二章 運命の赤い糸
アルミリオン城の姫が、病床に伏した。
そして王宮に仕える者に、天から信託があったと国中に知らせが届きました。
その病には適合した血液が必要である、早急に「奇特な血」を探している、と。
グライス村はうわさにうとく、ほそぼそとつつましやかに暮らしている村。
姫の体に適合するほどの栄養を持つものは、いるのだろうか、とタカルは言いました。
奇特、と言えば、お前じゃあないか、と、村のひとたちが言います。
それなら、献血に行ってくるよ、とタカル。
国が用意していた集合場所で血液検査を受けると、タカルが選ばれました。
もしかしたら、姫の血に適合するかもしれない。
君の血は、薬になるかもしれないくらい神が宿っている、と検査官に言われました。
何か特別なものを食べたりしているのかい?
その時少年は心当たりが思い出せなかったので、首をかしげただけでした。
そう言えば、綺麗な水を飲むようにしているよ、とタカル。
そうなのかい、と生返事の検査官。
輸血の管に赤を見ていて、少年は思いました。
まるで運命の赤い糸だ、僕の血がお姫様の役にたてたらいいのに、と。
姫の容態はタカルの血で作った薬でよくなり、国はタカルに報奨金を出しました。
タカルは、普段お世話になっているからと、そのお金を村のために使いました。
みながみな、その奇特にいやしい思いなどはしません。
近所のガミガミおじさんですら、タカルは奇特で優しいこ、と言い始めました。
ガミガミおじさんの奥さんは、窓から顔を出してタカルに挨拶をするようになりました。
花売りやガム売りの少女たちすらタカルの話を聞いて、ほのかに恋心を抱くのでした。