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やってしまった……。

 やってしまった……。


 以前に伊賀市役所の皆様に、たいへんお世話になりました。拙書を伊賀市の小中学校と図書館に献本させて頂いたのです。ご親切に市長様を始め、たくさんの方々が出迎えてくださって、それはもう身の置き場もないほど親切にして下さいました! そして私の「伊賀弁を教えてほしい」という申し出に対して、市長様(!)と秘書広報課様と教育委員会様が2時間(!)に渡ってレクチャーしてくださいまして……。それだけでも恐縮なのに、後で議会中だったと知りまして……。議会中の市長様や各部署の責任者の方々は、本当に秒刻みのスケジュールです! それなのに2時間も……!!


 身に余る御厚情に心からの感謝を捧げますやん? 精一杯のお礼メールを書きますやん? 送りますやん? これが、送り先を間違えていたのですよおぉ!!!

 トンチンカンなお礼を各所へ送りつけてしまい、あちらは「どうも間違えているらしいが、あからさまに間違いを指摘するのもどうか……」そういう奥ゆかしくて優しい伊賀の方々が、私は大好きです! 大好きなあまり、間違えに気づかず誤ったメールを送り続け……このままではソウが気の毒だと、見かねた伊賀市役所様から優しくご指摘いただいて、やっと間違いに気づいて「ぎゃああああ!!!」となっていたのが、去年。


 そして先日、折り入ってお願いしたいことがあって再びメールを送ることにしました。「前に間違えたから、今度こそ間違えないように!」そう思ってお名刺を確認、さらに万全を期してメールを確認しようとしたら、年末にうっかり誤ってデータを削除したのだった……。「データ消すなんて、私はどんだけバカなんだ!」自分に舌打ちをしつつ、記憶を辿る。「〇〇さんと△△さんを間違えておぼえていたから、その逆にすればヨシ! 完璧!」そう思って送信したら、そもそものお名前を間違えていました……。ほんとに私、どんだけバカなんだよ!!


 間違えて送った方はご親切に「ソウが間違えていたのは〇〇さんだろう」と機転を利かせてくださって、正しい送り先にメールを転送してくださいまして、おかげでご当人から「送り先が違っていましたけれど、お申し出の件、了解しました!」とお優しいメールが……! 慌てて間違えた方にお詫びのメールを送ると「お気になさらないでください。伊賀市をお気に召してくださって嬉しいですから♪」ありがたすぎるお優しいお返事をくださいまして! 感謝感激です!! そしてすみません!!


 こういう「うっかりミス」を、わりと頻繁にしていまして……。


 ずうっと大昔に、病院で事務をしていました。高校を卒業してすぐです。病院で処方箋を書いたり、診察料を計算したり……。空想の余地はない、四角四面なお仕事でした。今ならわかる! 私は向いてない!! こういう正確さを求められるお仕事、本当に苦手なんですよ! 私の良い所が、ぜんぜん活かされない! じゃあ私の良い所ってどこよ?って訊かれたら返答に困りますけれど、とにかく数字をどうこうするのは苦手なんです!! しかも人様の命がかかっている! 責任が重すぎる!!


毎日まいにち向いてない仕事をして達成感はゼロだし、この仕事が一生続くのかと思うと絶望感しかありませんでした。でも他に何ができるかわからないし、辞める勇気もない。死んだ魚の目で毎日暮らしていました。そうは言っても大事なお仕事です。自分なりに頑張っていたのですけれど、とにかく向いてない! 一所懸命にやっても、うっかりミスの連発! それでも何とか仕事がこなせるようになった頃、事件は起きました。お薬の量を間違えて処方箋に書いてしまったのです!! しかも10倍! 小数点の位置を間違えてしまった!! 


本来ならありえないミスなのです。バカな私が間違っていても、他の事務員さんがチェックするのですぐわかる。ところがチェックをすり抜けてしまった! さらに薬局で薬剤師さんたちが複数人でチェックするのに、これもすり抜けてしまった! 完全に人的ミスです! 当時はインフルエンザで大忙しでしたけれど、それを言い訳にしてはいけません!!

 

不幸中の幸い、本当にラッキーなことに、処方されたのは胃薬でした。10倍も飲んだら良くはないけれど、深刻な健康被害が出る可能性は低い。すぐに気づいた薬剤師さんが患者様に連絡を取って正しい量の胃薬と交換してくださったので、一応は事なきを得ました。結果は無事だったけど、過程がよ! そもそも私が間違えたのがダメじゃん!!


反省していた矢先に血液検査のお手伝いをしていた私は、誤って採決した注射針を自分に刺してしまいました……。だからそういうコトすると、血液感染しちゃうでしょうが!!!

この時は、優しくてユーモアたっぷりのおじいちゃん先生から、こっぴどく叱られました! 先生は私の安全を心配して叱ってくださっているのですから、言い返す言葉もありません。そしてこの時やっと気づきました。「私、この仕事はムリだわ! 辞めよう!」


一緒に住んでいる両親に言えば、きっと反対されます。両親は病院事務という世間的に聞こえの良い仕事に就いた私を自慢に思っていましたから、辞めるなんてとんでもないって言うに決まってる。

私は誰にもナイショで辞職願いを書いて、先生にそっと差し出しました。先生はお仕事は真面目一徹で、他のスタッフからは恐れられていましたけれど、先生が真面目な顔で言う冗談(他の人は冗談と気づいてない)に笑い転げる私のことは、それなりに気に入ってくださっていたようです。先生は何が理由で辞めるのか、私に尋ねてきました。でも処方箋を間違えたとか、針が刺さって向いてないとかいう理由は、できれば言いたくない。それに私には、他にやりたいことがある。口ごもってモゴモゴ言う私に、先生は詰め寄ります。


先生:何で辞めたいん?

ソウ:いや、その……。

先生:お給料ですか? (← 今思えば、賃上げを要求すればアップしたかも!)

ソウ:ちがいます……。

先生:辞めて、どうするの?

ソウ:(この質問なら、答えられる!)辞めて、本が読みたいです!!

先生:本っ!? どういうことですかっ!?


しまった……! うっかり本当のことを言ってしまった! 仕事を辞めて、読書三昧の日々が送りたかったのです。寝てもさめても本を読みたかった……。


先生:本を読みたいから、仕事を辞める?

ソウ:えぇ、まぁ……。

先生:仕事しながらでも、読めるでしょ?

ソウ:ぜんぜん足りません! (← 心の叫び)


甘い考えですが当時は親の家で暮らしていましたから、生活費として3万円親に渡して残りのお給料はぜんぶ好きに使っていました。そのお金と引き替えに本を好きなだけ読めるのなら、お給料なんていらない! そう思っていたのです。


先生:本が……読みたいの?

ソウ:そうです! 読みたいです!


先生はとても仕事熱心な方で、病院がお昼休みの時間は最新の学術書を読んでお勉強しているのを知っていました。そんな先生だからこそ、私が本を読みたいという気持ちに理解を示してくださったのです。


先生:そこまで言うなら……。


こうしてめでたく退職願いは受理され、私は仕事を辞めました。私が退職するのを親が知ったのは先生の奥様からの電話です。「マチさんがご退職されるので、送別会を開きます。ついては〇日にマチさんのお帰りが少し遅くなると思いますけれど、ご了承ください」今思えば送別会は開いてくださるわ、帰りが遅くなるからと親にまでご連絡してくださるわ、大事にされていたなぁ!とわかります。当時は若かったのと、バカだったので気づかなかった……。この電話で退職を知った親が怒り狂うのですけれど、そりゃそうだよなぁ……。その上、その後は二度の離婚も親には知らせず「離婚しました」って事後承諾だったしなぁ……。ごめんよ(涙)。


この「本が読みたいので退職した話」は、私が辞めた後に病院で長く語り継がれたそうです。誰かが辞めたくなって「辞める理由(主に薄給)を正直に言えない……」となっても「前に本が読みたいってヘンテコな理由で辞めた先輩がいるらしいよ」ということで「そりゃ、ヘンだわ! それが通用するなら楽勝だわ!ww」と、のびのび辞めていったらしい……。


申し訳ありません。私のうっかりで、いらぬご迷惑をかけてしまいました……。以後はうっかりしないよう、気を付けます……(でもきっと、またやらかす……)。





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