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誓いは立ててみたものの、私にはターゲットの情報が致命的に不足していた。保護者達へ訊く訳にもいかない上、私では“銀狐”へ依頼を出す事すら出来ない。
「大丈夫か、桜?言ってくれれば手伝うが」
「いいえ、これは私の問題。アダムは自分の標的に集中して」
一方“蒼”はと言えば、自分達の顔を知る人間は近い内に消さねばならない、と小父様を説得。既に必要な情報も手渡されていた。宣誓当夜志願したのだ。アンダースン三姉妹は自分が始末する―――、と。
「やれやれ。君も難儀な性格だね、桜」
正門のポストへ行く道すがら遭遇した相談相手は、如何にも呆れた風に呟く。
「嫌になる程知ってる。ねえ、何か良い知恵は無い?」
「そう言われても僕と違って、君の異能は情報戦向きじゃないからなぁ。いっそ清掃員に成りすまして潜り込むとか、ドラマみたいに」
成程、悪くない。実行犯が対人恐怖でさえなければ検討に値する案だ。
「まあ、そう簡単に重要機密が手に入るとは思えないけどね。大体さ」
くるっ、左回りにターン。
「桜―――君、殺人なんて出来るの?」「出来る出来ないじゃないわ。やるの」「あっそ」
呆れるかと思いきや、淡々とした態度で反対側に回転する。
「ま、見てる分には面白いからいっか。それにその感情―――僕にも覚えがある」
珍しく真摯な口調で呟き、長い睫毛を一瞬伏せた。
「覚え……もしかしてジョシュア、あなたも誰かの復讐を……?」
「だとしたら教えでも請うかい?非力な君でも殺せる方法を、さ」
少年はそう茶化した後、翳りの表情を浮かべる。
「御免。でも出来れば、君だけは血で手を染めて欲しくなかったよ。『あの人』に雰囲気の似た君には……」
「……」
「それに僕から見れば、君の覚悟なんてまだ全然甘いよ。そんなだから……まぁ、やりたいようにやってみれば?」
「見逃してくれる、って訳?」
「僕は誰の味方でもないよ。今までも、これからも」
クルッ。彼は踵を返し、スタスタと『ホーム』へ帰って行く。その小さな背中へ、そんな事無い!否定の叫びをぶつけた。振り返った彼は、ほら、皮肉気に微笑む。
「だから甘いんだよ、君は」
「これが性格なの。仕方ないわ」
だよね、肩を竦め、改めて場を後にする“紫”。もう、相変わらず素直じゃない子。
(だけど、珍しいわね。ジョシュアが自分の過去に言及するなんて……相談に乗ってもらったお礼、考えておかないと)
脳内予定表にそう書き付けた私は当初の目的のため、再び歩を進めた。




