第一話 セブンライト
こんちは!
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前作同様、この物語はストーリーを全く練っていません。
戦いのことだけ考えて書いたので、感動は皆無です。あらかじめご了承ください。
男の全身から眩い光が放たれる。
「とんだ目くらましね」
腕で目を覆い、固く瞼を閉じた。しかし、ほんの隙間、瞼を貫通してくる光に私の目は一瞬にして潰された。
すぐさま男は殴りかかってくる。その拳を掴むことも、かわすこともできない。今回の敵は閃光を放ちながら、高速で動く能力者だ。
ブバツドドドドドオォォォォォォッ!!!!!!
高速で連続する打撃音は連なり、もはや一つの長音に聞こえる。
恐ろしい速さでヒットアンドアウェイを繰り返す男。
反射神経でどうにかなる速さではない。正直、目が見えていても、大したことはできない。
唯一の救いは攻撃が連打されてもまだ立っていられる重さだということ。攻撃力はそこまで高くないようだ。いいバランスを保てている。
「どうした藤高。世界最強が聞いて呆れる。手も足も出ないか?」
笑ってしまう。私を負かしてくれる相手を何年も待っていたのに、こんなに簡単に出会えるわけがない。
私は煙幕装置をこの箱状の仮想空間中、いたるところに召喚し、濃い煙を発生させた。
「煙幕?しかし、俺は高速で動き、手探りでもお前を簡単に見つけられるぞ」
男が動き出した。煙の中を走り回り、相手を探す。この箱状の仮想空間は250メートル×250メートル。男はすぐに藤高を見つけられると思っていた。しかし。
「いない……。まさか、空中か?」
床から天井までも250メートル、藤高が高くジャンプしながら動いているのだとすれば、それを見つけるのは一瞬とはいかない。高く飛び、空中を探そうと男は踏み込んだが、足にピアノ線のようなワイヤーが引っかかった。
「!!」
ゴッスァ!!
煙の中に骨と骨がぶつかる鈍い音が響く。
藤高の飛び膝蹴りが男の横顔にクリーンヒットしていた。藤高は再び煙の中へ消えていく。蹴り飛ばされ、倒れた男は床にワイヤーが張られていることに気づいた。
いたるところにある煙幕装置を柱とし、まるで蜘蛛の巣の様なワイヤーの索敵陣が完成していた。藤高は仮想空間内を高く飛びながら、この索敵陣を作り、ワイヤーの振動で相手の位置を把握していた。
男は視界悪の中、このワイヤーを避けなければならない、つまり、相手を探すために動くことにリスクを背負ったのである。
それは動かなければ向こうも攻撃できないという過信を生む。それが藤高の狙いだった。仮想空間の床に張り巡らされたワイヤーが、一斉に男を囲う様に浮かび上がり、逃げ場もないまま男は包囲網に捕らえられ、包囲網は壁の煙幕装置を支えに吊るされた。
「な、何!?」
藤高は最初から包囲網になる様に、煙幕装置にワイヤーを通していた。一箇所のワイヤーを引っ張れば、すべてが壁に釣り上がる様に。
引っ張っているワイヤーを近くの煙幕装置にくくりつけ、藤高は拳を握りしめ、男の方へ向かった。
目はまだ見えないが、吊るされる場所は一箇所になるようにワイヤーを張った。この目くらましは戦闘終了まで続くはず、長期戦になれば徐々に崩され勝機を失うだろう。丁度いい。
「言い残すことは?」
「……流石だ」
「そう……。ブースト発動」
ッッダアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァァァァァァァァァァァンンンン!!!!!!!!
繰り出されたパンチの音はまるで爆発音だ。男はこの仮想空間で到達できる攻撃力の上限ピッタリの一撃をくらい消え去った。
ブザーが鳴った。戦闘終了の合図だ。
「戦闘終了。お疲れさまです、藤高さん。いかがでしたか?」
「ふむ。なかなかいいんじゃないでしょうか〜」
「それは良かった。バランスはこの程度で決定でしょうか?」
「……開始時に武器を持てるといいかもしれません〜。数種類の中から選べる様な形にすると〜、戦術性が増すとおもいます」
「わかりました。参考にいたします」
これはレベルα1の試行戦闘であった。
数年前、ほぼ全ての産業が機械によって行われるようになり、大失業という悲惨な言葉が飛び交った。
人々には三つほど選択肢があった。一つ目は機械では行えないような、数少ない残された仕事をすること。二つ目は機械の開発、整備、修理などの仕事。三つ目がエンターテインメントである。
この三つ目により、娯楽社会は急速に発展し、多様化していた。そのため、今まで娯楽とされていた業界も、その競争の波にのまれていった。
時代は人が最も娯楽に走ったエンターテインメント最盛期である。
80年ほど前にアメリカで生まれ、一大ムーブメントを巻き起こした異種格闘技 ピーナッツ。
ピーナッツの戦士たちは、視聴者、団体から送られてきた挑戦者と仮想空間にて戦う。挑戦者の強さに応じ、戦士たちには制限がなされる。挑戦者が勝った場合には、賞金が送られる。
いつでも、熱い戦いがそこにあった。
数ある戦闘の中でも最も有名な、最強の挑戦者 エモナと、無敗の戦士 藤高荵の決戦から19年、ピーナッツ史に残るであろう一大イベントが始まろうとしていた。
私の名前は頑 奏エ(かたくな かなえ)!
「はぁあ……。戦闘技術も精神力も、普通半年も訓練すれば基準は超えるはずなんですよ?」
パッチリおめめに、キラキラえくぼの美少女で、しかも華のハタチである!
「基本、ないんですからね?訓練所留年とか……」
今はピーナッツの戦士認定試験を受けている。
「頑さん!聞いてますか!?」
「もう一回やらせてください!!」
頑はビバシッと敬礼をするが、試験官の青年 三田 幸男はあきれ顔だ。
「そう言って、もう7回。去年から合わせれば18回。正直、もう戦士には向いてないんですよ」
「もう一回だけ。そしたらまた来年来ますんで。おねがいします!!」
「頑さん。普通は2回でダメだったら諦めてもらうんですよ。あなたの押しの強さに負けて、私が甘んじてきましたが……。今回はダメです。もう諦めてください。営業なんか向いてるんじゃないですか?その押しの強さ。よろしければ営業部の方に掛け合ってみますよ?」
完全に三田は頑を別の道に導こうとしていた。ピーナッツの戦士とは半端なものではない。痛みと恐怖に打ち勝ち続けなければならない。たとえどんな強敵が相手でも、何度負けても、闘争心を燃やし、勝利に固執しなければならない。才能のない者にはただの拷問になりかねない。しかし。
「そんなぁ。三田さん。知らない仲じゃないじゃないですかぁ〜」
頑は三田の手を握り、見つめる。そんな手を三田は軽く振り払う。
「試験以外で頑さんとあった覚えはありません」
もはや半泣きの頑。
「あ、あと、一回……だけ。ダメなら、営業行きます……」
三田は大きくため息をついた。
「わかりました。これが最後の一回です。泣いても笑っても」
戦闘所には仮想空間へ行くための装置があり、戦士は数ある戦闘所のどれかに所属する。日本にある戦闘所は現在7つ。ここは綾木戦闘所、7つの戦闘所の中で、最も過疎が激しく、戦士の数はたった一人だ。
「藤高さん。新人来るの、今日ですよね?」
戦闘所の一階は倉庫のようになっており、装置のための予備の部品や、整備に必要な道具が置いてある。二階は事務書類やそれぞれのデスクがあるオフィス的な場所だ。三階にはもうかなり古い型の仮想空間転送機があり、このベッド型の装置を使わなければ仮想空間に行けない時代もあった。現在は転送機の小型化が進み、一般家庭にもゲーム機として置かれていたりするくらい普及している。
二階でアイスコーヒーを飲みながら、新人を待つ二人。
「はい〜。楽しみですね〜」
藤高 荵 40歳。ピーナッツの一時代を築いた伝説的な戦士である。引退後はこの極小規模の戦闘所のマスター兼所長を務めている。
マスターとは、仮想空間の管理から、挑戦者のレベル設定など、指揮からメンテナンスや雑務までこなす、仮想空間での戦闘の責任者である。
ヨーロッパ系の顔立ちで、四十路にしてなお美しさを保つ藤高は、一般人とはかけ離れて、ゆったりのんびりしている。
「楽しみって、1時間半の遅刻ですけど!?」
彼は満島 空雄 26歳。亡き父はこの綾木戦闘所の元所長で、親子二代にわたり戦士を務めている。綾木戦闘所唯一の戦士で、勝率は5割ほど、中の上くらいの中堅戦士だ。
ガタイの良さは父親譲りで、目元の涼しさは母親譲りだ。
「まあまあ〜、急ぎの用事があるわけでもないんですから、のんびり待ちましょ〜」
「……。新人の資料ください」
「はいはい。なんやかんや、早く会いたいんですね〜」
「資料を」
藤高はデスクから新人の履歴書と訓練所の成績表を取り出し、満島に手渡した。
「頑 奏エ、20歳。オウレン音楽高等学校卒業。訓練期間2年。……たったこれだけの情報で戦士は向いていないとはっきりわかりますね」
満島は呆れた。
オウレン音楽高等学校とは、名の知れた音楽学校の一つ。音楽の道を通らなかった者も名前くらいは知っている名門である。
一方、訓練所ではピーナッツの戦士になるため、様々な講習、戦闘訓練があり、平均して半年ほどで訓練期間を終える。
「音楽の道に行かなかったのは〜、やっぱりお母さんの影響なんですかね〜」
頑の母、頑 願子は21年前、ピーナッツ史上最高難易度とされる戦闘を制した人物だ。
「どうでしょう?成績は……」
成績表に目を移した満島は固まった。
『訓練所 成績表
頑 奏エ
20歳 女性
戦闘技術総評 1
近接 1
近接武器 1
遠距離武器 1
体術 1
反射神経 2
精神力総評 1
安定性 1
合理性 1
集中力 1
闘志 3
順応力総評 2
仮想空間 2
特殊武器 1
支給品 1
変身 5
認定試験 不合格』
全て5段階評価だ。ちなみに、頑の母は元軍人であり、この試験を訓練なしにオール5評価で合格している。
「……話にならない」
満島は新人に多少の期待をしていた。
極小の戦闘所の未来を明るく照らしてくれるような人が来てくれればいいなと思っていた。しかし、期待は裏切られた。そもそも、認定試験不合格では戦士採用はできないはずだった。
「不合格って……?戦士認定されてないってことですよね?」
藤高はのんびり答える。
「はい〜。レベル1からレベル5、β1まで戦闘許可は一つもおりません」
挑戦者の強さに応じて1から5までの間でレベルが決まり、戦士たちはそれぞれ制限が設けられる。
「えっ、戦士じゃないんですか?」
「いえ〜。来週発表予定なんですけど、満島さんには特別に教えてあげましょう〜。一体なぜ、戦士認定されていない人が戦闘所に配属になるのか」
「お願いします。場合によっては規約違反なんじゃ……」
藤高は携帯を取り出して、まだ未公開の広告を見せる。
画面は19年前の藤高と能力者エモナの決戦から始まる。
「あの日、頂点を知った。そして、その上を見たいと思った。道は用意した」
次に映るのはピーナッツ最盛期の伝説の戦士たち、赤丸部隊のシルエット。
「立ちふさがるのは歴戦の猛者たち、その全てに打ち勝て」
画面は変わり、藤高の背中が映る。
「修羅の道の頂上にて待つ」
修羅の道 今年夏 開催。詳細はピーナッツニュースまで。
「な、なんですかこれ?」
呆れ気味の満島。
「今年のピーナッツの一大イベント。修羅の道ですよ〜」
「よ〜、じゃなくて。これとウチの新人に何の関係が」
藤高は軽く笑う。
「フフ、この修羅の道、レベルが従来のものじゃないんですよ〜」
「……。戦士認定がなくても戦えるレベルってことですか?」
「はい〜。「レベルα1」は一般の方の参加も可能で、強さ的にはレベル4とレベル5の間くらいですかね」
レベル5とは戦士が負けることが前提となり、挑戦者が勝ったとしても賞金は微量であり、勝っても負けても連戦することはなく、挑戦者としてはレベル5の判定になってしまうと旨みがなくなってしまう。
一方レベル4はバランスを保てており、挑戦者への賞金はしっかりある。さらに、勝ち続ければ連戦が可能であり、最多連勝数は332連勝の能力者エモナだが、現在は100連勝で殿堂入りとなるため、実質もう抜くことのできない記録である。
ちなみにβ1とは、バク的に発生したレベルであり、勝利が最優先され、戦士のあらゆる制限がなくなる。過去、この判定を受けたのは、乱入してきたララとロロという試験用の戦闘プログラムのみ、頑の母、頑 願子が制した戦いである。
「それになら、出れると?」
「はい〜。α1は開かれたレベルです。戦士認定のないイージー版ユーザーを巻き込んだイベントになります。なので、不合格でも、この修羅の道の参加条件は満たしているんですよ」
イージー版とは、近年、普及した完全バーチャルゲーム機のソフトとして発売されたピーナッツの戦闘を体験出来るゲームのことだ。
内容的には過去、実際に戦士たちが戦った挑戦者たちが、計500体ほど収録されており、現在もゲーム内イベントに伴い、続々追加中である。
ゲームであり、素人が遊ぶ物であるため、戦士と全く同じ環境というわけではなく、痛みの再現は戦士たちより95%も抑えており、かなり和らげてある。特殊武器などの補正は200%と、実際の戦士たちが戦う環境より難易度を下げてある。それでも他のバーチャルバトルアクションゲームと比べると、その難易度は高めである。
最近では大会まで行われるようになり、ピーナッツから派生した新たな文化として独立し始めている。
さて、満島はやや腑に落ちない顔だ。
「それなら、別に戦闘所配属にしなくても……」
「そうなんですけど〜、本人の希望とピーナッツの所属にしておくと広告塔として機能するので〜。歌もうまいし、可愛いし」
「なんか、大人の嫌な部分が出てますね」
こき使われるであろう新人を哀れに思う先輩であった。
「この娯楽戦争の最中、あざとくいかないと〜。あっ、それから、α1は二人一組ですからね〜」
「二人一組って……。えっ?」
満島は面倒ごとの匂いを察知した。
その時、戦闘所の二階の扉からノックが聞こえた。
「どうぞ〜」
藤高が引き入れたのは、満島が求めていなかった新人。
「失礼します。遅刻してすいません!!今日から綾木戦闘所に配属になりました。頑 奏エです!」
ビシザシッツ!!と敬礼をする頑。引く満島。
「わあしは藤高 荵です、ここのマスターをやらせてもらってます」
「知ってます。お会いできて光栄です」
頑は藤高の手をムンギュと握る。
「こっちのシャイボーイが満島 空雄くん」
藤高に紹介されるやいなや、頑は満島の前に行き、手を握る。
「よろしくお願いします。先輩!」
「……ああ」
勢いがあり、うるさい頑を前に、満島はこいつとは上手に付き合っていける気がしないと思うのであった。
「はい〜。自己紹介は終わりですね〜。さあ、今ここに修羅の道を目指すコンビ第一号が誕生しました〜。コンビ名は「セブンライト」でどうでしょ〜?」
「まだ、出るなんて言ってないですよ!」
「?」
出るとしても味方は選びたい満島と、なんのことやらさっぱりわかっていない頑。
二人の激闘、死闘はここから始まるのである。
今回はバトル少なめでしたけど、次から最終話までほぼバトルなんで許してください。すみませんでした。
戦うぞー!