10話【忘れたくても忘れられない】ト【秋晴れ】
「えっ!?は?どういうこと!?」
突然、光出した右手は少しづつ身体全体を覆っていた。
動揺して俺はパニックを起こすんじゃないかと思っていたが意外に受け入れている自分がそこにいた。
ゲームに勝った者に渡される賞品か?
だとしたら“ドア“が欲しかったよ。などと余裕ぶっているのは勝利したことに対しての優越感に浸っているだけである。
強制参加とはいえマネキン達とだるまさんがころんだゲームをしたことは忘れたくても忘れられない不気味で不思議な体験であることは間違いないだろう。
静けさの戻ったオブジェ部屋を久しぶりに俺は探索し始めた。
久しぶりという感覚は可笑しいはずなのに、ついさっきの出来事から今だ興奮状態の解けない俺の脳がそうさせている。
未来からの手紙に書いてあった俺の言葉を思い出せ。
『冷静になれよ!』
そうだ、冷静を取り戻せ。優越感に浸り興奮状態から目を覚ませ。モブキャラに戻るんだ!!
俺は目を瞑り深呼吸した。すると身体を覆っていた光は身体の中に入って行きあっという間に消えてなくなった。
あの光は一体なんだったのだろう。
RPGでいうバリアーみたいなモノかななどと中学2年生じゃない、21歳の俺は中二病なことを考えていた。
探索した結果。オブジェ部屋にはマネキン達(崩れてしまった)や石像の他に乱雑に床の上に置かれた絵画をいくつか発見した。
一つ一つ絵画を見ていくと……。
有名な画家が描いた作品であることがわかった。
黄色い背景に黄色の花瓶その花瓶の中に、数本の向日葵が描かれ、作品全体がほぼ黄色い〔ひまわり〕や秋晴れを感じさせる、人の何倍にも積まれた稾が描かれた〔秋、積みわら〕などが見つかった。
本物であるはずがない。本物は世界一厳重な防犯セキュリティーが設置された場所に保管されているに違いないと俺は思っている。どれも複製画だろう。
それでも絵画を使ってドアを作るには無理あるように感じる。
悩んでいると、他の絵画の中でも一際大きいサイズの絵画を見つけた。
俺は少しづつゆっくりゆっくりと部屋の【東】の壁へ寄せていく。
部屋の【西】側に乱雑に置かれた他の絵画はとりあえずマネキン達のいる【北】側へ追いやることにしよう。
二つ、三つと小脇に抱え移動させていく。
最後の一つ青紫が綺麗で月がとても映える、ドビッシー作〔月の光〕は【西】側の壁の方へ残したままにした。
ようやく片付いた一際大きい絵画を【東】の壁に立て掛けた。
白くてまるでそこに元々存在していた様に部屋に溶け込んでいる。
ハンマースホイ作の〔白い扉〕もうこれがドアの代わりでいいじゃないかと思った。
立て掛けた絵画を見て自分の目を疑い、何度も目を擦る。
二つの扉の内絵画の中央に開いた扉の先に小さく描かれた部屋が見える。
それは身に覚えのある部屋だった。
10話 End
お題【忘れたくても忘れられない】24‘10/18
【秋晴れ】24’10/19




