麗奈の頼み
ベッドに寝っ転がりながら、僕は記憶をたどってはLINEにあらすじを書いていく。
ある程度、文章がたまったので、再び麗奈に送信した。
疲れたな。ちょっと休憩して昼メシにしようかな・・・。
そんなことを思いながら、まぶたを少し閉じたつもりだった。
目が覚めると部屋が薄暗くなっていた。僕は慌てて枕元を探ってスマホを拾うと、時間を確認した。
18時を回っている。
「やばッ! 仕事に遅れるッ」
慌てて電気を着け、脱ぎっぱなしになっている作業着に着替えると、スマホとサイフを持って部屋を飛び出した。
深夜2時、昼勤で言えば昼食休憩にあたるこの時間、僕はツナサンドを食べながら麗奈とのLINEのやり取りを眺めていた。
僕が送ったいくつものあらすじに既読はついていた。でも、相変わらず返信はない。
僕はまた、画面を上にスクロールして、送った文章を確認する。ダラダラと続く文章の羅列。
キモかっただろうか。
これが最後のあらすじなのだけど、送ってよいものか躊躇してしまう。
休憩時間が終わりに近づき、作業員達がバラバと席を立って部屋を出ていく。
どうしよう・・・でも、頼まれてたことだから。
僕は自分にそう言い聞かせて、送信を押した。そして、携帯をロッカーにしまうと、作業に急いで戻った。
麗奈にLINEを送ってから、1週間がたった。
その間、既読はついたけど、返信は相変わらずなかった。
やっぱりキモかったのか、それとも麗奈の期待に応えられなかったのだろうか・・・とりあえず、今度の飲み会の時に会ったら謝ろう。
僕はアパートで晩飯のチャーハンを食べながら、麗奈のLINE画面を閉じようとした。すると、ポンッと機械音がして、不意に新しいメッセージが届いた。
(こんばんは。なかなかLINE出来なくてごめんね。いま、忙しいかな?)
僕は急いで文字をタップする。
(暇だよ。家でご飯食べてる)
送信すると、直ぐに既読が付いた。さらに、立て続けに着メロがなる。麗奈からだッ。
「もしもしッ」
「星崎くん、少し困ったことになって、助けて欲しいの」
麗奈の声は少し震えていた。
「えッ、どうしたの? 僕に出来ることなら協力するけど」
麗奈が呼吸を整える音がしばらく続く。僕は、息を殺して次の言葉を待った。
「星崎くんにしかお願いできないの。キツネのお話のことだから」
あの話がなにをやらかしたんだッ。
「どういうこと?」
「星崎くんに教えてもらったあのお話から、インスピレーションを受けて、私が考えたアイデアが会社で採用されたの」
「え? そ、そうなんだ。よかったじゃん」
そう言うと、麗奈はありがとうと小声で答えた。
「でも、それで、なんで助けてなの?」
「チームリーダーの菅原さんに嫉妬されたのッ。あのオバサン、私のアイデアが採用されたのが気に入らなくて、難癖つけてきてるの」
相当、怒ってるな。佐々木さんなら上手に慰められるだろうけど、僕にそんな高等なスキルはない。
「アイデアの元が星崎くんだと知って、盗作で訴えられたらどうするとか言ってきたのよ」
え? なにそれ、怖ッ。
「僕、そんなことしないって」
「もちろん、星崎くんはそんなことするひとじゃないって伝えたよ。でも、あのオバサンは本人と直接会って、話さないと信用できないって聞かないのよ」
なるほど、助けて欲しいってそういうことか。
「じゃあ、僕がそのチームリーダーのひとに会って、訴えませんて伝えればいいってことかな」
「会ってもらえるの?」
「そんなことくらい、全然やるよ」
電話の向こうで、麗奈が安堵しているのが伝わってくる。
僕もホッとした。力になれてよかった。
「ありがとう。じゃあ、いつ時間作れそう? 出来たら、早めだといいのだけだ」
「それなら、明日はどう? 仕事休みだから何時でも会わせられるけど」
どうせ、家でスマホゲームして、寝てるだけの1日ですから。
「分かったッ。リーダーに確認取ったら、またLINEするね。星崎くん、本当にありがとね」
「うん、全然いいよ」
おやすみと、お互いに挨拶して電話を切った。
明日、そのチームリーダーのオバサンに会うことになるのか・・・怖いひとだったらやだな。
でも、麗奈の助けになれるなら、頑張ろう。
僕は食べかけのチャーハンを、再び口に運んだ。冷めたチャーハンも結構うまたかった。




