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弟の笑顔@-ケモナー-

3話目です、1話めから是非どうぞ



……ガチャッ


……スチャッ(本棚の床にあまり音を建てず着地した音)


「……んー……」


 クールに知らないふりを装うオレ


「ん……? 何 兄ちゃん……」


 うわ……なんか物凄く邪魔なものを見る視線感じるよ。


 お楽しみ邪魔しないでね的な……。


 恐る恐る振り向きながら、必死に言葉を考える。


 若干冷めた目で、こちらの様子をうかがいながら机に向かう弟だった。


「いや……すまんな、余りにも暇で、何かいい本あったら貸して欲しいんだが」


 よしっ、我ながら良い返事だったと思う。


「……」


 あれ……? なんか変なこと言った?


「ぉ……ぉぅ?」


 どうした、弟、適当に本を紹介してくれよ。


「……三日前も同じこと言ってなかったっけ?」


「そ、そうか?」


 そういえばそんな気がする。 それから本を買った様子は無いわけで無駄な問いかけになってしまった。


「おやつタイムだから暫く邪魔しないで欲しいんだけど」


「あ、嗚呼……ところで、オレの名義にしてしまった小包中身は何だ?」


「ぅっ……」


 弟は、ギクリと二歩ほど動いてオレと机の間に立ち、机に背を向けて少しだけ視線をそらした。


「……ぁ……え……っと……」


「……ん?……」


 中身知ってるから別に良いんだけどな。


「……」


「無理に答えなくていい、別にそんなに気にしてない」そう言おうとした時だった。


「……さ、参考書……」


「……ブハッ……」


 思わず吹き出した。


 夜のおかずの……?『萌えーっ』とか『○○たんカワユス』とか言いながら夜のおかずの参考書に使うんだろうか


「に、兄ちゃん!? だ、大丈夫?」


「嗚呼。 べ、べっ、勉強熱心だな、め……んじゃ、何かオレに出来ることがあれば言ってくれ」


「珍しいな」と言おうと思ったが自爆させてしまいそうな気がしたので言葉を飲み込んだ。


 それから、ベッドに背中を預け、弟がどうしてあんなのにハマったのかを考える。


 弟が歓喜の奇声をあげていたのを本当に数年ぶりに聞いた気がする。


 それから、十分ぐらい経っただろうか、お袋の足音が階段を登ってきたので、弟に何か手伝わせるつもりだろうか?


 ……待て、今お楽しみ中かもしれない。


 お楽しみ中を親に覗かれるなんて、兄弟間以上に気まずいはずだ。


 オレは慌てて立ち上がり、部屋を出ようとすると、片方の足のふくらはぎに激痛を感じた。


「うごっ……」


 どうやら急に動いたため足をつったようだ。


 しかし、弟のメンツは兄が守らないといけない……。


「ぐっ……」


『トントンッ』


 母が弟の部屋をノックする音、


「ねぇー、ちょっとコンビニでお醤油……」


 そう言いながら母は弟の部屋にドアノブを回そうと手を伸ばす


「あーあー、えーぇ……どうした? おふくろ? 買い忘れか? オレが、オレが行こうか?……(つぅ)っ……」


「だ、大丈夫?…… いいわよ、智也(ともや)に頼むから」


「い、いいや、今日運動してないからさ、オレが……オレが行く、行きたいんだ、オレに行かせてくれ」


京也(きょうや)がそういうならいいけど……」


 明らかに怪しいだろうか、ここは、お駄賃代わりに何か買っていいかと許可を貰えば極自然なはずだ。


「……嗚呼、おふくろ、代わりにアイス一本買って来てもいいか?」


「嗚呼……うん、じゃぁ、私のもお願い」


「おっけー……じゃぁ……行って」


「行ってくる」そう言おうとした時だった、弟の部屋の扉が開いた。


「……どしたの……?」


 ちょっと冷めた目の弟、服装は部屋着の黒にオレンジの一本の縦線が入ったジャージを着ていた。


「あ、買い物頼もうと思ったんだけど、京也が行くから、大丈夫よ」


「……ふーん……」


「おぅ、代わりにアイス買ってくるが、オマエも何かいるか?」


「……行く」


 弟の何気ない返事の一言の後、ふと弟の視線を感じた。


 それがどこを見ていたものなのかまでは分からなかった。


「……じゃ、千円渡すから、レシートとお釣り頂戴ね、醤油はいつものね」


 オレは千円を受け取り、外行きの服に着替えて、預かった千円を財布に入れた。


 いつも履くジーンズと適当なトレーナーに着替え終わってから弟の部屋をノックをした。


「準備出来たか?」


「嗚呼、うん」


 部屋から出てきた弟は、ジーンズを履き、上はファスナーのついた先ほどの黒に縦線一本のオレンジのジャージだった。


 まぁ……ギリギリダサくないファッションではあるとは思う。


 それから、300メートルぐらい離れたコンビニへ向かう。


 住宅街を抜けた所にコンビニはあるのだが、時刻は夕方に近いため、時折下校している学生や買い物に向かうママチャリにのったおばちゃんを見かける。


 2分ちょっとゆっくり歩くとコンビニは見えてきて、中に入って醤油を買う。


 弟は珍しく、数メートル後ろを無言で着いてきていた。


「……」


「……」


「……よし、アイス買うか」


「うん」


 それから自分らのアイスはともかく、おふくろが食べたいアイスがどれか分からないので


 弟とオレとでこれじゃないか? というものを1本ずつ買うことにした。


 オレは、チョコ系のアイス、弟はオレンジのジェラート系を選び


 オレがおふくろにと選んだのは、チョコモナカ、弟が選んだのは、パロムだった。


 会計を済ませて店から出ようとすると弟が着いてきていない気配を感じたので、振り向くと


「肉まん1つ」


「はい、ありがとうございます」


 ……肉まんか、中華まんケースからでてくるほくほくの湯気を見るとオレも食べたくなる。


 仕方ない、ここは、一方的だがオレが奢ってやろう。


 オレはレジ前に戻ってから、財布から200円を取り出し、それを出してから。


「オレが奢るわ」


「ん……」


 と言ってから、肉まんをもう1個追加注文した。


 そもそも、3000円ぐらい買い物をしていた弟は多分懐が寂しいだろうし。


 たまには兄貴らしさを見せるのもいいかもしれない。


 帰り道、せっかくなのでホカホカの肉まんを頬張りながら帰る。


 久々に弟と兄弟らしい時間を過ごしている気がする。


「うまいな、肉まん」


 肌寒い風が体を撫でるが、その分肉まんのあったかさと肉汁が身にしみて、本当にうまい。


「……ん」


「どした? 元気無いが悩み事でもあるのか?」


「……ん? 大丈夫、あっ、兄ちゃん、肉まんありがと、本買って金欠だったから」


「嗚呼、別に構わんぞ、100円ぐらい、寧ろ、肉まん食べるキッカケくれてサンキューな」


 そう言ってから開いてる方の手で弟の頭を撫でた。


「んっ…」


 はっと我に返って慌てて手を離す。


 弟の頭を撫でたのは何年ぶりだろうか。


 それから、食べ終わって間もなく家に着く。


 帰ってからおふくろにどっちが食べたかったかを聞くと。


 弟が選んだパロム の方だったようだ。 勝負したわけじゃないがちょっぴり悔しい。



 それから、部屋に戻ってパソコンでゲームをしていると1時間程経ってから、ドアをノックされて


「ん? 何?」


 と返事すると、無言で弟が入ってきた。


「どした?」


「……なんでもない、ちょっとここ居ていい?」


「嗚呼、うん別にいいけど」


 それから弟は、時折スマホをいじりながら机の椅子に座るオレに視線を送るも


 振り返ると慌てずスマホに視線を戻していた。


 ちょうど区切りがついたのでゲームをやめてパソコンをシャットダウンしようとすると


「兄ちゃん、頼みがあるんだけど良い?」


「うん?」


 そんなことだろうと思っていた。


「これ、小説って書いてあるフォルダー見ておいて欲しい、自作なんだけど……」


 そう言って弟がポケットから出したのはUSBメモリだった。


「へぇー、自作小説? 凄いな、読んで感想言えば良い感じ?」


「うん」


 受け取ってからUSBメモリをパソコンにつないだ。


 中には、小説と書いてあるフォルダーと一枚の絵があった。


 メモ帳形式で6つある作品は、平均すると16kbで


 2bで1文字なので1つあたり8000文字のようだった。


「全部読めるか分からないがとりあえずフォルダーごとコピーしていいか?」


「うん、いいよ」


 そういってからフォルダーをドラッグ&ドロップして中に入っている絵が気になりつつもUSBをメディアを抜く操作をしようとしたその時だった。


「あ、あのさ、兄ちゃん」


「ん?……」


「その絵も見て欲しい、どう思うかな……って」


「嗚呼、うん」


 フォルダー画面を開いてから、ダブルクリックでその絵を開いた。


 予想を言えば、もぐもぐさんの絵だろうか?


 そうは思ったのだが、別の絵だった。


 3頭身ぐらいの犬っぽい獣人、絵本に出てきそうなキャラ立ちだった。


「おっ、可愛いね」


「本当? 兄ちゃん……実はさ……」


「ぉぅ?」


 率直に出た『可愛い』という感想。 その言葉に少し嬉しそうに弟は、オレ自身が数時間前に仕入れた情報を説明してくれた。


 人型の犬で、一応 犬獣人と分類されるみたいでそういうのが好きと告白された。


 その後に、「もうちょっと見てくれる?」と言われ、弟の部屋に案内された。


 1分程弟のベッドに腰を掛け待っていると準備ができたようで、「来て」と言われ


 スライドショーを見せられた。


 絵のタッチや獣人の頭身、更には画風も様々だった。


 先ほどの3頭身の可愛い絵本タッチな絵の別のイラストだったり、既に昼見てしまったもぐもぐさんの絵だったり。


 更には、ドラゴンや龍の絵もあった。 どうやら幻獣系も好きなのだろうか?


 とはいえ、どれも一生懸命 or 楽しんで書いているんだなというのが分かった。


 その旨を伝えると弟は少し笑顔になった。


「こういうの好きって変かな?……」


「ん?…… いや好きは人それぞれだろう、オレは別にいいと思うぞ」


「……そっかぁ…、えっと……」


「うん?」


 何かもじもじと言いたげな弟


「な、なんでもない…… じゃ、小説読んで感想聞かせてよ? 文が肌に合えば……だけど」


「嗚呼、うん」


『文が肌に合う』その言葉に少し疑問を持ったが


 後ほど調べてからなんとなく意味が分かった。


 小説以外にも、マンガや絵のタッチが 受け入れられない、受け入れられる。などを肌に合う、合わないというらしかった。


 確かに、100人中100人に認められる作品ってのはほぼほぼ無いわけで……。


 それから、部屋に戻ってUSBを返してから、小説を1個だけ読んで、感想を言うと結構喜んでいた。


 内容はというと、さきほどの3頭身獣人のキャラをイメージにしているみたいで


 それらが何気ない日常をする話だった。


 好きから嫌いか?と問われると、


「『どちらかと言えば好き』でもオマエの文章は温かくて好き」


 と言うと、恥ずかしそうに2度、ぽかぽか叩かれてから


「……ありがとう、兄ちゃん」


 と例を言われた。 それから、弟は自分が獣人好き、なケモナーという人種であることを告げられた。


「そっか、オレもその『ケモナー』になった時はよろしく頼むわ、先輩!」


 それから、先に風呂に入って、弟の部屋をノックし弟にバトンタッチする際、絵師さんの名前を聞いて、その絵師さんのHPを訪問している自分がいた。


 我ながら……オレが弟の影響をこんなに受けるはずがない……。


 でも、なんか楽しそうでよかったな。

ちょっと弟とくっつきすぎただろうか……。

他にも執筆している メインの異世界生活始まりました。(仮) や かじぺじのリアル版風小説 BEASTWORLD も良ければ読んで頂けたら幸いです。


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