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魔装と月の殲滅戦  作者: ルナモルファス
第三章 災害殲滅隊本部
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十九話 災害殲滅隊直属対月晶体装備開発研究隊

今回、タイトルと過去一嚙み合ってない回です。

「略称が月装研でしょ。たぶん、月晶体装備研究隊」

「違う」

「いや、もっと長いでしょう。災害殲滅隊対月晶体装備研究隊」

「違う。もっと長いよ」

「じゃあ、災害殲滅隊変人奇人集合隊でいいんじゃないですか」

「いいわけないから! というか、最近僕への風当たりが強いよ!」

「自業自得ですね」

「おかしいな、僕、真面目で通ってるんだけど……」


 車での移動中、真賀丘がいると無駄に会話が弾んでいた。

 謎のギャップがある真賀丘は話の起点になっており、靄からの大量の言葉の棘を受けていた。


「とにかく、正式名称は災害殲滅隊直属対月晶体装備開発研究隊。災害殲滅隊直属第二研究隊を前身として、名前の通り装備開発を専門にしてる研究隊だよ」

「なんか、すごそうですね」

「装備開発が専門って……確か晶化ナイフは輸入品ですよね? 成果出てますか?」

「出てるから! ヨオスクニとか、染色爆弾とか。それに、あの耐衝撃コートは僕がメインで開発したんだからね。晶化ナイフは……まあ、あれ、国際分業ってやつだ」


 晶化ナイフをはじめとした晶化シリーズの武器はすべて輸入品だ。研究というものはたかだか十一年で成果が出るものではない。


「メインで開発……特許……」

「詮索禁止。他人のプライバシーに軽々しく触れてはいけないよ」

「ブーメランって知ってます?」

「さあ? 知らないね。僕が君たちを知るのは、ただ一種の義務だ。でも、君たちが僕たちを深く知る必要はない。僕だって、なんでも知りたいとは思ったことはないからね。覚えておくんだ、知らない方がいいことが世の中にはいっぱいあるってね」



 ・・・・・



「こっちだよ」

「すごい、大きいビルですね」

「研究所ってイメージからだいぶかけ離れてるかな」


 車で数分間移動した後、着いたのは他の建物と比較しても大きめのビルだった。天井まで一続きのため、見上げるとかなりの圧迫感をもたらす。


 見上げる二人の肩を後ろから叩いて真賀丘は言った。


「感心してるところ悪いんだけど……目的地は目の前の建物じゃなくて地下にあるんだよね」

「「えっ」」




「暗い……」

「我慢して。節電中だから」


 建物脇の両開きの扉を開き、長いスロープを下れば暗い地下通路に出る。運搬のために広いのはいいのだが、足元が覚束ないぐらい暗いのはいかがなものか。


 真賀丘の先導で進めば少し明るい廊下に出た。

 どうやら一室から光が漏れているらしい。


「はい到着っと」

「ここが研究室ですか?」

「いや、休憩室だけど」


 いざ扉を開ければ、暗順応した目に眩しい光で目が眩む。

 そして、話し声が部屋から聞こえてきた。




「――――あっ、危ない!」

「えっ」


 開いた扉の向こうから飛んできたのは透明な液状の何かだった。


 先に部屋に入った靄は咄嗟にしゃがみ、回避に成功した。

 そして、反応が遅れた司陰は顔面にもろに直撃した。


「わぷっ、なんですかこれ!?」

「月晶体!?」

「えっ!? し、死ぬ!?」

「二人とも落ち着くんだ! 顔面が崩れても助かる!」


 真賀丘の余計なフォローで司陰と靄のパニックは頂点に達する。

 顔面に張り付いて掴めないそれを手でとにかく落とそうとするが、本当に取れなくて焦ってもみくちゃになる。




 そんな状況に割って入ったのは、部屋の奥から扉付近まで猛ダッシュで駆け付けた女性だった。


「わあ――!? すみません! いますぐ洗わないと!」

「誰ですか!?」

「私のことより今は顔を!」


 その女性は司陰の腕をガッシリと掴むと、全力で引っ張って部屋の外のどこかへ引きずっていった。

 あまりにも突然のことで、靄はともかく真賀丘までも目を開いて驚いている。


「えっと……真賀丘さん、サプライズにこれはちょっと……」

「いや、これは……僕も想定外」




 女性は気に弱そうな声に対して、かなり力が強く、司陰は顔に何かが張り付いたまま為すすべなく連れていかれた。


「そっちは女子トイレですよ!?」

「緊急事態!」


 そのまま近いお手洗いに駆け込み、司陰は抵抗虚しく引きずり込まれる。


 とにかく洗顔ということで、司陰は洗面台で顔を念入りに洗い、彼女が渡してきたハンカチで顔を拭いた。

 人のハンカチを使う行為、あるいは異性のものを使う行為に司陰はためらった。だが、ハンカチを返そうとした時の彼女の泣きそうな顔を見て諦め、軽く顔を拭いた。


 ここで司陰は一周回って冷静になった。

 もはや当たり前だが、月晶体(ルナモルファス)は水道に流してはいけない。緊急事態だからといって下水に流しでもしたらしっ責が待っている。

 ということは、司陰の顔に付いたのは、月晶体に似た何かである。


「あの、俺は一体何を顔に……」

「ええと、それは――――」


 彼女が返答をしようとしたその時、二人の傍に急に人影が現れた。


「ここで何をしてるのかしら?」

「!?」

「キャ――! トイレのお化け!」


 司陰は、お化けの額に青筋が浮かぶところをハッキリと確かに見た。




海瀬(うみせ)隊員、男子を女子トイレに入れてはいけません。わかりましたか?」

「その……でも、咲田さん、緊急事態でして……」

「なるほど、あなたの価値観では顔にスライムが付くことが緊急事態なのですね」

「いえ、えっと……その……」


 海瀬(うみせ)、そう呼ばれた彼女は笑顔かつ凄まじい剣幕の女性の詰問に声が詰まっていた。

 司陰の見立てなら、彼女らはどうやら少なくない仲のようだ。


「押山隊員」

「えっ、はい」


 司陰は彼女との面識はない。

 どうやら彼女は司陰のことを一方的に知っているようだった。


「これから月装研にいくのでしょう? その前に私のところへ来ませんか? もちろん鏡野隊員も連れて来ていいですよ」

「すみません、先に真賀丘さんに月装研を紹介してもらわないといけなくて……」

「あんな場所に行くぐらいでしたらこちらを訪れたほうがためになりますよ。あなたは研究員になりたいわけではないでしょう?」


 彼女は月装研を快く思っていない様子だった。

 司陰を行かせたくないようだった。


「やっぱり無理です。必要でしたら後で伺います」

「そうですか……気を付けてくださいね。気が変わったらいつでもこちらへどうぞ。咲田隊長の場所へと伝えればきっと誰かが案内してくれます」


 咲田、そう名乗った女性はそう言い残すと足早に去っていった。

 司陰が月装研へ行くことを優先したことを悔しがっているようにも見えた。




 彼女が去るのを待った後、話に取り残された海瀬が呟いた。


「咲田隊長……今日も厳しい……」

「根は優しそうですけど…………戻りましょう」

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