表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/22

15



 翌日、深夜十一時。私は差出人X氏の指示通り“衛星三番”、山岳地帯奥の特殊医療刑務所の裏側に潜んでいた。

(一応それっぽい準備で来てはみたけれど、こんな感じで大丈夫かしら……?)

 闇に紛れ易いようにと、纏うのは全身黒のボディスーツだ。腰には折り畳みナイフと応急処置用の薬草を始め、必要最小限の荷物入りのポシェットを装着。防御面に不安は残るが、仮令防弾チョッキを着た所で頭を撃たれれば終わりだ。ならば軽量化に努め、異能に因る奇襲に特化した方が私らしい。

「ごめんなさい。少しだけ力を貸して」

 手近に生息する蔓達に頼み、数本抜き取って胸元へ忍ばせる。今夜のターゲットは四人。素人なりに頑張ってはみるが、到底ナイフ一本では処理し切れない数だ。彼等の力を最大限借りたとしても、リベンジマッチを余儀無くされる公算は非常に大きい。

 どうやらこの刑務所は名称通り、治療がメインの施設らしい。林の中に聳える灰色の長方体には有刺鉄線の塀も、監視塔から降り注ぐサーチライトも見当たらない。警備員の巡回もおざなりで、ひよっこの私ですら易々と抜けられた程だ。

(もしかして、このザル警備も考慮の上で鍵を同封したのかしら?だとしたら重ね重ね凄い事だわ)

 消灯過みの刑務所内は静まり返り、耳を澄ますものの無音だ。だが、施設内には恐らく夜勤の刑務官いる筈。名簿にはターゲット達の独房番号も記載されていたが、さて。構造が不明な建物内で、どうやって辿り着いたものか……。

(いいえ、ここで悩んでいても仕方ないわ。取り敢えず今夜は、この電子鍵が本物かどうかさえ確認出来ればいいのだから)

 仮にこの見るからに頑丈そうな裏口が開けば、名簿自体にもかなりの信憑性が出てくる……約一名を除いては、だが。

 再度人目が無いのを確認し、茂みから抜け出してドアの前へ。ポシェットから鍵を取り出し、ノブの下の鍵穴へと挿入する。


 ガチャッ、キィ……。「嘘、開いたわ……」 


 頭がギリギリ入れられる位扉を開き、中を覗き込む。こちら側はどうも緊急避難用通路らしい。非常灯に照らされた廊下は幸運にも無人。取り敢えず第一関門は突破のようだ。

「お、お邪魔します……」

 馬鹿丁寧に挨拶し、恐る恐る刑罰の地へと足を踏み入れた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ