表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

20/27

蒼と酒を飲む

「あの美人に告白しただけでも、大したもんだぞ」

 仕事帰りで背広姿の蒼は、 2本目の缶ビールを飲みながら、僕の肩をパシパシと叩いた。

「嬉しそうだな」

 僕は恨めしげに睨みながら、ビールをひと口飲んだ。

 たまたま、次の日に蒼から電話がかかってきて、その時につい振られたことを話してしまった。

すると、その日の夜に大量のビールとつまみを持って、家にやってきたのだ。

「嬉しい? 嬉しいわけないだろ。俺は悲しんでるんだよ」

「違うだろ。振られた仲間が増えて喜んでるんだろ」

 僕の指摘に、蒼は驚いた表情になった。

「え? 何で俺のこと知ってるんだよ。誰から聞いたのか?」

「別に誰にも聞いてないけどさ。皆で飲んだとき、見るからに蒼、告白する気満々だったからな。麗奈には会社の先輩の彼氏がいるって、佐々木さんが教えてくれたから、結果はそうだろうなって」

 蒼は大きく溜息をついた。

「麗奈、彼氏いないって言ってたし、あんな思わせぶりな態度取られたら、誰だって勘違いするだろ」 

 前に麗奈と食事に行った時のことを思い出して、僕も深く頷いた。

「佐々木さんが言ってたけど、そうすると、男たちがチヤホヤしてくれるからさ。会社のストレスなんかを発散してるみたい」

「まぁ、騙される男が単純なのかね」

 苦笑いを浮かべて、蒼はグイッと缶ビールをあおって空にした。

「・・・告白したこと、後悔してるか?」

 僕はビールの缶を置いて、そう尋ねた。

 すると、蒼は3本目のビールのプルタグを開けながら、不思議そうな表情で僕を見返してきた。

「恥ずッ、とは思うけど、後悔はしないだろ」

「え、どうして?」

「拓真はさ、告白して振られたらそこで終わりだと思ってるんじゃないか?」

「そりゃそうだろ」

「俺は告白って、エントリーシートに名前を書くことだと思ってる」

 僕は意味が分からず首をひねった。

「例えば麗奈は、今まで友人だと思ってた俺を、告白すると恋愛対象として意識するようになるだろ。するとな、麗奈は無意識にこちらの行動1つづつを、今の彼氏と比べてしまうわけだ。そのパラメーターが今の彼氏を上回れば、チャンスが来るというわけさ」

「なんか、すごい理屈だけど、ポジティブですごいな」

 感心してそう言うと、蒼はヘヘッと得意気に笑った。

「だから、拓真もまだエントリーシートに名前を書いただけなんだから、諦めるのは早いって。それに、病院で会ったときの印象からして、お前に対するパラメーター、結構高そうだったじゃん。だからもうちょっと上げれば、もしかするんじゃないか」

「そうかな・・・」

「だからって、パラメーター上げようとして頑張りすぎるなよ。ストーカー認定されたらゲームオーバーだからな」

 冗談っぽくそう言って、蒼はまたグビグビッとビールをあおった。

 もう少しか・・・無理だな。

 そもそも、パラメーターの上げ方も、ルールも分からないし。どんな行動をとっても、裏目に出そうなんだよな。

 僕の脳裏に、菅原さんの笑顔が浮かぶ。

 でも、あきらめきれないです。こんなに誰かを好きになったのは初めてだから・・・。

 床に置いた缶ビールを取ろうとして、隣に置いてあるスマホが目にはいった。

「・・・僕に出来るのは、これだけだよな」

「ん? なんか言ったか」

「いや」

 僕は誤魔化すように笑うと、缶ビールを一気に飲み干した。

 

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ