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ショートストーリー 風邪をひく

作者: 夢前孝行

A氏の嫁さんはA氏と結婚するまで看護婦をしていた。

結婚以来三十余年主婦専業で働きにいったことがない。

A氏がそう望んだ訳だが、

何度かバイトに行くが一日や二日ですぐ辞めてしまう。

嫁さんを働かさずに養うことが、

男のプライドと思ってみたり、

やせ我慢と思ってみたり、

家計が苦しい時は、

近くの医院の看護婦として勤めてもらいたい時もあった。

わざわざ、その医院からお誘いがあったにもかかわらず、

現役を退いてから、

看護婦で行っても役に立たないと言うのが嫁さんの弁だ。

医療関係の仕事は一度リタイヤすると、

再び復帰しても、

医療機器の進歩が早いため付いていけないと弁解がましく言う。


病気でもしたら大変である。

人は奥さんが看護婦だから、

適切な処置と看護で、

すぐ治るだろうと言われるが、

まったくそれは当てはまらない。

嫁さんはたかが風邪でもおおげさに思ってしまい、

肺ガンだとか、

肺炎だとか言って大心配してしまう。

いろいろな症例を診てきているので、

悪い方に悪い方に解釈して、

たまったもんじゃない。


A氏は日頃の嫁さんを見ているので、

怪我や病気した時

『こやつには絶対注射などしてもらいたくない』

と思うのである。

包帯ぐらいなら巻いてもらう時はあるが、

それすら危なくてみておれない。

確かに上手で手際よく巻いてくれる。

でも嫁さんに注射は絶対してもらいたくない。

恐いのである。

看護婦のユニホームを着て、

院内を颯爽と歩いていれば、

そうは思わないが、

看護婦のユニホームを着ている姿を見たこともないA氏は、

ただのそこらに転がっているオバタリアンと変わりない。


先日も風邪を引いて、

寝込んでいるとSARSじゃないかと心配する。

A氏はかかりつけの内科からもらってきた薬を飲んでいるが

いっこうに治らない。

嫁さんいわく

「なんという薬飲んでるの」

「食器棚の引き出しにある薬や」

と言うと「あんた

「その薬一年前にK内科からもらってきた風邪薬やないの。

そら、あかんわ。

その風邪薬、風邪引いているから効けへんわ。

K内科医って風邪引いていない風邪薬もらってきて 

飲まなきゃなおらないわ」

と風邪を引いているA氏に言った。

風薬も一年も飲まないと風邪を引くのだとその時初めて知った。

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