72話:友情パワー!全国大会編
応援ビーム+水ゲロのコンボにより、高層ビルが倒壊。
そして我らは、すぐさまその場から逃走した。お巡りさんに捕まりたくないからである。
そして翌日。
サトケン少年は、我を召喚しなかった。
それまでの我は、毎日毎日、朝から晩まで何度も何度も何度もサトケン少年から呼び出されていた。
が、今日はまったく音沙汰が無い。
仕方ないか。少年はまだ小学五年生なのだ。
ビルを破壊するような力に、怖くなってしまったのだろう。
とは云え、我は焦った。
もしかするとこのままサトケン少年は、我の召喚用センベイを捨ててしまうかもしれない。
そうなると困る。
今回の我の目的はトモモモンの調査だ。しかしまだ大した事は分かっていない。
マートにどう言い訳しようか。
新しいセンベイを用意してくれるだろうか。
「ウジウジするのはメッシュ陛下らしくないですよー。ウザイから死んでくださーい」
と一応慰めるように言ったのは、ゴシックドレス姿の鑑定係。
ポッキーをボリボリ食べている。
トモモモンはいつ召喚されるか分からないので、最近の我は召喚斡旋所に住み込み状態だ。
サトケン少年から呼び出されるのを待ちながら、鑑定係と雑談しオヤツを食べるのが日課となっている。
そして今日は全然呼び出されないので、ずっと二人で雑談しっぱなしである。
「まーなるようになりますよー。ダメならやり直せば良いですしー。別に期限も無いしー」
「ふむ。それもそうだ。我もポッキーを食べよう」
「いちご味ですよー」
◇
そして更に翌日。
本当になんとかなった。
サトケン少年が、また普通に我を召喚したのである。
「昨日は一回も呼び出ししなくてごめんね。風邪ひいて寝てたんだ。いっぱい冷や汗かいたからかな?」
怖がっていた訳では無いらしい。
むしろ、
「でも凄いよメツキワルーイとロカピュウ! あの応援ビームのパワーがあれば、ボクたち最強のチームになれるね! 目指せトモモモン・マスター!」
と、モチベーションが最高潮に達していた。
ビル倒壊により間接的に人を殺しておいてこの開き直りようならば、サトケン少年はとんだサイコ野郎ということになるが……そうでは無い。
不幸中の幸い。事故による死者および重傷者は奇跡的に0人だったのだ。
と言うのもあのビルは、取り壊し予定の老朽化した廃墟であったという。
しかもタイミング良く軽い地震が起こっていたらしく、「自然に倒壊した」という結論で片付けられそうであるとのこと。
なんとも都合と運が良すぎる展開である。
ロカの姐御は、サトケン少年のことをメインキャラタイプ……要は『特別な人物である』と評していた。
なるほど。この運の良さ。そしてあれ程の事件にも物怖じしない度胸。
確かに大物かもしれんな。
「ふー。助かったのう。実は昨日『もう捨てられちゃったのかも?』と不安で、一日中ビクビクしてたんじゃぁ~」
とロカの姐御が小さく囁いた。
姐御も我と似たようなことを悩んでいたようだ。
そしてサトケン少年は、元気良く言った。
「今のボクたちなら、きっと大人にも勝てるよ! それでね、ボク決めたんだ!」
「何を決めたのだ?」
「トモモモン・バトルの公式大会出場さ! ずっとおじいちゃんに勧められてたんだ。でも出場者のほとんどは大人だから迷ってて……だけど決めたよ! ボク出る!」
公式大会。
そんなものまであるのか。
「っていうか実はもう地方大会終わってるけど、トモモモン博士であるおじいちゃんのコネで最初から全国大会に出られるよ!」
「公式なのに、そのような露骨な贔屓がまかり通るのか。腐っているな。気に入ったぞ」
「よーし! 大会は一週間後だよ。頑張ろうね。ロカピュウ、メツキワルーイ!」
「ロッカッピュ~。ロッカ~!」
という訳で、我らはトモモモン・バトル全国大会への切符を手に入れた。コネで。
◇
そして大会までの一週間。
我と姐御は地獄のような特訓を……したりは、別に無かった。
なんとなく大会を意識して、なんとなく気合を入れて、なんとなくバトルしていたが……まあ総合的には特に以前と変わらず、普通に過ごしていた。
ただ大会前日は「さすがに今日は休んでた方が良いよね!」とサトケン少年が提案し、休日となった。
そこで我は、とりあえずの現状をマートへ報告しようと考え、久しぶりに魔王城へと赴いた。
すると、
「…………あに……!」
廊下にて、弟のノーザとバッタリ出会う。
ノーザは人懐っこい笑顔を浮かべ、赤く長い髪をなびかせながら駆け寄ってきた。
言葉こそ喋らないが、それ以外の点では相変わらず社交的な弟である。
そしてノーザと共に、もう一人。
「ひぅうええええぇぇええぇぇぇえええおげええええ」
と我の姿を見た途端に奇声を上げ、赤く長い髪をなびかせながら廊下の角へ身を隠した女。
妹のラスである。
「あ、ああぁ。えへ、えへひひいい。ごごごめんよメッシュ兄。またつい逃げちゃったぜぇ。だってメッシュ兄の顔が怖いんだよぉぉぉ。怒った?」
「怒ってはいない。そして我の顔は怖くない」
相変わらず一言多い妹である。
双子のノーザとは逆に言葉数こそ多いが、社交的とは言い難い性格だ。
「…………めー……」
「え、えへへへぇひぃ。ごめんごめんんん。ごめんよぉぉ」
ノーザに軽く諫められ、ラスは廊下の角から体を出す。
ラスは普段部屋に籠りきりなのだが、それを心配したノーザがたまに外へ連れ出し散歩している。
外、と行っても城の外ではなく部屋の外。つまり城内廊下。結局は屋内である。
今もその散歩中であるらしい。
「あぁぁぁ。そうだメッシュ兄ぃぃ。聞いたぜぇぇ。全国大会出場おめでとぉぉぉ」
「うむ……どうしてそのことを知っている?」
「ネア姉が言ってたぁぁ……」
姉上は毎日のように我の元へ遊びに来ているので、我の現状を概ね把握しているのである。
「でっかいおっぱいをブルブル揺らせて、ラスちゃんを精神的に痛めつけながら言ってたぁぁぁ……イジメだよぉぉ……どうせラスちゃんは貧乳だからぁぁぁ……くそびっちぃぃぃぃ。ところで何の全国大会なのぉ?」
どうやらネア姉上の胸に気を取られ、話の内容はあまり理解していなかったようだ。
我はトモモモン及びサトケン少年のことを簡単に説明する。
「へぇぇぇ。手持ちモンスターを戦わせるゲーム的なアレ系かぁぁ。じゃあその全国大会、きっと途中で悪の組織の邪魔が入って中止になるよぉぉ。なんちゃってぇぇえへへへへひぃ」
「何? どういう意味だ?」
「ぴぃぃぃぃいいい! ごごごごご、ゴメンよぉ。ラスちゃん調子に乗って悪いコト言っちゃったぁ?」
ラスが泣き声を上げ、ノーザの背中に隠れた。
別に我は怒っていないのだが……
「純粋に聞いているだけだ。悪の組織とはなんだ?」
「ほ、ホントに怒ってないぃぃ? あ、あははへへへ。悪の組織ってのはアレだよぉぉ、そういうキッズホビーなゲームで良く出てくる、世界征服を企んでるヤツらでぇぇ。だいたいストーリー終盤でやる全国大会編の準決勝あたりで邪魔しに来てぇ。大会もウヤムヤになってぇ。実はその組織のボスが大会主催者だったりしてぇぇ。選手たちが戦って発生したエネルギーを利用して、破壊兵器を作ってた的なぁぁぁ……」
◇
ラスはああ言っていたが……いやいや、単なるゲームのあるある展開だ。
今回もそうであるとは限らぬ。
そもそもこの世界に『トモモモンを使って世界征服を企んでいる悪の組織』などいるのだろうか。
そんなベタな集団はいないだろう……と思うが……
ううむ。一応サトケン少年に聞いてみるか。
「うん、いるよ悪の組織。モトモト団! 世界征服を企んでる悪いヤツらなんだって。トモモモン・バトルで発生したエネルギーを利用して兵器を作ってるとか、ニュースで言ってたよ」
いた。




