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邂逅

7:30頃間違えて未完成のものを出してしまい申し訳ありませんでした

 まあ何をするにしてもとにかく人里に行かんと始まらない。

 さっさと向かいたいが大まかな位置も地形もわからんのよな、そう思い【明かりの魔導書】を起動した。


 これは開くと自身を中心とした周囲10kmの地図を表示する効果を持つ魔導書だ。地形だけでなく生体反応を赤点で、魔力を持つ物体を青点で示してくれるので索敵、宝探し、人探し等多岐に渡る使用用途を持つ。


 その上生体反応感知は開いている限りリアルタイムで更新されると至れり尽くせりだ。


 しかし難点もある。

 開いた瞬間目に飛び込んできたのは大量の赤点。

 いつ開いても目がチカチカする。なんで一番重要な生体情報を目に悪い色に設定したんだよボケが。

 目を閉じて軽くもんでは目を皿のようにして赤点をなめ回す様に見るのを繰り返す


「おっ」


 そうこうしているうちにお目当ての赤点を発見する


 目をつけたのは森の近くを時速10km程度で重なって動く赤点、それに同速度で追従する赤点。


 赤点がこの様な動きをするならほぼ確実に先頭の赤点は馬と御者、その後ろのは馬車に乗ってるボンクラだ。


 つまりは高確率で人間だ。とりあえずはこいつらに接触するのが楽に人里に行く手段だろう


「んで、問題はこいつらだよな」


 少し目線を下に下げるとそいつらをさらに森の中から追従する20を超す赤点が目に入る。経験上こういう動きをしてる集団は魔物だの野盗だのろくな連中では無い。


 このままコンタクトを取ろうとするとほぼ確実にコイツラと出くわすハメになる。


 この世界におけるおれの戦闘力がはっきりしない以上極力危険な集団と接触したく無い


 おれは自分より弱い相手にはいくらでも強くでられるが自分より強い相手には笑える程弱いのだ。


 暴力という最悪全部ちゃぶ台の様にひっくり返せる能力は、物理的アドバンテージのみならず心理的にも大きなアドバンテージを生む。


 暴力の強い側は過剰な要求を通せるが弱い側はちゃぶ台返しが発動しないラインまでしか要求を通せない。


 海千山千の経験、人に好かれるという才能、高い知能、等で暴力のアドバンテージを埋められる怪物もいるが、そんなのは傑物中の傑物。


 そしておれは頭の出来が大して良くない、学もない、コミュニケーションも得意ではない。だからこそ他者からの暴力に屈さない為に割り切って暴力方面をひたすら伸ばしていった。要は暴力特化のボンクラだ。そのため暴力が通じないと途端に素の無能さが露呈する。要はコイツラがおれ以上の暴を持っていた場合おれの新たな生活は確実に終わる。


 それでも足が止まらないのは人寂しさ故のものだろう、とにかく一刻でも早く人に会いたい。3ヶ月間誰も生き残っていない世界で生きていたせいで人寂しさが限界を超えている。


 今なら前の世界のダイゴ(スカトロ趣味のあるホモ、生涯を通じて風呂に入った経験が一度もない事を誇りにしている馬鹿)にでも頬ずりできるだろう、それくらい寂しい。

 他者に興味を持てず、他者を愛せない欠陥品のおれでも一丁前に寂しさは感じるのだ。


「うし、行くか」


 飲むと5分間あらゆる行動速度を2倍にする魔法薬【加速薬】を服用しておれは駆け出した。


 風の気持ちよさを感じつつ走っている間にここの人間はそもそもちゃんと前の世界の人間に類似する生物なのか??という疑問が湧いた。


 どっかの色街で買っちまった妖怪みたいなババアの顔が脳裏にちらつく。

 アレと同レベルの容姿の種族をお出しされて

「これがこちらの世界の人間です!」

 とかやられても困るンだわ。


 さらにその場合おれから奴らが化物に見えるように奴らの側からも化け物に見えている可能性がある。


 言葉も文化もかけ離れている可能性すらある。



 それでも人寂しさに負けひたすらに駆け抜けた。


 ■■■■

 たどり着いてみれば案の定馬車に乗った集団、及びに襲撃者が見つかった。


 茂みに隠れつつ様子を見てみる。


 馬車の集団は醜いデブ、剣を構えたおっさんに、ブス女のクソトリオ。

 ファーストコンタクトは野郎✕2+実質野郎で構成された糞だ。

 それでも…ヤベえ、なんか涙出てきた。豚、野郎、ブス相手ですら人間であると言うだけで、会えた事が心底嬉しい。


 一刻でも早く駆け寄って話したいが取り込み中のようだ。

「か、金ならいくらでもある!お前達では一生かかってもお目にかかれないような額の金をやるぞ!だからぼくと従者共の命だけはなんとかたすけてくれ!」


 下痢の様なきったねえダミ声でデブが喋った。これは持論だが顔と同じく……いや、それ以上に人格が出るのが声だ。顔から言ってダメ人間のやつが有能な事は稀にあるが声が、あっ(察し)の奴でまともな奴には今までであった事がない。そして今までの経験に則ればこの声の持ち主はどうしようもないクズだろう。それでも今は状況が状況だけに出会えて嬉しいが。


「坊っちゃん、あんだけ高い金もらっといて悪いがこの状況だとアンタを助けられそうにねえ。

 この後必死で戦う分アンタより酷い殺され方をするだろうから、許してくれ……すまない……」

「私の様なブスと心中させてしまい申し訳ありません王子様、すみません!すみません!すみません!すみません!」

 護衛らしきジジイとブスもなんかほざいてる。


 隠れつつ目を少し右に向ける。


 見慣れた面……とは少し違うものの完全武装をした豚面をした二足歩行のデブが20頭程見えた。

 げぇ、オークかよ。


 オーク、豚頭人体の怪物。

 前世のそれは金属に匹敵する硬度の骨、圧縮されてギチギチに詰まった筋肉、それらを覆う脂肪による打撃をほぼ無効化する肉のヨロイを兼ね備えた戦士だった。

 しかしこの三点セットなんてどうでも良くなるレベルで投石能力が厄介だ。魔術で人間の頭大の石を精製し石を投げるだけの単純な能力、しかし……。

 その時偶然デブと目があった、というかあってしまった。


「そ、そこの女!冒険者か?それならぼくを助けろ!」


 話しかけて位置ばらしてんじゃねぇクソボケ、威力偵察とか不意打ちとか色々とやれたのに台無しじゃねぇかクソデブが。燃やすぞ



 でもまあ、ちゃんと言葉は通じるわ、アシスト機能とやらのおかげかもしれん。まあ感謝する気はさらさらおきんが。


 言わなくても助けてやるよ、お前らは貴重な街への道標だしこのデブからは謝礼が期待できそうだしな。


「おい!聞いてるのか!このファーリス王国第一王子、エドワード・チャモスの命を助けるという大義を果たさせてやると言ってるんだ!泣いて喜びさっさと下民としての義務を果たせ!」


 ……やっぱ見捨てて帰ろうか、まあ豚同士なんだから仲良く慣れそうだしなんなら良いカップルになるかもしれん

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