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82話:サキュバスのお仕事における死亡リスクの低減検討

題目 ≪夢魔の精吸い事業における死亡リスクの低減検討≫


 夢魔歴1020年13月5日

 アルノ・ゴードキイス



[本提案書の位置付け]

 精吸い事業のますますの発展を促すため、現状の問題定義と改善策の提案。




【Ⅰ.背景、問題】

・サキュバス、インキュバスにより構成される夢魔族は、異性の精力を吸収し己の魔力とすることで生命活動を維持する体質である。


・しかし夢魔族の男女同士で精力を吸収するのは忌避されている。

 (※種の衰退を防ぐ本能であると言われている。参考文献[1])

 そこで太古より夢魔族は、『異界へ出向き、他種族の異性から精力を吸収する』(以下「精吸い」と呼称)という一種の狩猟を生業としてきた。


・夢魔歴955年、他種族から搾取した精力を錠剤(以下「精剤」と呼称)へ封入する技術が確立。

 精剤を服用するだけで、夢魔にとって必要な魔力を補うことが可能となった。

 これにより、主に貴族は自分自身で精吸いを実施する必要がなくなり、職業選択の幅が大きく広がり、夢魔族文化の急速な発展へと繋がった。


・同時に精吸いも『個々人の生業』から『精剤を生成するための精力収集事業』へと形を変えた。

 夢魔社会の発展を支える、重要な第一産業の位置付けとなっている。


・精吸い法の第一条には、『社会基盤たる精吸い事業は確実かつ永続的に実行されるべきである』と記載されている。

 第一条を遵守するためには、精吸い事業従事者の安全を確保する必要がある。

 しかし精吸い事業に起因する夢魔族の死亡者数は、年間14000~20000人に及ぶ。

 これは事業従事者の1.16~1.67%であり、将来的な人材不足も危ぶまれる。



・以上より、精吸い事業における年間死亡者数について、


 理想:0人

 現状:14000~20000人


 となっており、上記理想と現状の相違より、

『精吸い事業において夢魔族の死亡者が発生する』

 ことを問題と定義する。





【Ⅱ.問題の細分化】

・過去10年間の死亡者数と死亡理由の内訳を図1に示す。(参考文献[2])


挿絵(By みてみん)


・1012年まで感染症による死亡者数が毎年丁度3000人になっているが(図1中A)、『感染症は3000人までしか計上しない』という保証金を削減するための慣習があったためである。

 ただし1013年に流行病である龍孔(りゅうこう)病が多数の異界で蔓延し(図1中B)、対応のため正確な感染症死亡者数を計上する規定が作られ、それ以後は是正されている。(参考文献[3])


・死亡者数計上方法が是正され龍孔病も収束した1014年以降について、更に細かい死亡理由の内訳を表1と図2に示す。(参考文献[2])


[死亡理由項目の説明]

 感染A: 空気感染、または小動物、虫による感染症

 感染B: 性行為を原因とする感染症

 感染C: 大型の魔物や動物からの攻撃を原因とする感染症

 食害 : 異界危険生物からの捕食被害

 戦争 : 戦争、紛争への巻き込まれ被害

 暴行A: 夢魔を敵対視する者からの暴行被害

 暴行B: 性交中、性交後に興奮した精吸い相手からの暴行被害

 毒  : 異界の食糧が体に合わず毒負傷

     (異界住民に毒を盛られた場合は暴行Aまたは暴行Bに分類)


挿絵(By みてみん)


挿絵(By みてみん)



・図2より、


 ①空気感染、小動物、虫感染による感染症

 ②性感染症

 ③異界危険生物からの捕食被害

 ④戦争、紛争への巻き込まれ被害


 の四項目が死亡理由の96%を占めており、優先して解決すべき項目である。





【Ⅲ.目標設定】

 1021年までに『①空気感染、小動物、虫感染による感染症』の死亡者数を1割以下に減少させ、精吸い事業に起因する夢魔族の死亡者数を年間9190人以下にする。


(将来的な展望)

 1025年までに①~④の死亡者数を0人にし、年間死亡者数を800人以下にする。

 1030年までに残項目も全て解決し、年間死亡者数0人を目指す。





【Ⅳ.問題の要因解析】

・当提案書では、まず①に対し要因を解析。

 (調査文献および参考文献[2][3][4])


 挿絵(By みてみん)





【Ⅴ.対策立案】

・感染症予防の法、あるいはそれに準ずるルールを制定する。

 具体的なルールは以下。


 ⅰ 各異界へ定期的に調査隊を送り、安全性を調査する。

   (効果〇 リスク大 コスト大)


 ⅱ 危険と判断された異界での精吸い事業を一時停止する。

   (効果◎ リスク小 コスト小)


 ⅲ 薬や道具などで感染症を回避可能な場合、それらを従事者へ無償提供する。

   (効果◎ リスク小 コスト大)


 ⅳ 娯楽のための精吸い行為を禁止、または制限する。

   (効果△ リスク無 コスト無)


 ⅴ 貴族王族であろうとも、個人が異界での精吸い権を独占することを禁止する。

   (効果◎ リスク無 コスト無)



-------------------

参考文献

[1] チン野 ボウ太. (1016). 精吸いの歴史に基づく夢魔心理. エロ波文庫.

[2] デー田 アツメ郎. (1020). 精吸い効率化のためのデータ記録1020年版. 夢魔国立第一大学.

[3] イン山 キュ助. (1016). 龍孔病による社会変化. 夢魔医師学会.

[4] 白ゴマ油 太郎. (1020). 龍孔病後の各界意識調査. 淫魔報道学会.




 ◇




「出来た! 出来たよメッシュさん!」


 十五日目。

 夢魔の業務安全について、アルノは一枚の提案書を書き上げた。


「地球のトヨタ問題解決手法って仕事術に乗っ取って、試しに報告&提案書を書いてみたんだけど」

「ふむ……地球は知っているが、その問題なんとかは知らぬな……しかし、むむぅ……」


 難しい。よく分からない。

 甘いものが食べたくなってきた。


 しかしアルノはたった一夜で多くのデータを調べ纏め、この提案書を書き上げた。

 利発であること以上に、よほどの情熱を持ち合わせていなければ無理だろう。

 その情熱とは『夢魔族の役に立ちたい』というアルノの志から来るものだ。


「この提案書を国の偉い人にでも渡すのか?」

「うん。でもまだこれだけじゃ足りないけどね。説明発表用に結論と要点がすぐ分かるスライドも用意しないと」

「それは大変だな。恐れ入る」


 我は本心からそう思った。

 もし自分だったら絶対こんな小難しい資料を書きたくない。


「でも頑張れば、皆もきっと改善しようって気になってくれるよね! それに色々資料を調べてて分かったんだけど、私と同じ危機感を持って行動してる人もたくさんいるみたい。記者の人とかね」

「そうか。上手く成功すれば良いな」

「大丈夫大丈夫、うまくいく! えへへへ」


 アルノが一日ぶりに笑顔を見せた。


今回の提案書はガチ本物のトヨタ社員が監修しました。

まあでも内容はファンタジーなので、堅苦しがらず適当に読んでください。

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