二十七章 最終話 紗塔にいる姫への手紙
結婚式当日になって準備が整った王宮と王都。
キリシア姫はそれでも、マリッジブルーで泣き崩れてばかりです。
ウエディングドレスを着ている時にすら、侍女たちの前で泣いてしまいます。
みなが、時がきっと笑い話に変えますから、と姫をいさめます。
ダリアンはドレスの着付け役たちの言葉に何度もうなずき、メモを取ります。
人妻たちで残念だ、とダリアンのほのかな恋心は花弁を散らし舞っていきます。
部屋でそわそわしていたタカルは、きっと結婚するんだ、と筆をとります。
キリシア宛に手紙を書き、泣いているキリシアにダリアン伝てに届きました。
「タカルから・・・?結婚の断りだったら、どうしよう?」
おそるおそる手紙を読み始めるキリシア。
―――――
近道の 海原思わす 花波よ
黄金雲 夕陽に映ゆる 稲穂かな
葉の涙 雨の上がった 聖なり
花風に 舞うは言の葉 気まぐれに
草月の 明かり見てるは 影ごとし
虹影の 空の魚や 隠れしも
角砂糖 溶ける記憶に 君がいる
花影や 忍び歩きて 静かかな
蜜色の 月を切出し 甘美かな
こんなことを思いつくに至る、僕と結婚して欲しい
タカル・ファ・グライス より
愛しの姫 キリシア へ
追伸
空飛ぶ船に乗って今日の花火をあなたと見たい
―――――
キリシアはその手紙を読んで、「きっと私は一生このひとを気にするわ」と思い、
そして化粧をしたキリシアは結婚式の会場でタカルと死が別つまでの誓いをして、
愛の証のキスをして鐘がなると、嬉しくて涙が出てきました。
その涙を「綺麗だ」と指先でぬぐってくれたタカルと、お披露目。
民衆を前に姫らしくふるまい、そして夜。
紗塔に立ち入ることが許されたタカルが、装いを替えてたずねてきます。
少し疲れて眠っていたキリシアは、ベッドから起き上がりました。
紗に影になっていた彼女を認め、タカルははにかみ笑顔。
「今日はペリドティ・アル―ア」
「月を切り出したら蜜がしたたる、でしたっけ、ね?」
「僕でいいのかい?」
「少しづつでいいから、あなたから旅のお話を聞いてみたいわ」
「・・・本当に?」
「それから、ペリドティ・アル―アは今夜よ。月に花が咲く日。見ていたい」
「なるほどねっ。船をそちらに用意してあるっ」
キリシア姫は庭に誘われ、そこにでっぷりとした空飛ぶ船を見つけます。
「夢じゃなかったんだわっ」
可愛らしいお嬢さんだ。
「・・・今、誰が喋ったの?」
マリカ・ローズ号ですよ。
この魔法のかかった船です。
「船には精神が宿る時があると聞いたことはあるけれど・・・」
「マリカ・ローズ、君は魔法使いが作った船なんだよね?」
そうなんですよ。
さぁ、お早く、乗って、乗って。
姫のお好きな花で飾ってあります。
もうすぐつぼみが開くでしょう。
夜にかぐわしく花は咲き、ふたりは船に乗りました。
姫はタカルも不安に思っていることがあることにようやく気付きます。
もうひとりの、タカルのことです。
一方その頃、地上では。
花火を打ち上げる係に任命されたサプリスカが、ポコナミたちと合流。
ポコナミの子供のひとりがサプリスカを見て、「父ちゃん?」と聞きます。
「秘密」
冴えわたる夜空に満月が浮かび、そしてサプリスカは花火を打ち上げました。
キシリアがタカルに言います。
「もうひとりのタカルに、きっと許してもらましょう?」
泣き出したタカルに、姫はキスを贈りました。
「私も一緒に背負うわ。きっと一生かかる」
ふたりはお互いへの愛を再度誓い、花火の中、空飛ぶ船で王都の散歩に出ましたとさ。
おやおや、不思議で奇妙は不可思議かな?
謎たちが、溶けそうな君。
そう、この物語を語ったのは、
魔法のかかった船、
マリカ・ローズ号ですよ。
めでたし めでたし
-おわり-




