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69話:友達が呼んでるんだからさっさと来いよ。五秒な

「トモモモン。最近いくつかの世界で頭角を現している、新興のレンタル召喚業者さ。僕らとは別の魔界が運営しているようだね」


 マートはそう説明していた。


 レンタル召喚は我の祖父殿が考案した事業であるが、天界やいくつかの別魔界でもパク……類似事業を興している。

 その一つが、友達お供モンスター略してトモモモンという訳だ。

 随分と間抜けな名称だがな。


「兄上には、そのトモモモンの利権もしくは客を根こそぎ奪って来て欲しいんだ。手段は問わないよ♡」

「ふむ。なるほどな」


 実に悪魔らしいミッションである。

 目的が分かりやすいのが良い。


「トモモモンは各国レンタル召喚事業の中でも、なかなかに独特なシステムを取っていてね。普通のレンタル召喚では、召喚獣個人(・・)を指定する事が出来ないのだけれど。でも──」

「出来るのか、トモモモモンでは?」

「モが一つ多いよ兄上。でもその通り。出来る」

「それではレンタル召喚ではなく、太古に滅びた正式な『召喚術』ではないか」


 正式な『召喚術』とは、召喚術師と召喚獣が『専属の契約』をする術のことである。

 強力な召喚獣を、完全に自分だけの所有物に出来る。

 だがその代わりに、膨大な魔力と生命力を支払い続ける義務が生ずる。

 どんなに優秀な召喚術師でも寿命が凄まじい勢いで削れてしまう、あまりにもリスクが高すぎる術。


 そのリスクを減らしたのが『レンタル召喚術』だ。

 一時的な契約とすることで、支払う魔力生命力を大幅に減量。

 安心安全な召喚術として、様々な世界でご愛顧頂いている。


「いいや、トモモモンは歴としたレンタル召喚獣だよ。召喚の都度、何度も何度も新たにレンタル契約をしているのさ。他と違うのは指名権があるってトコロだね。その指名に割れセンベイを使うってワケ♡」

「……何故センベイなのだ?」




 ◇




「割れセンベイの割れ目がぴったり照合したよ!」


 サトケン少年が、二つの割れセンベイをくっ付けて確認した。

 しかし喜んでいるところ心苦しいが、この割れセンベイはマートが作った偽物。

 スパイを使って、偽センベイの片割れをこの世界に紛れ込ませたらしい。


 ちなみに割れセンベイは腐ったり砕けたりしないよう、魔法でコーティングしてある。

 我の偽センベイだけでなく、本物の割れセンベイもそうだ。


「ボクの友達証明完了! ヨロシクね」

「うむ」


 我は、召喚術師であるサトケン少年と握手をした。

 自分で『元気いっぱいの小学五年生さ!』と言うだけはあり、ハキハキとした子供である。


「キミの名前はなに?」

「メシュ……いや間違えた。コホン」


 つい本名を名乗りそうになった。


 今回は利権強奪目的の潜入捜査。

 本名は使わない方が良いだろう。自分で言うのもなんだが、我は有名人であるからな。

 サトケン少年はともかく、トモモモンたちは別魔界の悪魔か魔物。我の名を知っている可能性は高い。


 あくまでも今回の我は、新種のトモモモンとして行動せねばならぬ。

 ソレっぽい偽名は、マートがトモモモンを研究して考えてくれた。


「我はメツキワルーイだ」


 目付きは悪く無いがな。


 我は、少々不本意な偽名を名乗った。

 するとサトケン少年は、


「え。キミ喋れるの!?」

「何……?」


 予想外の反応。


 しまった。

 もしやトモモモンとは普通喋らないのか?

 マートは教えてくれなかったぞ。知らなかったのであろうか。それともうっかりさんか。


 よく考えれば隣にいるロカピュウなる黄色い魔物は、先程から「ロカピュウ~」と自分の種族名だけを執拗に叫んでいる。執念深い自分アピールなのかと思っていたが、単にこの言葉しか喋れないのか。

 我も「目付きワルイ~」とだけ言うべきだったか。

 いやでもそれはちょっとキツい。


 我は、開き直ることにした。


「うむ。我は喋るぞ。何故ならば珍しいトモモモンだからだ。本当だぞ。嘘じゃない」

「わあ、凄いね!」

「そうじゃのう。確かにSSRスペシャルスーパーレアなトモモモンの一部は、人間の言葉を理解して喋るぞい」


 サトケン少年の祖父である博士が説明した。

 なんだ喋っても良かったのか。いらぬ心配であったな。


「よーし。メツキワルーイとロカピュウは、今日からボクの友達だよ!」

「うむ」

「ロッカッピュウ~!」


 そしてサトケン少年は、装着しているゴツイ腕時計の側面に付いているボタンを押し、満面の笑みで言った。


「じゃあ、またね!」




 ◇




「あー。おかえりなさーい」


 ゴシックドレス姿の鑑定係が、我の顔を覗き込むような上目遣いで言った。


 気付くと我は、召喚斡旋所に戻っていた。

 腕時計のボタンを押せば、トモモモンを元の世界へ返す仕組みになっているようだ。


「早かったですねー」

「うむ。今日はとりあえずの顔見せだった」


 我はそう言って、右手に持っている割れセンベイをちらりと見る。

 センベイの中に、召喚報酬である魔力と生命力が溜まっている。


 鑑定係が小型掃除機のような機械を使い、センベイから報酬を吸い出した。


「意外とたっぷりー。B級案件よりちょっと上くらいの報酬ですねー」

「うむ。仕事内容に対してかなりワリが良いな」


 サトケン少年自体は、召喚術師としてはEかF級程度だ。

 B級レベルの報酬を払うと、すぐに死んでしまうだろう。


 しかし実際に報酬を払っているのはサトケン少年ではなく、少年が腕に装着している『トモモモン・デヴァイス・ウォッチ』なるアイテムだった。

 どういう技術で作った機械なのかは知らぬが、あれを使えば召喚術師の負担がほとんど無いな。

 それに先ほども言ったように、召喚獣への報酬が非常に良い。


 トモモモンは実質の専属契約。

 いつ呼び出されるのか分からぬので、召喚獣はずっと待機しておかねばならぬ。

 他案件との併用は出来ない。

 それが非効率であるため、普通のレンタル召喚術では召喚獣の指定や専属契約が出来ないようになっているのだが……


 しかしこの『トモモモン・デヴァイス・ウォッチ』システムならば、その非効率さを補って余りある報酬を約束してくれる。

 それも定期的にだ。


 少なくともB級以下の召喚獣にとっては、魅力的なシステムであろうな。

 マートが利権を欲しがっているのは、その辺に理由がありそうだ。


「報酬の吸い取り、終わりましたー」

「うむ」


 ようやく一息ついた。

 さて。オヤツでも買いにいくか。

 今日はまだ甘いものを食べていないからな。

 そうだな。今の気分は……マシュマロ系の何かを……


 と白いふわふわに思いを馳せようとした、その時。


「メッシュ陛下ー。センベイ、また光ってますよー」

「……うむ」


 右手のセンベイが黄金に輝きだした。

 これは、トモモモン呼び出しの合図である。


「さっそくか。忙しいな。仕方ない、また行ってくるとしよう」

「ふふー。いってらっしゃーい」




 ◇




「よーし。幼馴染のアカリちゃんと初トモモモン・バトルだ!」

「ふふーん、負けないわよ。あんたの手持ちに合わせて、二匹VS二匹のルールでやってあげる」

「さあ友達呼び出し(サモン)! 来いロカピュウ」

「ロカピュ~!」

「割れセンベイの割れ目がピッタリ照合したよ。ボクの友達証明完了! そして次は……来いメツキワルーイ!」


 と、そんなノリで二度目の呼び出しをくらった。

 我は「ゥハーッハッハッハ」と笑いながら現れる。


「割れセンベイの割れ目がピッタリ照合したよ。ボクの友達証明完了!」

「それ毎回言わないといけないのか?」




 ◇




 幼馴染のアカリちゃんのトモモモンを殺さないよう手加減するのが難しかったが、無事バトルに勝利出来た。

 我は再び魔界へ帰還する。


「おかえりなさーい。さっそく報酬を吸い出しますねー」

「頼む」


 報酬吸い出しは数秒で完了する。


「終わったか。さて今度こそマシュマロ系のオヤツ……そうだな。エンゼルパイを」

「あー。メッシュ陛下ー。せんべーせんべー」

「む……」


 割れセンベイが、またもや輝いている。

 呼び出しの合図だ。




 ◇




「よーし。クラスメイトでライバルで親友のヨシオくんと初トモモモン・バトルだ!」

「負けないぜ!」

「さあ友達呼び出し(サモン)! 来いロカピュウ」

「ロカピュ~!」

「割れセンベイの割れ目がピッタリ照合したよ。ボ」


 以下省略。




 ◇




 親友のヨシオくんとのバトルに勝利し、我は魔界へ帰ってきた。


「おかえりなさーい。報酬を吸い出しまーす。ぶおーん」

「うむ……さあ今度こそオヤツを買いに」

「あー。またセンベイがー」

「…………」



 今回の仕事。

 想像以上に過酷である。


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