8話【子供のように】ト【高く高く】
子供のようにマネキン達が俺とだるまさんがころんだゲームを楽しでいるような感じは……。
1ミリもない、そりゃそうだろう。
マネキンだもんな。無表情から急に笑顔になっていたらそれはホラーなんだよ。
いや、勝手に動いている時点でもうホラーか(苦笑)
数を数えては振り返る、そして動いた人を指名する。
指名された人は鬼の側に行き捕まったことになる。
ひとりまたは数名の度胸ある人が鬼の背中にタッチし、捕まった人を鬼の側から解放するという、簡単なルールだ。
しかし、この場合……マネキン達一人ひとりに名前はないので、どうしよう。指差しでいいのか?
何か個別判断できそうなものはと、マネキンから目を離した瞬間だった、1体のマネキンがスーッと動いたのを俺は横目で見逃さなかった。
「お前、動いたよな」
そう言って人差し指を動いたマネキンへ向けた。
するとマネキンはガタガタと震え出し、その場で胴体や頭、手足がバラバラになって崩れた。
しばらくその様子をじっと見つめ元に戻る気配のないマネキンをみて、子供のようにゲームを心から楽しんでいたのは俺の方だったようだ。
部屋の隅に高く高く積み上げられていく、胴体と頭、手足がバラバラになったマネキン達。
だるまさんがころんだゲームの攻略がわかった俺は1体、また1体と次々に動いたマネキン達を指差していく。
残り1体になったマネキンと俺の一騎打ちになった。
もうすぐ勝負が決まるだろう。
「だ〜るま〜さんが〜〜ころ〜〜んだ!!」
振り向くとマネキンは俺に近づきながら自らの左腕を外していた。
あのマネキン何をしようとしているんだ。
壁側に向き直しもう一度
「だ〜るま〜さんが〜……」
ビュン!?
言い終わる前に俺の横を何かが飛んで来た。
そして壁に刺さっている。
「なんだよ!?危ねぇな!……う、腕」
真っ直ぐに伸びた指先の第二関節辺りまで垂直に壁に刺さっている。
振り向くとマネキンの左腕がなかった。
あいつ自分の腕を投げやがった!?
自分が最後だと理解しているのかマネキンはルールを無視してでも勝ちたいらしい。
「そっちがその気なら俺には奥の手があるんだよ!」
そう言いながら俺は高く上げた手をゆっくり下ろしてマネキンに向かって人差し指を差した。
8話 End
お題【子供のように】24‘10/14
【高く高く】24’10/15