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100話:神裂ク聖紋章ノ殺戮~勇者悪魔少女はでんでん太鼓で神様を殺しました~

「私は、この”()球”の神……そして……やれやれ。面倒だが、悪魔であるあなた方の……そう、”天敵”」


 急に現れた「やれやれ」と煩いやれやれおじさんが、なにやらブツクサおっしゃってますの。

 なんだか喋り方がネッチョリしてて癇に障りますわ。

 わたくしこういう人苦手ですの。殺してもよろしいかしら。


「きゃふ……点滴ー……?」

「”天敵”です。やれやれ……”神”にコテコテのツッコミをさせるとは……やれやれ」


 癇に障るので話は半分くらいしか聞いてませんけども、どうやら、このやれやれおじさんは地球の(ゴミ)みたいですわね。


「あら? でも『地球は魔界の支配も天界の支配も受けていない、中立の勢力である』と、以前習った覚えがありますわ。どうして(ゴキブリ)がいるんですの?」

「いや話を聞いてなかったのですか悪魔の子よ。っていうか神と書いてゴキブリと呼ぶのはやめなさい。もう一度言いますが、ここは”地球”を真似て作った天界直属の世界である”ピ球”……」

「あっ、分かりましたわ! あなた不法に地球を占領しようと企む(サナダムシ)ですわね? それは条約(じょーやく)? 違反ですことよ!」

「だから話を聞きなさい。ここは私が作った”地球”のイミテーションで……」


 ええい、ごちゃごちゃと言い訳が多い(カス)ですことね。


「問答無用、ですの! この『混沌秩序ヲ守護ス断罪ノ勇者~ブレイブ・ジャッジメント~』フォルゴーゴン・ファフニール・ダモクレスの名のもとに! 成敗してあげますことよ!」

「わー……フォルちゃん、かっこいい……!」

「おーっほっほっほ! ですの!」


 勇者であるわたくしは、胸を張って両手を掲げましたの。

 その手に持っているのがでんでん太鼓ってのが、ちょーっとだけ惜しいですけれども。


「……まったく。やれやれですね。悪魔の子供よ聞きなさい」

「二回目の問答無用、ですの! さあわたくしのジャスティス・大腸引きずり出し(ビーストバイト)で出来るだけ苦しむように殺してさしあげますことよ!」

「聞きなさいって。やれやれ。実は私はあなたを知っているのですよ。まさかこんな所で会えるとは思ってもいなかったのですが……」

「あら。わたくしったら、いつの間にか天界にまでその名が知れ渡る、すーーっごい有名人になっていたんですのね!」


 まあ当然かもしれませんわね。

 美貌。能力。全てが史上最強ですもの。

 アルノちゃん様も「すーーごっ……いぃ……!」と褒めてくださってますわ。


「いいえ別に。あなた自身が有名人ってわけではありませんよ。あなたの同族であるメシュトロイオンやマートシュガロイオンなら有名ですが」

「はー? ぶっ潰しますわよ(ミジンコ)

「やれやれ穏やかではありませんね……どうして私があなたを知っているのかというと、あなたは以前、私の弟を殺した”仇”だからですよ……!」

「弟さん? 仇?」


 身に覚えがありませんわね。

 このやれやれおじさん、ボケてらっしゃるのでしょうか。


「覚えているでしょう……あなたが勇者の真似事で滅茶苦茶にしてしまった世界について」

「覚えてませんの。知りませんの。わたくし勇者として様々な世界を救っておりますけども、滅茶苦茶にしたことなんてありませんもの」

「…………いや、世界の管理者である神を殺して滅茶苦茶にしたことがあるでしょう。神の代わりに、今は自称魔王のヨッピーなる者が支配しているようですが……あのヒップホップ風のファッションが流行ってる世界ですよ。ほら」(※24~28話参照)

「覚えてませんの。知りませんの」

「………………」


 まったく記憶にございませんし、これは完全に嘘ですわね。

 一体この(クズ)は何をおっしゃっているんですの?

 言いがかりも甚だしいですわ。ぷんぷん、ですの!


「…………まあ良いです。やれやれ”子供”はこれだから……ともかく私は弟の仇であるあなた、及びメシュトロイオンにいつか”復讐”したいと考えていた……その”絶好の機会”が訪れたという訳ですよ。まずはあなたを監禁し拷問し、メシュトロイオンをこの”ピ球”へ誘き寄せましょうか。あなたはメシュトロイオンの妹だか姪だかでしょう?」


 と、やれやれおじさんが尋ねられましたの。

 そこまで調べが付いているのですわね。ストーカーですの? きもっ、ですの。


「そうですわね。正確に言うと、わたくしはメッシュお兄様のイトコの娘ですの。じゅ、じゅ……ええと、じゅなんとか……」

「じゅーてつー……きゅふ」

「そうそれ、従姪(じゅうてつ)ですの。さすがアルノちゃん様は物知りですわね」


 わたくし、お兄様との関係を素直にお教えいたしましたの。

 本来ならば(ヘドロ)へ教えて差し上げる義理は、これっぽちも無いのですけれどもね。でもどうせ──


「”従姪(じゅうてつ)”ですか。なるほど。やれやれ。意外に遠い関係ですが、それでも”悪魔”は身内に甘いと言いますし……」

「隙ありですの! ジャスティース・脳ミソ引きずり出し(イーグルクロー)!」

「ちょっと、まだ話中……!」


 ──どうせ、このようにしてすぐお殺し差し上げますものね。


 わたくしはでんでん太鼓を振り上げて、やれやれおじさんの額へ殴りかかりましたの。

 楽器さえあれば、発生する『音』の振動衝撃に魔力を乗せて、魔王をも超える超ウルトラ最強ミラクルスーパーグレートな力で相手を粉砕出来ますの。

 それがわたくしの必殺技。ジャスティス……えーとアドリブで咄嗟に付けた名前だからもう忘れてしまいましたのですけれど、ジャスティスなんでしたっけ? ジャスティス・脊髄圧迫でしたっけ。ジャスティス・脊髄圧迫(ベアーハグ)

 

 しかし……太鼓がやれやれおじさんへ接触する前に、


「ふはははは。やれやれ。攻撃する前に、自分の持っている”武器”を良く確認することですね」

「なにっ、ですの!?」


 なんと、よく見るとでんでん太鼓の『玉つき紐』が二本とも無くなってしまっていますの。

 気付かぬうちに武器を破壊されていたようですわね。


「これでは太鼓でトントントントンって出来ませんの!」

「そうでしょう。これでは太鼓でトントントントンと出来ないでしょう。やれやれ。これであなたの”魔界演奏”攻撃は封じましたよ……!」

「あら。別に太鼓部分だけあれば充分攻撃出来ますことよ?」

「えっ……嘘」


 そして紐無しでんでん太鼓が、やれやれおじさんの頭に当たりましたの。


「ぐぇ……」


 おじさんの頭は吹き飛んで、上半身が消え去りましたわ。

 はい。おしまい。ですの。


「わー……フォルちゃん、さいきょー……!」

「おーっほっほっほ! そうですの。わたくし宇宙最強の勇者! ですのよ!」


 無事に(ダニ)駆除も完了したところで、わたくしは再び胸を大きく張って高笑いいたしましたの。

 すると、


「ほう。我の知らぬ間に宇宙最強になったのか?」


 と、背後から声をかけられましたの。

 聞き慣れている殿方の声。

 振り向いて確認いたしますと、


「探したぞフォル。アルノ」

「メーシュー……!」

「げっ……あら。うふふ。メッシュお兄様」


 いつの間にやら、メッシュお兄様が傍に立たれていましたの。

 アルノちゃん様は、嬉しそうにお兄様へ飛びつき抱きつきなさりましたわ。


「う、うふふふふ。メッシュお兄様~ごきげんよう。ど、どうしてこんな田舎世界へ足をお運びに?」

「お前たちを捕まえ連れ戻すためだ。アルノの体内には我の魔力をわざと残留させていてな。すなわち次元を超える発信機の役割を担っている。そしてフォル、お前ほどの魔力を持つ者が発信機の傍にいれば次元を捻じ曲げゲートを発生させ、すぐに傍へ行くことが出来るのだ」


 発信機?

 初耳ですの!


「あらお兄様! そんなのプライバシーの侵害ですことよ。どうしてアルノちゃん様に発信機なんかを付けてらして? ロリコンだからですの?」

「ロリコンではない。どうしてかと言うと答えは簡単、こういう(・・・・)時のためだ」

「な、なーるほどー……ですの……」

「研究所職員がお前たちの脱走に気付き、すぐ我やサディート、それにお前の母親へ連絡を寄越してきた。だから我がこうやってわざわざ迎えに来てやったのだ」

「お母様にも、連絡が……ふーん、ですの……」


 しまったですの。

 メッシュお兄様やお父様相手なら、泣いたり拗ねたり関係ない事を言ったりで誤魔化せるのですけれども、お母様は…………ううぅ。

 またお尻を叩かれちゃいますの。


「しかし無理矢理ゲートを作ったせいで、右手の治療がまた一日は遅れてしまうな」


 メッシュお兄様がそう言って、右腕を軽く擦っておられますの。

 お兄様の右腕は、二日前に神獣さんとの戦いで負傷なされて療養中。今は手の平の途中まで再生なさってて、包帯でぐるぐるミイラみたいになってますわね。


「それは大義でしたわねお兄様。でもわたくしのような美しいレディをお迎えするための犠牲になれたことで、右手さんもお喜びになられていると思いますわよ」

「自分でそれを言うか。まあ良い。そういう事にしておこう」


 あら。メッシュお兄様が珍しく笑っておられますの。

 アルノちゃん様は、そんなお兄様の腕にぶら下がって楽しそうにされてますわ。


「ふむ……それにしてもこの世界は地球に似ているな。漂う空気や匂いが近い……まあすぐに別物だと分かる程度だが」


 と言って、お兄様は(ザコ)の死体を一瞥されましたの。

 ──って、「地球に似ている(・・・・)」ですって?


「あら。もしかして、この世界って地球ではありませんでしたの?」

「そうだ。気付いていなかったのか?」

「はー? わたくし当然気付いていましたの!」


 と、つい強がってしまいましたけれども……まあ、気付いてなかったと言えなくも無いですわね。

 でもどうりでお菓子がお口に合わなかった訳ですの。


「ともかく帰るぞ。フォル、お前は母親への言い訳でも考えておくことだな」

「うぅぅ……お兄様はいぢわるですの」

「意地悪ではない」


 魔界へ帰還する準備をなさっているお兄様の背中を睨みつけながら、わたくしは頬を膨らませましたの。

 でもわたくし、大人の不法な圧力には負けませんことよ。

 隣にいるアルノちゃん様へ軽くウインクをして、小声で言いましたの。


「また御一緒に異界へ遊びに行きましょうね。アルノちゃん様」

「うん。またあそぼ……きゃふふ」


 アルノちゃん様に仕掛けられている発信機を無効化する方法。次までに研究しておきますわよ。


クソガキ編おしまいです。

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100話まで来れました。ありがとうございます。

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