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極上のサービス☆

 ときどき、身に余るありがたいサービスを受けることがあります。

サービス業のプロフェッショナルの方々には、本当に頭が下がります!


 たとえばバーで。

 以前のエッセイで「私はバーで絶対に『いつもの』と注文しない」話を書きました。飲むお酒がいつものかどうか判断するのはお店のほうで、客の私が決めるもんじゃない……私見ですが私はそう考えています。


 ある日、私はバーに行きました。仕事を終えて一人の部屋に帰るのも淋しいので、よくバーへ寄り道して帰っていました。

 通っていると、顔馴染みのお客様とも知り合いになります。その夜は偶然、知っている方がいつもより多かった。入口から順にご挨拶をしたり、軽口を叩いたりしながら、いつも座っているカウンターの端っこの席に辿り着いて座ったと同時に、マティーニが出てきた!! 私もビックリしましたが、それを見ていた他のお客様のほうが驚いていました。だって私、まだマスターにご挨拶さえしていなかったのです。注文なんて、ぜんぜんしてない。


お客;なんで!? まだソウさん、注文してないですよね!? マスターなんで!?

マスター:ソウさん、今日は何をお飲みになるつもりでした?

ソウ:マティーニを……。

マスター:それは、マティーニでございます。

お客:………………。


正解なんですけど、確かにいつもと同じのを飲むつもりだったんですけど、出てくるタイミングがカッコ良すぎる……! マスターの気遣いにシビれる一件でした!


 引きこもりなのでバーくらいしか行かないので、これもバーの話ですが……。


 旅行で泊まったホテルのバーへ出かけました。バーがあるくらいですから、高級ホテルです。

 お店に入ると真正面に、海に沈む夕日が見えました。素晴らしい眺めに、私は感動して立ち尽くします。まだお店は開いたばかりで、他のお客はいません。バーテンダーの方がお好きな席にどうぞと言ってくださったので、私は迷わず夕日の見える一番良い席に着きました。ゆったりとしたソファに座って、刻一刻と姿を変える夕日を眺めて、美味しいマティーニをすすりながら、贅沢な一時を楽しませて頂きました。


 翌日、私はまた同じバーへ行きました。昨日と同じように夕日が輝いています。お客がいないのも同じです。でも一つだけ、違っていました。昨日座った一番良い席に「予約席」の札が置いてあったのです。ちぇっ! 今日もそこに座りたかったけど、予約席なら仕方ないや。私が他の席に座ろうとしたら、カウンターから出てきた昨日のバーテンダーさんが、予約の札を取り上げながら言いました。


マスター:どうぞ、こちらのお席へ。

ソウ:でもそこ、予約席ですよね? 他のお客様の席ですよね?

マスター:あなた様がお見えになるかもしれないので、お取りしておきました。


 くうううう!!!!!! 来るかどうかわかんない私のために、席を取っておいてくださったのですか!? どんだけぇ!!!!!!!!!!! ありがたくて涙が出ますよ!!!!!


 こういうシビれるサービスを私もご提供したいのですが、こういうのって本当に難しいです!!


 バーの話ばっかじゃアレなので、他の場所のサービスも……。このサービスは、いまだにどうしてなのか謎です。どうして私の気持ちが読めたんだろう?? 謎ですが、最高の一言でした!!


 場所は、市役所です。私は離婚届を提出するために、窓口へ行きました。手の中には記入済みの離婚届けがあります。わかる人にはわかるのですが、離婚届って独特の色をしています。見る人が見れば、100m先からでも色でわかる。


 自分で望んだ離婚ですが、私はとても落ち込んでいました。夫を傷つけたのも自己嫌悪ですし、自分で選んだ道が合っているかもわからない。これからどうなるのだろうという不安と、結婚に失敗してしまった後悔や嫌悪感でビクビクしていました。


 誰にも見られないように離婚届を小さく折りたたんで、そっと窓口へ提出しました。受付をしてくださった女性は、私と同年代に見えました。テキパキと仕事をする姿は自信に満ち溢れているし、左手には結婚指輪が光っています。この方から見た私なんて、人生の敗北者以外の何者でもないんだろうなと想像すると、ものすごく落ち込んでしまいました。


 女性は痛ましい顔をするでもなく、事務的に受け付けてくれます。窓口にいれば離婚届なんて日常茶飯事でしょう。慣れているだろうし、いちいち反応してたら疲れるだろうから、他の届と同じように処理してくれた。女性は淡々とした調子で「これで受付は完了しました」そう言いました。


 私はビクビクしながら、女性に質問しました。

「あの……、これって……、いつから離婚が成立したことになるのですか?」

 離婚届を提出するまで色々とありましたし、結婚に失敗してしまった自分を恥じる気持ちも感じていましたから、質問するのも勇気が必要でした。もしバカにしたような顔をされたら、二度と立ち上がれない……。でも効力がいつから発生するのか、それは知りたい…………。


 女性はそっと左を見ました。そして次に右を見ました。私の後ろを見て、周囲に誰もいないのを確認すると、小さな小さな声で………………、




















「離婚、おめでとうございます。効力が発生するのは、今この瞬間からです」



そう言ってくれたのです!! 離婚を祝ってくれたあああああああああ!!!!!!!(涙)。


もちろん私、自分が離婚を望んでたなんて一言も言ってません! 記入済の届を窓口に提出しただけです! もしも私が離婚を望んでなかったら、大問題になる発言です。それなのに危険を冒して「おめでとうございます」って祝ってくれたんです!!! この時やっと「離婚したのは間違いじゃなかった」そう確信できました!!


でも何で私が離婚したかったって、わかったんだろう? いまだに謎です。でもあの一言は、最高に嬉しい一言でした!!!!!

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