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魔装と月の殲滅戦  作者: ルナモルファス
第三章 災害殲滅隊本部
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十八話 災害殲滅隊本部

本部までに十八話は予想より短い。

「青葉さん! また一人で行きましたね!? 独断行動は控えろと何度も厳命されているでしょう!?」

「まあまあ、能力的には問題ないのですからそこは見逃してくれれば」

「ダメですよ。見逃したら私が怒られます」

「それはすみませんね」


 凄まじい剣幕の女性に対して、ちっとも反省してなさそうな様子なのが青葉航貴である。彼はまだヘリの操縦席で休憩中だ。

 彼は謝る時こそ彼女を見たが、すぐに視線を戻した。


「何見てるんですか?」

「あそこですよ」


 彼の視線の先には男女の二人組、司陰と靄がいた。

 ここは都内某所のビルの屋上だが、彼らはまるでスカイツリーにでも登ったかのようにはしゃいでいる。


「ありがちな光景ですね。上京したばかりの若者なら普通でしょう。それで、彼らは隊員ですか?」

「そうです。二人とも高校生の隊員ですよ。ちなみに鏡野靄殿は最年少の小隊長ですね」

「あの年で小隊長!? いくら人手不足とはいえ、上は何を考えているんだか……」

「本部付きなら高校生の隊員は他にもいます。そう嘆くことではありませんよ。それより、七年前から止まった世界、これに彼らが変化を与えるのか、それこそが重要です」



 ・・・・・



 司陰と靄が連れてこられたのはある大きな駅の中。

 駅内は通勤のゴールデンタイムは過ぎているというのに大変混雑している。


「靄さん、入口どこですか?」

「多分、あと二階ぐらい降りたところかな?」


 よく分からないながらも進めば、やがて『関係者以外立ち入り禁止』の扉が人の隙間から見えた。


「あっ! 靄さんあそこ!」

「本当だ。行こう!」


 人混みをかき分けていけばやがて扉の前にたどり着く。

 扉は黒塗りでかなり異様な感じを醸しており、入るにはなかなか勇気がいる。


「じゃ、じゃあ、俺が先に」

「おねがい」


 周りから少し奇異の目を向けられながらも恐る恐る開くと、中には空間があった。


「それで?」

「任せて」


 靄が壁のそれらしき場所へ手を触れると、認証されたのか、壁が割れてエレベーターが現れた。


「……乗れと?」

「当然でしょ」

「……なんというか、面倒くさいですね」




 エレベーターで地下に下りれば、そこにはプラットホームが広がっている。自販機もゴミ箱もない寂しい空間だが、点字ブロックだけは駅の端まで続いている。

 まるで終電時刻後の駅だが、電光掲示板にはしっかりと文字が流れている。


「これが専用ライン……」

「すごいね、私ももっと小さな駅を想像してたんだけど、さすが災害隊というところかな」

「でも、自販機ないので飲み物買えませんね」

「いや、ここに業者入らせないでしょ」


 司陰と靄が無駄に広いホームで会話していると、やがてアナウンスが流れる。


「そろそろ来るよ」

「そうですね。ところで、誰か迎えに来ないんですか? まさか案内なしとは……」

「だから、人手不足なんだって――――」


 言い合う二人の目の前に電車が入ってきて、手を振る男性が窓を通して見えた。驚く二人のことも知らず、その男性は電車に合わせて前方へ流れていった。

 二人は驚いて開いた口が塞がらない。

 電車の扉はしまっているのに。


「…………えっと、真賀丘さんが来ましたね」

「……よし、見なかったことにして最後尾に乗ろう」

「まあまあ、迎えに来てくれたならいいじゃないですか」




 司陰は不服そうな靄を連れて、乗車してから電車の先頭にまで移動した。

 先頭車両に入ると真賀丘が手を振って二人に声をかけた。


「こっちこっち。さあ、出発するよ。僕が運転手だ」

「いや、結構です。自動運転なので」

「靄さん…………真賀丘さん、お久しぶりです」

「ああ、司陰君の優しさが鏡野君に傷つけられた僕の心に染みるよ」

「塩塗りますよ」


 靄はかなり辛辣に対応していた。

 真賀丘は苦笑いでやり過ごしているが、司陰が聞いてもかなり酷い。


「どうしました? 靄さんらしくないですよ?」

「靄さん! 靄さん、ね。……ふっ、メモしておくか。これは傑作!」

「真賀丘さん? せっかくの電車旅を邪魔しておいてその態度ですか? 電車から投げて慣性の法則を体験してもらいますよ?」

「いやいや、遠慮するよ。それより、僕の言ったことを守れたようで何より。随分と距離が縮まったことで」


 真賀丘にそう言われ、司陰と靄はお互いに顔を見合わせた。

 真賀丘が第四十支部に居た頃の二人よりも確かに親しくなっており、それは二人の座る距離にも表れている。

 ざっと、初期の四分の一ほどか。


「まあ、別に僕も君たちの熱―い電車旅を邪魔しに来たわけではないんだ」

「……えっと?」

「ナイフで喉抉りますよ」

「待て待て落ち着いて。連絡事項がいくつかあるんだ。一つが、君たちの転校先について」


 真賀丘はそう言うなり、一枚のパンフレットを靄に渡した。

 タイトルは『月日(つきひ)高校入学案内』。背景が桜なので完全に新入生向けのパンフレットだ。

 司陰はまだギリギリ新入生で通るが、靄は二年生。どう考えても不適切だ。


「もしかして、私は今馬鹿にされている?」

「違うから。知り合いに頼んだらそれが送られてきたの。決して成績が微妙な誰かさんを揶揄ったわけではないよ。誓って」

「あなたが誓っても信用に値しませんよ」

「辛辣だね~」


 これ以上刺激するとさすがに危ない、と判断してか、真賀丘は司陰に別のパンフレットを手渡した。


「新居ですか」

「そうそう。学校と駅になるべく近い場所を探して、あったのがそのタワーマンション」

「真賀丘さん、さすがに冗談でしょう? 都内ですよ?」

「まあね。そのマンションは僕の知人の持ち物だから、彼が貸していいといったからいいんだよ。くれぐれも取り扱いには気を付けて」


 タワマンを貸せる友人もすごいが、それをさらに貸す真賀丘もなかなか恐ろしい。

 真賀丘は司陰に何を期待しているのか、真賀丘の顔からは窺えない。


「真賀丘さん、それで、私の家は――――」

「本部にもう着くよ。ほら後は本部で話そう」


 からかわれ、話を濁された靄は不満げな様子だった。








 本部側の駅も殺風景なのは相変わらずだが、駅の外の様子は全く違っていた。


 駅の外には街が広がっていた。

 正面には四車線の広い道路が視界ギリギリまで続き、その両隣には空間の天井まで伸びるビルがずらっと林立している。地下なので陽光は存在せず、過剰に設置された電照が夜さながらの地下空間を明るく照らしている。


「真賀丘さん、あれって!?」

「……ん? ああ、今日は特殊ミサイルの移送日だったね」


 駅の正面から左に続く大きな道路上を闊歩するのは巨大な輸送車両だった。広い道路上に人間以上の大きさがあるタイヤを転がして、司陰たちの前を横切っていく。


「すごい……」

「私……もっと小規模な施設だと思ってたんだけど……」

「どう? すごいだろう。改めて見ても、とても十一年で作れる大きさではないね。この規模の地下施設は世界を探してもそうないよ」


 災害殲滅隊本部。

 エネルギー源に地熱と原子力の複合システムを採用し、浄水施設や食料供給施設を備えており、まさに最強の要塞であり、非常時のシェルターでもある。

 上部の走行設備は核爆弾の爆発も貫通させず、下部の複雑な耐震構造は地震国家の叡智の結晶。月晶体との戦闘で万全を期すための施設。


 これを見て、心が弾まない人間の方が少ないというものだった。


「夢中なところに水を差すようで悪いんだけどね、ここのことは口外禁止だよ。トップシークレットだからね。僕も聞きかじっただけなんだけど……ここのことを部外者に喋った人間は……」

「わかりました! わかったんで、脅すのをやめてください!」

「災害隊ですから、口封じに殺害までしなくとも、記憶操作ぐらいはしそうかな」

「靄さんも!」


 真賀丘と靄の冗談は真実味があるので全く笑えない。

 彼らの話の間に輸送車両はもう右に通り抜けてしまった。


「そろそろ移動しようか。あっちに車を止めてある。僕も暇ではないからね」

「いや、誰がどう見ても暇――」

「さあ行こう! 月装研へ!」




 真賀丘は二人を置いて歩き出した。

 司陰と靄は顔を見合わせる。


「どう思います?」

「あの誤魔化し方は、絶対暇!」

ということで、本部です。


イメージ的には某人型決戦兵器アニメのジオフロントの狭いバージョンですかね。

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