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神目

「地震か!?」


レンが地面の揺れに耐える。

崩れた土砂がニーナの馬車を押し流す。


「危ない!」


レンが伸ばした手が彼女の袖を掴む。

二人は崖下へと落下していく。


「しっかりつかまって!」


レンの声にニーナは咄嗟にしがみつく。

激流が二人を呑み込んだ。


***


数分後――


「……生きてる?」


冷たい水から顔を出したレンが呟く。

周囲は激しい雨と濁流に覆われている。

傍らで咳き込むニーナを見つける。


「無事ですか?」


彼女は震える手でヴェールを整える。


「……大丈夫です」


だが二人は激流に押し流され離れ離れになっていた。


「騎士団と合流しなければ」


レンが立ち上がる。

濁流の向こう岸に見慣れた鎧姿が見える。


「グレイス隊長!」


レンが声を上げるが――突然の咆哮が全てを遮った。


水面から巨大な鱗が飛び出す。サンドリザードロードだ。


「下がって!」


レンが剣を抜く。

ニーナが彼の背中に隠れる。


「……あの魔獣は1人で勝てる相手ではありません!」


「それでも!」


レンが踏み出す。濁流が足元を洗う。


「あなたを守らないと……!」


次の瞬間――ニーナの目が大きく見開かれた。

彼の剣筋が閃く。ぬかるんだ足場でなお真っ直ぐな軌跡。


(これは……)


彼女が目を細める。ヴェールが微かに揺れた。そして彼の背中から漏れる白い光が――


(剣術のスキル……?いや……もっと……)


思考が中断される。魔獣が襲いかかる。


「聖女様!後ろへ!」


レンの叫びと共に――彼の剣が魔獣の鱗を砕いた。


レンが振るった剣が魔獣の鱗を割った。濁流の中で血が噴き出す。


(おかしい……こんなに簡単に?)


彼自身が驚いている。数ヶ月前までは素振りするのも精一杯だったのに。

サンドリザードが怒りの咆哮を上げる。


「まだ終わりません!」


ニーナが警告する。魔獣が尾を振り回し――レンは反射的に剣で受け止めた。

衝撃が走る。だが体が吹き飛ばない。


(何が起きている?)


彼の動きが変わる。まるで水の中にいるかのような滑らかさで次の攻撃を避ける。


(これは……?)


彼の脳裏に知らないはずの記憶が蘇る。


(剣筋の流れ……重心の移動……)


誰かが彼に教えているかのような感覚。体が勝手に動く。


「レン様!危ない!」


ニーナの叫びと同時に彼の肩を魔獣の爪が掠める。鋭い痛み――だがすぐに消える。


(傷が……癒えた?)


呆然とする彼女の目の前で――


「なんて…治癒能力」


ニーナが震える声で呟く。彼女のヴェールが完全に落ちていた。

ヴェールの下の碧い瞳が輝いている。そこには畏怖と驚愕が浮かんでいた。


「あなたは……」


グォォォッ!

魔獣の怒号が二人の会話を断ち切る。鱗の裂け目から炎が漏れる。魔獣が火を吐こうとしている!


「下がって!」


レンが叫ぶ。彼は無我夢中で剣を構える。

守りたい、護りたい 自分の力で誰かを!

その瞬間時が止まったような感覚的に見舞われる

周りの雨粒さえも見える程に世界が緩やかに進む。

そして次の瞬間彼の剣筋が魔獣の心臓を貫いていた。


魔獣の巨体が激流に沈む。濁流の中でレンが膝をつく。


「はぁ……はぁ……」


彼の呼吸が乱れている。汗と泥でぐしゃぐしゃになった顔を上げると――

碧い瞳が彼を見下ろしていた。


「お怪我は?」


ニーナが手を差し伸べる。


「いえ……」


レンが首を振る。


「あなたは……一体何者なのですか?」


彼女の声が静かに響く。


「何故ユニークスキルを3つも持っているの…?」


レンが凍りつく。


「……え?」


「完全なる治癒・剣聖・そして『神器』……?」ニーナが呟く。


「治癒と剣聖は書物や神話に伝わっていますが…そんなスキルは聞いたことがない…いえそれよりも複数のユニークスキルを持つ事も異常です」


レンが言葉を失う。


「僕にはなんの事か……」


レンが言葉を探して戸惑っていると

クシュンッ!とニーナがくしゃみをする


「…とりあえず身体が濡れたままでは危険です、団長も見失ってしまいました。雨除けができる場所を探しましょう」


***


雨が止む気配はない。二人は濁流から少し離れた洞窟に身を寄せた。


「焚き火を起こしました」


レンが枯れ枝を集める。


「ありがとう」


ニーナがヴェールを拭いている。

湿った空気の中で彼女の金色の髪が輝いて見える。


「……先ほどの件ですが」


レンが切り出す。


「あなたのスキルの話?」


「はい。どうして……?」


「私のスキル『神目』で見ました」


ニーナが目を伏せる。


「私の力は……人のスキルだけでなく心の奥底まで見通すもの」


レンが息を飲む。


「それで……僕のスキルを……?」


「ええ、何人たりとも欺く事はできません」


彼女がゆっくりと顔を上げる。


「完全なる治癒・剣聖・神器……全てユニークスキル。しかも3つも持つ者は歴史上存在しません」


「だから僕は……特別器……神器って事ですか?」


「わかりません」ニーナが膝を抱える。


「神器というスキルは教会の伝承でも聞いた事も見た事もありません…完全なる治癒は他者のどんな傷も癒やすとされています。剣聖はそのスキルを持った英雄は錆びた短剣でドラゴンを討伐したと伝えられています」


ですが……とニーナは続けます


「問題はあなたがそれを全て一度に持っている事です……」


「でも僕自身は……何も分からないんです。いつの間にかこんな力が……」


「過去ユニークスキルというのは普通1人1つしか持てないものです」


ニーナが彼をじっと見つめる。


「あなたのスキルは……普通じゃありません」


洞窟の暗がりが二人の影を大きく伸ばす。


「すみません…急にこんな話をしても困りますよね…身の丈に合わない力…私もこの目があっても辛いことばかり」


彼女が呟く。

過去の痛みが瞳に浮かぶ。


「獣人には酷い目に遭わされたから」


レンが拳を握る。


「でもグレイス団長や皆さんは……」


「それでも」


ニーナが首を振り言葉を続けようとした瞬間ー


「おや…こんな所に隠れていましたか…探しましたよ」


暗闇から黒い衣装を身に纏った人物が姿を表した。雨音が止んだような錯覚


「!!?」「!!?」


二人の驚きは無視して男は笑う


「さあ聖女様…とレン…私と来ていただけますか?」


ニーナが壁際へ後ずさる


「誰……?」


男の目が不気味に光る。


「君たちを……迎えに来たんだ」


レンが立ち上がる。腰の剣に手を伸ばす。


「何者だ……」


「名乗る程でもないただの……そうだね強いてゆうのならば試験官みたいなものかな」


男が一歩踏み出す。


「君たちの…特に君の本当の価値を理解している者の使いだよ」


男はレンに向かって微笑む。


「聖女様」


男の声にニーナが竦む


「彼のスキルは何でしたか?」


期待と…僅かに瞳に浮かぶのは嫉妬…?そして興奮?

ニーナが答えず俯く


「答えたくない?それなら」


男がゆっくりとレンに歩み寄る。


「君の口から聞きたいな」


雨音が再び強くなる。洞窟の天井から水滴が落ちる。


「近づくな!」


レンが剣を抜く。


「おお怖い」

男が笑う。


「だが君は……もうわかっているはずだ」


男の指がレンの胸元を指す。


「その身体に眠る……真の力に」


レンが震える。先ほど感じた力の奔流が蘇る。


「君は単なる異界の『器』以上の存在だ」


男がニーナを一瞥する。


「聖女様……『神目』を持つあなたは特別だ……彼がくだらないスキル持ちであれば隠す必要がない!」


ニーナが自らの過ちに気がつき顔を青く染める


「まぁいいでしょう」


男は懐から小さな卵を取り出す

反対の手の人差し指を口元に添え


「百聞は一見に如かず…というやつです」


銀色の奇妙な形をした卵を床に落とすと黒い渦が生まれる

その渦から図太い腕が這い出てくる


「さぁ、見せてください貴方の力を…」


そういうと男は闇に消えた


「待てっ!」


レンが後を追うために駆け出そうとするも既に渦から魔獣が這い出してきていた

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