表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/70

おばあもラブい♡

 ご機嫌いかがでしょうか?

 私はちょっとアタフタしていました♪


 先日ラヴいおじいさまのことを書きました。もちろん、おばあさまも大好きです♡ ですから今日はおばあのことを♡


 私の近所に、一人暮らしのおばあちゃまがいます。仮にお名前を日村さんとします。

 日村さんは御年84歳。ご高齢ではありますけれど、めっぽう気が強い! 長男家族と同居していましたが、嫁と折り合いがつかず家を飛び出して(!)アパート暮らしです。心身ともにご健康なのですけれど、出会った頃は「死にたい」が口グセでした。


日村さん:生きていても、なんにも良い事あらへん! こんなんなら、死んだほうがマシや!

私:そうは言っても……。お迎えが来るまでは、楽しく暮らしては……?

日村:楽しいことなんか、一つもあらへん! 死んだほうがマシや! ああ、もう死にたい!!


 死にたいとおっしゃるわりには、とってもお元気です。いつもキレ気味に死にたいと荒ぶっていらっしゃいました。そのうちお姿を見かけなくなったので「ご希望通りに、あの世に旅立たれたかな?」と想像していました。

 近所には独居の高齢者がたくさんいらっしゃって、亡くなるのは日常茶飯事です。私が知っているだけでも、すでに四人亡くなっている。いつかは我が身ですから、他人事ではありません。

 

 半年ほどした頃、ガリガリに痩せて歩行器で歩いている日村さんに会いました。


私:お久しぶりです!

日村:ああアンタか! わたしな、大変やってん! 急に脳梗塞起こしてな、危なく死ぬとこやった! 救急車で運ばれて手術して入院して、やっと帰ってきたんや! たまたま外で倒れたから、通りがかった人が助けてくれてん! 家で一人やったら、死んでたわ! おお、怖い! 怖い!

私:死にたい言うてましたやん? おうちで一人だったら、死ねたのでは?(← これを質問する私も、どうかと思う……)

日村:本当に死ぬってなったら、怖くて! やっぱり死んだらアカンわ!

私:ですよね~! 

日村:部屋でじっとしてたら歩けんようになるから、歩いてんねん! 

私:歩行器で歩くのは、大変でしょう!?

日村:医者から歩けなくなるのは時間の問題やって言われた。でも寝たきりになるのはイヤや!

私:そうですね。転ばないように、気を付けてくださいね。

日村:わかってる! コケたら死ぬまでずっと寝たきりや! 気を付ける!


 日村さんは寒い日も暑い日も、歩行器を押して歩いていました。でも歩ける距離は、ほんの数メートルだけ。私も寒くて引きこもっていたので、会うことはほとんどありませんでした。

 春と夏が過ぎて次に会えたのは、紅葉が美しい時期でした。去年の秋です。とても天気が良い日で、私はお手紙をポストに入れるため外出した。すると日村さんが杖をついて歩いていました。


私:歩行器から杖になったのですね♪ おめでとうございます♪

日村:まだフラフラするから、杖が手放せんのや。

私:すぐそこのポストまで行くのですけれど、手前の紅葉がキレイですよ♪ 一緒に見に行きませんか?

日村:遠くまで歩けへん。やめとくわ。


 紅葉までの距離、わずか20m。それでもダメかぁ~! 病気は怖いなぁ~! お会いすれば立ち止まって雑談するのですけれど、なかなか会う機会がありません。お元気かなぁ~?と思いつつ、季節は過ぎてゆきます。ふたたびお会いできたのは、年が明けて霜が降りた寒い日の朝でした。日村さんは杖を持つ手の反対側に、緑色の葉っぱを入れたビニール袋を下げています。何の葉っぱだろう?


私:お久しぶりです!

日村:久しぶりやね! 元気か?

私:おかげさまで♪ 調子はいかがですか?

日村:今朝はな、タンポポの葉っぱを摘みに行ったで!

私:タンポポの葉っぱ? なぜ?

日村:昔の食べ物がない時代はな、タンポポの葉っぱを食べててん。子どもが六人もいるから、食べられるモンは何でも食べてたわ!

私:お子さんが六人!? 食べさせるだけで大変ですね!

日村:そうや! うちは父ちゃんが若くて死んだから、ワタシ一人で六人育て上げたんや!

私:お一人で六人もっ!? 大したもんだ!

日村:本当に大変やったわ! タンポポでも草でも、食べられるもんは何でも食べた!

私:タンポポの葉っぱが食べられるとは、知りませんでした!

日村:今日みたいに霜が降りた日は、葉っぱが甘くなるんや。誰も通らん場所まで行って、キレイで柔らかい葉っぱだけ摘んできた。アンタにも、半分やるわ!

私:えっ!? 頂いてもいいのですか?

日村:たくさんあるから、半分やる。持って行き。

私:ありがとうございます♪


 部屋に持ち帰って丁寧に洗って、他の野菜と混ぜてサラダにしました。ほんのり甘くてちょっと苦みがあって、柔らかくて美味しかったです♪ 私も食べる物に困ったら、タンポポの葉っぱを食べよう。ってか日村さん、今でも食べるのに困ってるのかなぁ……? お金ないから、葉っぱを摘みに行ったのかなぁ~? いくらあげると言われたとは言え、素直にもらっちゃダメだったかも……。次に会ったら、お礼を言わなきゃ!


 それから何度か日村さんらしき方をお見掛けしたのですけれど、てっきり別人だと思っていました。だって家から遠く離れている場所だったのです。そんなに遠くまで歩けるわけがない、よく似た方だと思っていました。ところがバッタリあった日村さんは、遠くで見たのと同じ服装をしてる。めっちゃ遠くまで歩いてるやん! おめでとうございます! すごい!


私:この間〇〇でお見掛けしたのは、日村さんでしたか!?

日:そうや! 医者からは歩けんくなる言われたけど、毎日歩いてたら治ったで!

私:すごいですね! おめでとうございます! そうそう、タンポポのお礼を言わなきゃ! すごく美味しかったです♪ ごちそうさまでした♪

日:タンポポ?

私:冬の霜が降りた日のタンポポは甘いって、摘んできたタンポポの葉っぱをくださったでしょう?

日:さて……?


(え? もしかして認知が入ってる? おぼえてないなら、言わないほうがいいかな?)


日:タンポポ……。思い出した! 寒い日やったな! 昔は食べてたから懐かしくて、摘んだわ!

私:思い出してくれました? ありがとうございました! 美味しかったです♪























日村:あんた、食べてしもうたんか!? あんなモン、食べたらアカン! 私は懐かしくて摘んだだけやで! うちに帰って、すぐに捨てたわ! あんた、なんで食べたんや!? 道に生えとるもんなんて、食べたらアカンで!!!



 めっちゃ怒られました……。おばあの昔のご苦労と、寒い中摘んでくれたお手間に感謝して食べたのに、めっちゃ怒られた! おばあの人生に思いを馳せて感動していた私の時間を返せっ!!


 おばあ、めっちゃ強いです! おばあ最強! 何があってもへこたれない! そして過去はキッパリ捨てる! そんなおばあに、私もなりたい…………!!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ