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夏に出会った小さな神様

作者: 花春

ある夏の暑い日

私は神様に出会った。




高校2年生の帰り道

今年一番の暑さといわれた日

陽の光を避けるため

少し休憩しようと、

屋根のあるベンチに腰かけた。


そこには先客がいた。

純白の毛を持つ美しい白猫。

この暑さで、やつれているように見えた。


私は自販機で水を買い、

白猫に少しずつ分けてあげた。

水を飲み、涼しくなったのか

白猫は私が座るベンチに飛び乗り隣に寝転んだ。


綺麗な白い毛を撫でてあげると

気持ちよさそうに目を細めた。


しばらくして

私が帰るために立ち上がると

白猫は私にひと鳴きした。


それはまるでお礼の言葉みたいだった。


その後、あの猫を見ることはなかった。


それから大人になった私は上京し、

故郷を離れて仕事に就いた。


久しぶりに帰省して、

さんぽついでに

あの公園へと向かった。


道の角を曲がろうとした瞬間


私の耳のすぐ隣で”猫の声”が聞こえた。


驚いて、私は足を止めた。


同時に、目の前を恐ろしい速さで走り抜けるトラック。



もしも

あの時、足を止めていなかったら、


壁が死角となり

トラックに気づいていなかったら、


私はどうなっていたのだろうか…?


恐ろしい考えが頭の中で木霊する。

放心状態で立っていると、

私に気づいた近所のお婆ちゃんが

心配したようにこちらへ来る。



猫の声がしたこと、

そのおかげで

事故に遭わなかったこと、


私の話を聞いてお婆ちゃんは言った。



「それはねぇ、神様だよ」



「白猫を助けたことがあるかい?」




私は思い出した。

学生時代に水を分けてあげた

白猫の事を。



それを伝えると、

お婆ちゃんは嬉しそうに話してくれた。




「私も昔…神様に助けてもらった」




知っている人は少数だが、

この地域は昔から、

小さな神様がいるといわれていたそうだ。


その神様は人間の身近で生活している動物に姿を変え、

助けてくれた者達を守ってくれるそう。


お婆ちゃんも戦時中に、

小さな神様に助けてもらったそうだ。


「あの神様はまだ、

白猫の姿でいらっしゃるんだねぇ、」


愉快に笑うお婆ちゃん。

そして小さな神様が祀られているという

祠に案内してもらった。



祠に手を合わせお礼を伝える。




水を分け与えたことを神様はずっと覚えていて、

私を救ってくれた。



どんな事でも善意の気持ちを忘れてはいけない。

誰であろうと助けの手を差し伸べる事を

私は一生大切にする。




祠からの帰り道

最後にもう一度、白猫の声が聞こえた。



【学生時代

夏の暑日に

私は神様に出会っていた⠀】

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