11話だしそろそろ必殺技とかあった方が良いか
「メッシュはオレの召喚獣! つまり俺のスキルの賜物! だからメッシュが武術大会で優勝すれば、俺が実力で優勝したって事だろ! 騎士になれるって事だろ! イジメっ子を見返して彼女を寝取れるって事だろ! フゥッ! オレ天才!」
「そうなるかもしれんな」
「なっ! オレ天才!」
天才なら勉強を頑張れ。
ともかくイジメっ子の自殺は諦め、結局イーキリの願いは『武術大会への出場』となった。
もう変更は受け付けないからな。
「さて! 武術大会に出るなら色々と準備しないとな!」
「何が必要なのだ?」
我はこの世界へ召喚されて来た故、当然ながら大会のルール等を知らぬ。
準備と言うと、身分証明やら健康証明やら既定の服装やら何やらが必要なのだろうが……
「そりゃお前、必殺技だよ! 武術大会と言えば必殺技の応酬だろ!?」
「なるほど」
よく分からんが、そういうものなのか。
「必殺技と言っても、う●こ漏らし魔法じゃあ地味だしなあ……他の必殺技は何がある?」
「脱糞コントロールは必殺技では無いが……そもそも、我には必殺技などは無い。何故ならば『必ず殺す』と確約するためには、己が放つ技よりも相手の生命力残量が重要であるからだ。どのような相手でも確実に殺すことが出来る技などは存在しない」
我がそう説明すると、イーキリは「いや違うって!」と叫んだ。
「そういう厳密な言葉の意味はどうでも良いんだよ! 必殺技ってのは別に絶対殺さなくてもいいから、なんか……あの……なんかカッコイイ感じの技だよ!」
「そうだったのか」
我の認識とは違ったようだ。
この世界独特の必殺技の解釈なのか? それとも我の解釈が昔から間違えていたのか?
後でマートに聞いてみよう。
「例えばさあ! 派手な動作でビームを打つとか、派手な動作で爆発するとか、派手な動作で100連コンボとか!」
「派手にビームか? ふむ……」
「やっぱり無いのかよ、そういう技は?」
「いや……ある。あるぞ。我の派手な必殺技! 試しに見せてやろう」
しかし部屋の中で必殺技を放つ訳にはいかない。
我とイーキリは庭に出た。
「とにかく派手ならば良いのだろう。ならば……」
我は右手の親指だけを曲げ、他の四本の指を立てた。その右手首を左手親指と小指だけで掴む。その際左手の残り三本の指は立てておく。
右手四本、左手三本。計七本の指がピンと立っている状態だ。
その七本指を大空に向け、指先に力を入れると……
「うぐああああ! なんだこれ眩しいぞ!」
各指から一色ずつ、七色の光線が爆音と共に発現。
七色の光は辺りを激しく照らしながら、雲を突き抜け宇宙の彼方へと飛んでいった。
「す、す、すすすすっげ! はっで!」
「だろう」
この七色光線は亡き父が使っていた技だ。我はそれを見て勝手に覚えた。
元々は祖父が勇者撃退デモンストレーション用に考案した技。
見栄えが良いので国民へのウケは良いが、七色発光に無駄に多くの魔力を割くため、威力はかなり低い。そのため我はあまり使ったことがない。
「この必殺技の名前はなんだ!?」
「名前か? あった気はするが忘れたな……確か父上は『あの目立つ奴』とか言ってたが」
「じゃあ仮に”至高次元光弾・虹”にしよう!」
「仮と言いつつ濃い名前だな。まあ良い。長いから嫌だが、とりあえず武術大会中はそう呼ぼう」
こうして我は新必殺技”至高次元光弾・虹”(『”』も技名の一部)を携え、翌日の武術大会へと向かったのである。
大会出場者名簿にはこう書かれることだろう。
出場者は召喚術士イーキリ。スキルは召喚術。
そして召喚獣は、悪魔メシュトロイオン――
◇
「なぁ~にが召喚獣だよ。目つき悪いだけの人間だろ。嘘つくなガキ」
「ホントだよー! ホントなのにー! 頼むよ受付のおじさん!」
名簿には書かれなかった。
信じてもらえなかった。
よく考えれば当然やもしれぬ。我は正真正銘の召喚獣ではあるが、見た目はこの世界の人間とほぼ変わらぬのだ。
しかもこの世界では、召喚獣は召喚された瞬間に死ぬ。生きたまま動いている事自体がおかしいのだろう。
「信じてくれよー!」
「うるさい帰れ帰れガキ。ほら顔が怖い兄ちゃんも、ガキの戯れ言にいつまでも付き合ってるんじゃないよ。いい大人なんだから」
「我の顔は怖くない」
しかし困ったな。武術大会に出場できなければ、また別の願いを聞かねばならぬ。
もう任務失敗ということで帰ろうか? こんな所で初めての失敗を経験するのは不本意だが……
いや、そういえば鑑定係は「召喚された時点で報酬は払われるから、願いを叶えようが叶えまいがどうでもいい」みたいなことを言っていたな。じゃあもう帰ってもいいのか?
早く帰ってオヤツを食べたい。
一昨日も昨日もロクな菓子を食べていないのだ。この世界の菓子は不味い。甘くない。
帰ったら特別に甘い菓子を食べてやる。スニッカーズを束にして――
「あ……! あああ!?」
「お? どうしたんだ受付のおじさん、急に叫んで!」
「いえ……その……」
オヤツの事を考えていたら、受付のおじさんが突然挙動不審になった。
おじさんは先ほどの横柄な態度を改め、柔らかい口調で言う。
「ただいま私のスキル『人物鑑定』で確認した所、た、確かにそこのお兄さんは召喚獣みたいですね。召喚獣なんて初めて見ましたが……」
鑑定スキルか。そういうのがあるなら最初から使え。
「では受付完了です。選手控え室へとお進みください」
「サンキューおじさん! 行こうぜメッシュ!」
「うむ」
願いの変更という事態に陥ることなく、なんとか無事に出場の運びとなった。
だが違和感があるな。
受付の態度が豹変した時、何か一瞬強い力を感じた気がする。しかしオヤツのことを考えていたせいで見逃してしまった。
人物鑑定なるスキルで確認したと言っていたが、それを発動した際の力だろうか?
たかが鑑定能力にあんな強い魔力が必要だとも思えぬが……
まあ、どうでもいいか。
さっさと終わらせて帰ってオヤツを食べよう。
◇
ついに大会が始まった。
割とどうでもいいので巻きで紹介する。
第一回戦。剣士との戦い。
「召喚獣だと!? 胡散臭いが、この厳格な大会に出場できたと言うことは本物か……だがここで早くも終わりだ! 喰らえ! 必殺剣技・”炎撃演舞”!」
「うるさい。”至高次元光弾・虹”」
「うぎゃー!」
勝った。殺しては駄目というルールがあるため、気絶させるまでに留めている。
次、第二回戦。魔法使いとの戦い。
「多少腕が立つようですが、私の敵ではありませんよ……お喰らいなさい。必殺魔法・”フェアリー・ライト・アロー”!」
「至高次元光弾・虹」
「うぎゃー!」
勝った。『”』を付け忘れていたが別にいいか。
次、第三回戦。
「拙者はサムライ……いざ尋常に参る。必殺刀術・”疾風五月雨突き”!」
「レーザー」
「うぎゃー!」
勝った。必殺技名は長いので省略した。
こうして我とイーキリは、ついに準決勝へと進んだのである。テンポ良いな。




