるの」


エルフのギャリットも静かに頷いた。


「確かに……あの時の判断がなければ……今頃は……」


彼は遠くを見つめながら呟いた。

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