第三話 ガン無視
「先輩がブースト使ってなかったら、私は勝ててました!!!」
綾木戦闘所二階から響く頑の大声。
満島は自分のデスクに座り、耳を指で塞いでいる。
「チッ、うるせえな……」
「散々煽っておいて、あんな結果じゃ、いろんな番組とか出にくいじゃないですか!!」
耳を塞いでも頑の声は充分によく聞こえる。距離と声量があってないのだ。
「それはテメエだけの問題だ。俺には関係ない」
「コンビじゃないですか!ちゃんと相手の状況も察してください!!」
満島は数年一人で綾木戦闘所の戦士をやってきた。時には他の戦闘所に助っ人として出向くこともあった。そこでの印象は仲間思いの頼れる人だが、そんな満島は決して我慢強いわけじゃない。
頑の胸ぐらを掴み、自分の方に引き寄せ満島は言った。
「誰が好き好んでテメエなんかとコンビ組むかよ。いいかウスノロよく聞けよ。俺が退場したあと、お前があの怪物とやりあえたのはあいつが瀕死で、動きが鈍っていたからだ。序盤にお前が変身してブーストを使っても、倒しきれないだろうし、あの爆音で怯んで5秒無駄にして即撃退場だろうよ」
「そんなのやってみないとわからないじゃないですか!」
「また喧嘩ですか〜?」
藤高がコーヒーを持って、三階から降りてきた。
「藤高さーん。先輩ひどいんですよー」
味方につけようと、藤高に擦り寄ろうとする頑。満島は立ち上がってその首根っこを掴み、引っ張って自分の座っていた椅子に座らせた。
「藤高さん、ストレス診断の結果です」
満島は定期の診断の診断書を藤高に手渡した。
「は〜い、本部に提出しておきますね〜」
5年ほど前から定期的なストレス診断が全戦士に義務付けられた。元々精神的な苦痛が大きいピーナッツでは、精神面に異常がみられた戦士はメンタルケアを受けられたが、それでは手遅れなことも多く、そんな事態を未然に防ぐためだ。
「お願いします。では、お先に失礼します。頑のバカも次の戦闘までに声量と頭の悪さを直しておけよ」
そう言って満島は帰って行った。
「ひどーい。もっと優しくて強い先輩だったらよかったのに」
藤高は診断書を見ながら、頑の向かいの席に座る。
「満島さんは弱いですし、あんまり優しくもありません」
「ですよねー!!」
「満島さんのお父様は必ず自分を犠牲にするような戦術を使いました。誰に何を言われようと微笑んでいました」
「私、先輩のお父さんとコンビになりたかったです!」
「でも、頑さんのお母様は自分の負けを誰かのせいにすることは絶対にありませんでした。戦闘で誰かが犠牲になると自分がもっと強ければと悔やむ人でした」
「……」
「フフ、いじわるでしたか?まあ〜、仲良くしなさいってことですよ〜」
「……帰ります」
「はいはい〜。お疲れさまです」
ここは松浦大学病院。
第3棟は循環器系の病気の患者が入院している。その7階だ。
ベッドの横に座り、中庭の若葉を携えた大きな木を眺めながら満島が言った。
「リハビリは順調か?」
「もちろん。一刻も早く戦場に復帰しようと思っているよ」
ベッドで寝ているのは満島の妻、満島 沙夜 27歳。戦士だが病気で右足が壊死。先日手術が終わり、右足を失った。筋力低下が激しく現在は義足の練習とリハビリの最中である。
「やっぱり仮想空間のデータは過去のを使うのか?」
基本的に戦士は現状の体を仮想空間のデータに同期させて戦うが、例外的に同期せず、過去の自分の体のデータで戦うこともできる。
「その方が戦える、何か問題でも?」
「体と意識の不一致はストレスが大きいって、経験のある先輩がよく言ってたから」
「別にそんなの気にするたちじゃないさ」
「……。それもそうか」
この二人の出会いは仮想空間だった。4年前、レベル5鋼鉄の大魔人との戦いだ。戦士側は敗北に終わったが、次々に戦士が退場していく中、最後に二人だけ残ったことがきっかけだった。
「それよか、修羅の道だろ。案外惜しかったじゃんか」
「……。最善の策とは呼べない」
「ほー。ストイックね。相棒の不満タラタラかと思った」
「あいつは初戦闘だった。仕方ない部分のほうが多い。やるからには自分のベストを尽くす」
「あんたらしいよ」
「飲み物でも買ってくる。何がいい?」
「黒糖豆乳で」
「わかった」
院内にはコンビニが数箇所あり、第3棟は1階と4階にある。しかし、品揃えがほんの少々違い、黒糖豆乳は1階のコンビニにしかない。
そのため満島は軽く階段を下り、7階の部屋から1階のコンビニへ。陳列棚の端に目当ての黒糖豆乳を見つける満島。
「ラスト1本か」
「うあっ。売り切れだ!」
黒糖豆乳にありつけなかった頑。仕方なくバナナ豆乳を買って、1階の隅にある病室に戻る。
「ごめん。売り切れてたー。バナナのやつ買ってきたよ?」
ベッドに寝ているのは志田 健吾20歳、頑の中学からの彼氏である。2年前から心臓病を患い入院中だ。未だ回復の兆しはない。
「うん、ありがとう」
バナナ豆乳を志田に手渡し、ベッド脇に椅子に座る頑。
「まったく、誰が買ってったんだろう?健吾が一番飲みたいに決まってるのに!」
「……奏エちゃん。なんか元気ないね」
付き合いが長くなるとわかるが、常にハイテンションの頑が普通のテンションの時は少し落ち込んでいる時だ。
「嫌なことあった?あの先輩に怒られたんでしょ?」
「別に」
頑は目をそらす。いじけている。
「仲良くしないとダメだよ。コンビなんだから」
「わかってるよ!」
「さあ、やってまいりました!!世界規模で熱い戦いをお届け!ピーナッツ修羅の道、選考戦!!」
選考戦が始まって2週間ほど経過していた。
戦士の戦闘スケジュールは所長かマスターが他の戦闘所や本部と相談しながら組むため、戦士たちが選考戦を三連勝するのには少し時間がかかる。
一方イージー版ユーザーは1日3回も戦えるため、早々にイージー版ユーザーが修羅の道挑戦権を独占すると思われていたが、やはり勝率が戦士たちとは違った。
選考戦に参戦している戦士のコンビは50組ほど、それぞれ一戦を終えた時点で全体の勝率は10%ほど。それに対し、イージー版ユーザーはライトユーザーを含め、すでに1,500,000人ほど参加しておりその戦闘数5,000,000を超えているが勝率は0.1%に満たない。
イージー版イベントでは間違いなく最難関であろう。しかし、戦闘回数によって、徐々に選考戦の敵が攻略されつつあるのも事実だ。イージー版ユーザーが挑戦権を握るのは時間の問題だ。
つまり、満島、頑の二人に喧嘩している暇はないということだ。
「実況は清水 武雄、解説は河合 優也さんです。宜しくお願いします」
「よろしくお願いします」
「さあ、本日は初戦闘の新人ながら、なかなかの善戦を見せた頑 奏エと、いつもの安定感で相手を瀕死まで追い詰めたものの、あと一歩及ばなかった満島 空雄。この二人「セブンライト」!対するは俳優、タレントとしても絶大な人気を誇った不滅のハンサム、柴 蓮太の怪物、岩人間!!約5000戦中35敗。簡単に破れる壁ではない!!河合さん、このカード、いかがでしょうか?」
「柴さんの岩人間は、かなり癖のある敵です。相当倒し方を選ばなきゃいけないので、この前から進歩がなければセブンライトには苦しいと思います」
「なるほど、セブンライト、特に頑の成長が要か!?」
頑は成長していた。前回の戦いで、一つ重要なことを学んだのだ。
「私は変身すれば、強い」
満島には否定されたが、しないよりは間違いなく強かったのも事実だ。
「自信があるのは結構だが、過信は油断を生む。慎重にいけ」
「フッフッフッ。先輩、私はいま、最高にワクワクしてますよ」
「だから、慎重にいけってんだろ。アホが」
頑は変身が前提のため、武器の支給は二つ、満島がどちらも使うことになった。
剣と大槌だ。剣は腰に携え、大槌は手に持った。頑の砲撃も含め、大体どんな敵が来ても、全く攻撃が通用しないなんてことはないだろう。
そう広範囲に対応するのは、敵の特性、弱点によっては武器だけで詰む可能性があるからだ。
「準備はいいですか〜」
「はい」
「オッケーです!」
「それでは〜、戦闘を開始します」
背後に岩でできた大男が召喚された。二人はとっさに振り向いた。しかし、岩人間はまだこちらに気づいていないようだった。
頑は不敵な笑みを浮かべた。
「近接戦闘戦車に変身」
小声でつぶやき、頑は空飛ぶ腕付き戦車に変身し、ユラリと静かに飛んで岩人間の方へ。また小声で一言。
「ブースト発動」
ユイーン!
ッゴッズダオオオオオオオオオオオオオォォォォォォォォォォンン!!!!!!
「頑の特攻!!岩人間の背中を戦車のアームがぶっ叩く!!岩人間!何が起きているのか理解する間も無く壁際まで飛ばされる!!」
頑は砲撃を放ちながら、ジェットの最高速で岩人間に突っ込んだ。
「なかなか無謀な……」
ゼロ距離砲撃を混ぜながら、頑は自分の出せる全力の速さで岩人間を殴る。
「頑の猛攻が続く!!終わるか!!??」
イーユン!
「ブースト終了しました〜」
倒れた岩人間は頑の攻撃が止んでも起き上がってこない。
「おいクソボケ!何してんだテメェ!」
満島は頑の勝手な戦法にハラワタが煮えくり返っていた。しかし、頑は無視して岩人間に攻撃を継続する。
頑は一つの岩の塊となった岩人間を持ち上げて、地面に叩きつける。
ッドァアアアアアアアァァァァァンン!!!!!
そして、ゼロ距離の砲撃。
ブフワァァン!
「効いてる気がしない……。ブザーが鳴らないってことはまだ何かしてくるはず」
ゴットワァァァアアアアアアァァン!!!!
低空で飛んでいる頑戦車を満島は大槌で真上から叩き落とした。
「変身解除」
頑は人間に戻り、満島を睨みつける。
「先輩、頭おかしいんじゃないですか!戦闘中に味方のこと攻撃するなんて!」
「うるせえ!テメェこそ勝手にブーストなんか使ってんじゃねぇぞ!!」
この二人は選考戦の参加者の中でも極めて仲の悪いコンビだ。
「先輩だってこの前、勝手にブースト使ったじゃないですか!!」
「バカが!腰抜けのテメェにブーストをとっておいても仕方がねえだろが!」
満島が頑の眉間を指差す。しかし、頑は指を握って、反対に曲げてへし折った。
「でも、あの後、戦ってたのは私です!!」
「イッ……。チッ。あんまり調子に乗ってんじゃねえぞ、理解力のねぇ歌バカが……」
折られた指を引っ込め、拳を握って頑を睨む満島。
「先輩は私のことを舐めすぎです!!先輩なんか私にかかれば一捻りなんですからね!!!」
「おお……、そうかよ、上等だ。バカは一回死なねえと治んねえみてぇだな」
満島は大槌を握り直して構えた。
「後悔しても知りませんよ!!近接戦闘戦車に変身」
変身して満島に殴りかかる頑だが、満島は姿勢を低く下げかわし、大槌で戦車正面をぶっ叩くカウンターを決めている。
グワッツガアアアァァァンン!!!
重たい金属音が響き、叩き飛ばされる頑戦車。
「これはぁ!!喧嘩だ!!コンビの絆などどこにもない!岩人間そっちのけで殴り合いが始まった!!」
「何をしてるんだか……」
味方同士の攻撃はダメージがない。なんてことは特にないため、コンビ間での殴り合いは自滅に等しい。
「これほどに仲の悪い二人がいただろうか!?」
「戦闘中に仲違いで相手を無視して喧嘩なんて、軽率極まりないですね」
ヤツはアームの砲撃で遠距離攻撃ができる。距離を取られると不利だ。
満島は吹っ飛んだ頑戦車に対し、電光石火で間合いを詰めた。間髪入れずに大槌で戦車の側面を叩くが、左アームに阻まれ、右アームのストレートが飛んでくる。
頑には母譲りのカウンターセンスがあった。しかし、
ッゴッズアアアアァァァン!!!!!
大槌を握っていたはずの満島は、頑の真上からかかと落としをお見舞いしていた。
頑にはカウンターセンスがあるものの、それに経験が伴っていないため荒削りで、中の上戦士満島にとって、隙を突くのは容易いことだった。
頑戦車を地面に叩きつけた満島は、そのまま戦車の上に乗る。
「アイアンナックルを」
満島は両拳に出現した鉄製の拳鍔で頑戦車の車体を殴る。
ガッソアアァァァンン!!!ガッツワアアァァァァン!!!!
レベルα1では体に補正がかかり、力が増している。さらに、大槌よりも少ない接触面で、衝撃が一点に集中する。そして何より、拳とほとんど変わらぬ振りで攻撃できるため。
ッズゴゥアアアォォン!!!ッズゴゥアアアォォン!!!ッズゴゥアアアォォン!!!ッズゴゥアアアォォン!!!ッズゴゥアアアォォン!!!ッズゴゥアアアォォン!!!
この拳鍔での連打は非常に強力である。
頑の車体に亀裂が入り始める。
なんとか反撃したい頑だが、車体の真上は死角になっており、アームを頭上に振り回しても簡単に避けられる。
このままじゃ先輩のボケにやられる。でも、攻撃が当たらない。最悪なポジション取られた。
「一方的だァ!!鬼の満島容赦なし!!」
「この戦闘、セブンライトの勝利はもうないですね」
「コンビで息を合わせて、ようやく勝てるか勝てないかのレベルがα1ですからね」
「清水さんの言う通りです。信頼無くして勝てる戦いはないと思います」
そんな実況、解説の話など知る由もない二人。
「身の程を知ったろ。降参するか?頑」
「後悔するって言ったはずですよ」
「名前通りのクソ頑固だな」
満島は再び拳を振り上げ、連打を再開しようとした。
しかし、頑はジェット噴射を使い、満島を乗せたまま飛び上がり、一気に高度を上げた。
!! 空中はマズい。
急いで飛び降りる満島だが、右足をしっかりと、頑のアームに掴まれる。
「逃がさないですよ」
さらに急上昇を続ける頑。なんとかアームを蹴って、逃れようとする満島だが、頑戦車の空中機動力は凄まじく、すぐさま天井250メートルの高さまで到達した。
そしてその勢いのまま、頑は満島を天井に叩きつけるように投げつけた。
バァビタアアアァァァン!!!
「ゴァ……」
なんとか頭は腕でかばった満島だが背中を強く打ち付けた。フワリと落下し始める満島へ、頑の容赦のない追撃。
「すぇんぷぁーい!!!」
空中でガードもままならない満島に対し、頑が連続砲撃を浴びせる。
「形勢逆転か!ただでは起き上がらない!これが母から受け継いだ逆転魂か!!」
「こんな喧嘩。正直解説する気も失せるんですけど」
「解説者が仕事を投げ出すほど意味のない戦闘!果たしてこの戦いに盛り上げる価値はあるのでしょうか!!」
「清水さん。プロですね」
バフワアアァンン!!バフワアアァンン!!バフワアアァンン!!バフワアアァンン!!バフワアアァンン!!
本物の砲撃ほどダメージはなく、砲弾の爆発による衝撃とわずかな熱だけである。本来、戦士と挑戦者のバランスをとるための調整だが、満島はそれで命拾いしていた。
しかし、一撃一撃が軽いわけでもなく、補正があっても連射されれば骨にヒビが入るほどの威力はある。
「くっ……」
あんなアホでも、空中戦なら有利だと理解したか。あんまりに一方的だったから不安だったが安心した。いいんだな?本気で。
「頑ぁ!!今ならまだ許してやるぞぉ!!」
「アハハハ!先輩かっこ悪!!」
頑は砲撃をしながら、ジェットで急降下して、落下する満島に近づいた。
「本当にアホだな。粘着爆弾を」
小声で満島は藤高に支給品を要求、満島の手の中に粘着爆弾が支給された。
戦車は両アームを大きく振りかざし、さらに満島を叩き落とした。
ズドブワアアアアアァァァァァァンン!!!!!
「あ!ちょ!」
満島はその攻撃をくらいながらも、右のアームにしがみついていた。
振り払おうと頑が左のアームで満島を何度も叩くが、満島は打撃の度に瞬間的に片腕を離して、ガードしている。
どさくさに紛れ、満島は頑の左アームの砲身に手を突っ込んだ。すぐ引き抜き、今度は右アームの付け根を膝で猛烈に蹴り始めた。
「クゥ……。天井の次は壁がいいですか」
あまりにしつこくしがみついてくる満島を、壁に叩きつけようと頑はジェットの最高速で、壁に猛突進した。
バアッスドオオオオオオオォォォォォォォンン!!!!!!
「ゴァッフゥ……」
頑の右アームと壁に挟まれ、胸を強く打った満島だが、勝利を確信した笑みを浮かべた。
ガヨアアアアアァァァァァンン!!!!
満島の膝打ちで、頑の右アームは付け根から外された。右アームを投げ捨て、壁際を落ちていく満島、ジェットの急降下で追う頑。
頑が追いつこうかという時、頭を下にして落ちている満島は、壁から離れるように、手を突き出して、落下の軌道を斜めに変えた。頑はとっさに対応できず真下へ落ちていく、満島は頑を追撃を振り切った。そして、
「鳥人間に変身」
瞬時に満島の両手が大きな翼になり、落下の勢いを殺さぬように、翼を広げ、勢いを利用してグライダーの要領で高く舞い上がった。
「変身はテメェの専売特許じゃねえんだ。ちょっと使える程度で調子にのるなよ!」
「……バーカ!!先輩のバーカ!!!」
反論できず、ぐうの音もでなかった頑は、語彙のない悪口を吐きながら、ジェットを使い上空の満島に向かった。
「バカっていうほうがバカっつーのは本当なんだな」
満島は頑に向かって急降下した。
先輩はバカだ。私にはまだ左アームの砲撃がある。真正面から殴りあうと見せかけて、砲撃で不意をついて、その隙に打撃とゼロ距離砲撃。先輩だって天井と壁、砲撃とダメージを全然受けてないわけない。この攻撃で大勢は決するはず。
頑はアームを突き出すとバレると思い、アームを引いたまま満島に照準を合わせた。
「砲撃!!」
ボゴオオウワアアアアアァァァァァァンン!!!
頑の左アームは爆散した。
左アームの砲身の中には、満島が手を突っ込んだ時に仕込んだ粘着爆弾があった。当然砲撃なんてすれば起爆する。
両アームを失った頑は、何が起こったのかわからず、困惑のまま上昇を続ける。爆発で頑の軌道が少し変わったが、満島はすぐに狙いを定め。
「変身解除、テメェの負けだ」
人の姿に戻った満島は急降下の勢いをそのままに、拳に握られた拳鍔で頑戦車のヒビが入っている車体上部を貫いた。
ガジョバアアアアアアアアアアアァァァァァァァンン!!!!
足をかけ拳を引き抜いて、満島は華麗に着地を決める。
頑の車体はゆらゆらと落ちていく。
「鬼!!満島!!鬼!!戦闘経験の乏しい後輩を容赦なくノックアウト!」
「前代未聞ですよ。全く……」
修羅の道選考戦だけでなく、ピーナッツ80年歴史を見ても仲間を戦闘不能まで追い込むなんて出来事はない。
今回は満島の短気と、頑の頑固が招いた結果だ。
「これでバカが治るといいが……」
静々と降下してくる頑戦車を眺める満島。
ふと岩人間の方を見ると、一つの岩の塊になっていた岩人間の体の岩という岩が崩れ、緑のツタでできた人型が露わになる。
中から現れた緑人間はおぞましいスピードで、頑に迫り身体中のツタを開き、頑戦車を包むと、そのまま締め付け、
ゴガゾオオオオォォォォンンン!!!!!!
戦車は砕け散った。
「さらに鬼!!岩人間、仲違いの収束を待っていたのか!?」
「一対一。空雄くんもかなり消耗しています。勝算はありませんね」
河合の冷たい分析。だがその通りである。
「ここに来て、形態変化とは。一級の戦士が作ってるだけはあるな。嫌な相手だ」
満島は拳鍔を外し、腰の剣を鞘から抜いた。
速さ、力、頑の戦車のやられ方を見るに、補正だけの体では瞬殺。
攻撃に当たらないことが絶対条件だ。おそらく、あの形態なら耐久力はないはず。ないでくれ。
まず、まともには殴り合えない。
「閃光発音筒を」
満島の手元に閃光発音筒が出現する。頑の分の支給品がまだ二つ余っていたため、その一つを満島は使った。
緑人間は満島を少し見つめると、100数メートルの間合いを激走し、満島に向かった。
閃光発音筒は決して、広範囲に目くらましできるわけじゃない。ひきつけるんだ。間合いを見切るんだ。
満島は閃光発音筒のピンを抜いて、自分の足元に転がした。
閃光発音筒は満島の足に軽い衝撃を与えながら、爆音と光を放ち爆発し、間近に迫っていた緑人間の目と耳を潰した。満島は目を腕で覆い守ったが、爆音で聴覚は失った。
目を開き、満島は剣を片手で振り上げながら緑人間の頭上へ飛び上がった。
「火炎瓶を」
もう片手に火炎瓶が出現し、満島は空中で緑人間に投げた。
火炎瓶が緑人間に当たるか当たらないかの瞬間で、満島は火炎瓶ごと緑人間を、剣でぶった斬った。
ゴオオアアギイイィィィィィンン!!!!
炎が燃え上がり、火花が散った。
「火炎斬りダァ!!まだまだ諦めるつもりはないか!満島!」
「かなり、賭けの要素が強い行動です。岩人間が視覚、聴覚以外の索敵器官を持っていた場合、空雄くんは秒殺です」
「なるほど。相手を見極める時間が足りなかった訳ですね」
「ええ。喧嘩してましたからね」
満島は攻撃できていた。しかし、
「!! 岩人間に、戻っている……」
火炎、剣などもろともせず、岩人間は満島の握る剣の刃を掴み、引き寄せて満島を殴る。
岩人間の拳にはツタが絡み、枝分かれし、針状になった鋭いツタが無数に突き出す拳は、満島の腹部胸部を豪快に貫いた。
ザズウドオオオオオオオオォォォォンン!!!!
「ウブッ……」
ブザーが鳴った。
「冷酷な拳が満島を貫く!!岩人間のごっつぁんパンチ!!いやあ、仲が悪かったですねぇ」
「ホントですよ。子供じゃないんだから、もう少し節度のある行動をとってもらいたいですね」
「仰る通りです。さて、明日の戦闘は、奈良戦闘所所属、一撃で形勢をひっくり返す戦慄の拳!桐原 理生!相方は一級品の戦略を持つ若手!代田 アイワン(しろた あいわん)! この二人「アイワンパンチ」に対するはピーナッツ史上最高難易度とされるレベルβ1を制したこの人!倍返しの黒猫!頑 願子からの刺客、未だ無敗の人型戦闘ロボット!!一撃必殺か!逆転劇か!」