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14話:一万匹の天使に囲まれてリンチされる

 この世界のカラクリとやらは分かった。

 単なる魔界への嫌がらせだな。


「ふう、全部話してスッキリしたわ。誰かに”自慢”したかったのよね~、アタシが考えついたこの”ゲーム転生召喚落雷システム”について。”特許”は出願中だから勝手に真似しちゃ駄目よ」


 女神レイスは清々しい表情だ。

 どうやら我は、都合の良い話し相手にされたらしいな。


「さあここからは”悪魔退治”の時間ね。忌々しい”堕天邪神”の孫……”魔王”、いや()魔王メシュトロイオン! このアタシ、”美しすぎる美女神”ことレイスが”浄化”するわ!」

「先程と異名が変わっているぞ。麗しの天女とかじゃなかったか」

「うっさい!」


 レイスは後ろに飛び跳ね、我から距離を置きつつ宙に浮いた。せっかく大地を出現させたのに、結局浮くのか。


「アンタ今、せっかく”大地”を出現させたのに結局”浮く”のか~? って思ったでしょ」

「うむ。思った」

「やっぱり! バーカバーカ。だっさ!」

「馬鹿ではない」

「”大地”を出現させた意味はね、私の”神技”を繰り出す”下準備”なのよ!」


 レイスは右腕を挙げ、人差し指をピンと立てる。


「黒焦げになって砕けなさい! 真必殺轟光神技・”女帝の雷撃(エンプレス・ライト)”!」


 と叫び右腕を振り下ろすと、我の頭上の空間が裂け巨大な雷が出現。瞬きする間に大地を砕いた。


 ただし我には当たらなかった。

 何故ならば、


「必殺技名を叫ぶのは良いが、それでは技のタイミングが分かりやす過ぎる。我には通用せぬぞ」

「う、うっさいわね! 別に”未熟”だからカッコいい技名を叫んで”気合”を入れないと強い”雷撃”を出せない、って訳じゃないんだからね!」


 未熟なのか。


 だが今のエンプレスライトなる技は、この世界に召喚された時に喰らった自動(オート)落雷なる技より数千、いや数万倍は威力があるようだ。

 気合を入れただけの事はある。

 流石の我も、直撃は宜しくないな。


「しかし今の技は結局、大地を作ったことと何の関係があったのだ?」

「何見てたのよ、ちゃんと”関係”してたでしょ。私の”雷”が”地割れ”を起こして、カッコイイ”感じ”になってたじゃないの」

「そうか」


 言われてみれば、確かに格好良いかもしれない。


「演出について学ばせて貰ったぞ。しかし貴様の自己満足に付き合っている時間は無い。腹も減ったし、さっさと決着をつけるぞ」


 このレイスという女は新人なれど神の眷属。適当なパンチや魔法では有効打にならぬだろう。

 そこで我は右拳に魔力を集中させた。魔力を溜めて溜めて一気に放出し、重い一撃を与える腹積もりだ。


 宙に浮いているレイスに向かって拳を突き出す。

 このまま溜めたエネルギーを砲撃のように放つ。避けられはしない。我の目が届く限りどこまでも追跡する気弾であり……


「待ちなさい! ”攻撃”やめ!」


 とレイスに言われ、我は素直に気弾発射を一旦延期した。


「なんだ。またお喋りか?」

「違うわよ。アンタバカなの!? まだアタシの”攻撃”中よ。”順番”守りなさいよ!」

「なんだと? だがエンプレスライトなる技は回避したし、そもそも戦いに順番も何も」

「うっさいわね! まだ”おーしまい!”とか言ってないから、とにかくアタシの”ターン”が続いてるのよ! アンタも元”魔王”なら戦いの”様式美”くらい守りなさいよ!」


 よく分からない理屈を捏ねている。


 しかし……本当にそのような様式美があるのだろうか?

 無視してさっさと殺してしまっても良いが、だがもし本当にあったらどうしよう。

 我は悪魔なのでルールを守る気は無いが、様式美はルールとは違う。むしろ悪魔こそ守らねばならぬ……ような気がしないでもない……後でマートに聞いてみようか?


「引っかかったわねバーカ! そんな”様式美”無いわよ!」

「ぬ……貴様騙したのか」

「騙されてくれたおかげで、術の”発動準備”が出来たわ! いくわよ、スペシャルEX神技”天使招来(しょうらい)”!」


 レイスは両手を交差させた。

 凄まじいオーラを放っている。体に巻き付いている布がはためき、肌の露出が更に高まる。痴女か。

 その痴女の頭上の空間にひびが入り、みるみる間に穴が開く。


「天使招来だと? また厄介なものを……」


 レイスの言葉を聞き、我は拳の気弾エネルギー充填を再開した。しかしただの再開ではなく、当初予定より更に多くの魔力を溜めこむ方針へ変更。

 砲撃目標も変更する。レイスを撃つのでなく、これからやってくる天使たちを撃つ。


 招来とは言わば、天界の神々だけが使える召喚術だ。

 それも『レンタル召喚』ではなく、魔界では遥か昔に滅んだ真の意味での『召喚』に近い。一回限りのレンタルではなく、永続契約で何度も呼び出すタイプの術。

 招来で呼び出すのは召喚獣ではなく、天使と呼ばれる神のペットども。


 ただし魔界の古代召喚、および天界魔界問わずのレンタル召喚は『術師より強い召喚獣を呼ぶ』ものだが、招来は違う。

 天使とは、術師である神々より弱いのだ。


 弱いのに何が厄介なのかと言うと……


「ぴぎゃあああ」

「みぎゃああああ」

「ぶぎゃあああああん」


 時空の裂け目から、天使たちが奇声を上げつつ這い出してきた。



 千匹ほど。



 そう。天使とはとにかく数が多いのである。

 ああまだまだ出てくる。二千。三千。これ以上は我の感知能力で把握しきれない。


「ぴゅぎゃあああ」

「ぐじゅぶるるるる」


 招来された天使たちは体長50センチほど。

 甲冑のような硬い外殻に身を包み、六本の節足でカサカサと動いている。

 頭部には複眼の赤黒い瞳が二つ。顔の面積半分以上を占める口にハサミ状の二本牙。

 羽だけは天使っぽく、純白でふわふわしているが……


 天使には色々なタイプがあると聞いているが、これは完全に虫タイプだな。


「おーっほっほっほ! ”虫天使”は”招来コスト”が低いので、アタシくらいになれば一度に”一万匹”呼び出せるのよ!」

「一万もか」


 正直気持ち悪い。

 あとなんか臭い。腐葉土みたいな臭いがする。

 ビジュアルも天使と言うより、魔界に生息していそうな巨大虫だ。


「この”一万匹”の天使たち、今は”まだ”大人しくしてるけど……ひとたびアタシが”行け”と”命令”すれば一斉にアンタに襲い掛かる……」

「ぴょぎゅああああ!」

「あっ違うのよ、さっきの”行け”はただの説明で……ちょっとぉ!」


 一匹のせっかち天使が先走って、我に襲い掛かってきた。

 振り上げた右前足の先が刃のように研がれており、怪しく黒光りしている。


 我はその刃を避けた……のだが、せっかち天使の素早い刃は衝撃波を放ち、我の左手首を切り裂いた。


「……少しだけ痛い」


 かすり傷だが血が出ている。

 敵からの攻撃で痛みを感じるのは久々の経験だ。召喚獣に転職してからは初めて。

 痛み自体は身内のネア姉上から散々与えられたが……まあそれは別として。


 しかしこの天使は素早い。そして力強い。

 何より天使たちは神の加護を受けているため、悪魔への攻撃が通りやすくなっているのだ。それがまた厄介。


「おーっほっほっほっほ! ”不意打ち”気味だったけど、アンタでも”天使”の攻撃は防げないようね。さあ”一万匹”の”下僕”たち! その元”魔王”へ一斉に襲い掛かって、身柄を拘束しなさい! ”行け”!」


 一万匹の虫天使たちが、群れになって我を囲んだ。

 我はあえて(・・・)逃げず、虫天使たちに纏わりつかれる。前足の刃が体中を傷つける。痛いが、しかし我慢しよう。


 レイスは天使に「拘束せよ」と言った。

 我にかすり傷こそ与えるが、しょせん天使一万匹程度では我を殺すことはできない。それを理解しているのであろう。

 拘束して、その後にどうするかが問題だ。


 レイスは我の動向を注視しつつ、右腕を挙げ、人差し指をピンと立てている。


「さあ、さあ、さあ! 今度は”回避”不可能よ! 真究極必殺最強轟天光武神技・”女帝(エンプレス)”ゥ~~~」


 必殺技で虫天使ごと貫くつもりのようだ。

 しかも先ほど放ったエンプレスライトとは違い、今回は時間をかけて魔力を練り上げている。威力は更に上がっているだろう。

 当たると我でも死ぬ……かどうかは分からぬが、多分もの凄く痛いと思う。

 結構ピンチかもしれない。


「ゥゥゥ~~……まだ”溜め”ちゃおっ! おーっほっほっほ。”天使”たちの”拘束”で動けないみたいね! ざまあざまあ。バーカバーカ!」


 馬鹿ではない。

 我が虫天使のなすがままにされ血だらけになっているのは、動けないからではない。

 もちろん自暴自棄になったのでもない。


 溜め続けているのだ。拳に魔力を。一万匹を一斉に潰すエネルギーを。

 逃げると気が散り、時間がかかる。


「あっ”天使”たち、特に手の平! 手の平を拘束しなさい! そいつの必殺技”至高次元光弾ハイディメンション・レーザー(こう)”は指の動きで”発動”するみたいだから!」


 レイスが天使たちに指示した。

 武術大会で使った単なるデモンストレーション技を、本当の必殺技だと思っているようだが……

 しかし我が今実際に準備している技は、指の動きなどは必要としない。手の平を拘束されようが問題無い。


 技。

 この『溜めた魔力を気弾として一気に放出する技』ならば、確実に天使たちを殺せる。

 つまりこの技こそ、この状況に置いて言葉通りの『必殺技』であるな。


「じゃあ”トドメ”よ。これで”ボーナス”もいただきね! 超真究極必殺最強轟天光武覇王必殺神技・”女帝の雷撃(エンプレス・ライト)最後の審(ラスト・ジャッジメ)──」

「長い」


 レイスの技名が長いおかげで、我の魔力も十分に溜まった。

 我は技の名前などを叫ぶことなく、拳から魔力の砲撃気弾を放つ。


「「「「ピギャアアア!」」」」


 気弾は一万匹の虫天使たちの体を、順に一体ずつ貫いていく。

 我の感知能力にて虫天使全体の位置を把握。全ての天使を攻撃するよう気弾を誘導しているのだ。


 とは言え我の能力で感知できるのは同時に三千匹程度が限界。なのでまずは近くにいる三千を感知し誘導。それが終わったらすぐさま次の三千を感知。さらに三千。最後に千。と、慌ただしい攻撃だ。

 全ての天使を片付けるまで、その間約一秒。


「ジャッジメント……え? え? えええ? ちょっと待ちなさ……うにょあああ!」


 三千匹を殺してもなお勢いが残っていた気弾を、とりあえずレイスのみぞおちに当ててみた。

 レイスは必殺技を出すことなく、代わりに口からよだれを出して気絶した。


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