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偶然でも必然でも、スカートの中を見てしまったら申し訳ない気持ちでいっぱいになる


次の日、テストも終わって残るのはテスト返しだけとなった学校では、二学期に行なわれる学園祭の役割について話し合いが始まっていた。

テスト返し以外の時間は自習となっているので、話し合いはHRの時間で行なわれる。


「ではまず、何をやるのかについて意見がある人は言って下さ〜い」


学園祭実行委員である女の子が声を張り上げて言う。


「はいはーい!裸エプロン喫茶をやるべきだと思いますっ!!」


「何か意見はありませんかー?」


貴也たかやのアホ発言をスルーする実行委員。最初こそ貴也の奇行に驚いていたクラスメイト達だったが、3ヶ月も経つうちに慣れたのか、大概貴也の事を無視するようになっていた。というかクラスの女子の中では貴也はこのクラスにいない事になっているらしい。


自業自得なので可哀想とかは全くもって思わない。


「ん〜、じゃあ龍ヶりゅうがさき君はなんかないかな〜?」



龍ヶ崎とは僕の名字の事だ。

貴也が奇行に走った時は大抵僕の名が呼ばれる。

というのも貴也と仲がいいと思われており(不服)、貴也が奇行に生じた時は僕が止める事になっていた。

つまりストッパーとして動けという事で、貴也がアホ発言をしないように何か意見を出せという圧力をかけてきているのだ。



「……や、焼きそばとか?」


「ん〜普通ね。まぁいいや、他に意見ある人いますか〜?」


ふ、普通の何が悪いんだ!いいじゃん焼きそば!パンに挟めば焼きそばパンになって、持ちながら食べられるんだぞうっ。焼きそば舐めんなっ。


「え〜と……じゃあ水無月みなづきさんは、他に意見ありませんか〜?」


その名前にクラスの雰囲気が変わった。


「…………その出し物には、私も参加しなくちゃいけないのかしら?」


水無月と呼ばれた少女は静かに答えた。まるで自分には関係ないと言わんばかりに。


「え、えっと。クラスの出し物なので、参加はしていただけると嬉しいです」


「あなたの意見は聞いてないわ。強制かどうか聞いてるのよ。あなた耳が悪いの?」


「あ、すみません……えっと、強制です。」


「そうなの……。なら私の意見はそこら辺に落ちている変わった石の展覧会でよろしく」


嫌な空気とでもいうのだろうか。

取り敢えずそんな感じの空気がクラスに流れる。


水無月みなづき 零奈れいな

貴也にこそ劣るが、立派な変人である。

自己紹介の時に『必要連絡時以外は話しかけないでください』と言うほどの変人だ。マジでこんな人いるんだなと驚いた記憶がある。

変人というか彼女は周りに毛ほども興味がないみたいだ。

当然友達などいる筈もなく、クラスでも浮いている存在だ。


何故そんな彼女に意見を求めたのか知らないけど、実行委員の勇気に敬礼をする。


ここで不穏な空気を吹き飛ばすかのようにまたあの男が動き出した。


「はいはーい!裸エプロンがダメならメイド喫茶でいいと思いまーすっ!!」



ここで貴也の発言にクラスがざわつく。

そのざわつきは『あの浜野貴也がマトモな意見を出しただとっ!?』という驚きの元に起こった。


そしてざわつきは『いいんじゃないか?』へと変わる。


「え、え〜では……メイド喫茶も候補に入れるとして……ほ、他に意見はありますか〜?」



さすがにいつものように無視は出来なかったみたいだ。得意げな貴也がムカつくが、まぁこれは奴の作戦勝ちだろう。


初めに大きな要求をして、その次にそれよりも小さい要求をする事で、本来の要求を受け入れやすくする寸法だ。


あのバカに考えがあって発言したのかはわからないけど、結果的に奴の意見は通ったのだった。


「え〜じゃあ私達のクラスの出し物は、『焼きそば』で決定という事でいいですね?では残りの時間は自習ということで、これで学園祭の出し物についての話し合いは終わります。」


……いや、うんまあ。通ったからといって選ばれるとは限らないよね。

貴也、僕を睨むのはお門違いだと思うんだがな。


こうして僕のクラスの出し物は焼きそばになった。



夏休みまでの残りの時間割は午前日課なので、掃除をやって帰宅となる。


掃除は月毎に何処をやるかが組み分けされており、僕は共通実習室という所に分けられていた。


メンバーは、クラス委員長。学園祭実行委員。水無月。貴也。僕。の五人なわけだが……

ここで詳しく他の皆の自己紹介をしようと思う。


まずクラス委員長。

名前は 潤井川うるいがわ 清美きよみ

外見は三つ編みメガネで典型的な委員長という感じ。気遣いもよくできるとてもいい子だ。

先生からの信頼も厚く、そして胸がデカイ。


次は学園祭実行委員。

名前は 赤羽あかばね 千夏ちなつ

茶髪のショートヘアで元気がいい。いつもスパッツを履いており、走るのが大好きといった感じだ。

クラスでもムードメーカー的存在で皆に薦められて実行委員に立候補していた。


水無月みなづき 零奈れいな

先程も言ったように変人。

しかし頭脳明晰、運動神経抜群、オマケにポニーテイルがよく似合う美人でもあるので、入学当初は告白三昧な状態だった。

まぁそれも彼女の人間嫌いともとれる発言や行為によって直ぐに沈静化することとなったのだが。


浜野貴也はまの たかや

長身の痩せ気味。

真性のクズ。


僕、龍ヶりゅうがさき 鋼介こうすけ

短髪黒髪。前回のテストは学年2位、ちなみに1位は水無月。運動神経も普通にいい。顔も悪くない気がする。

貴也のストッパー的存在。クラスで1人はいる休み時間にふて寝するタイプ。



何故急にかしこまって自己紹介を始めたのか、それは今の状況を良く理解してもらうためだ。


「赤羽よ、何故貴様はスパッツなどを履いている?確かにそれはそれで妄想を掻き立てるが……パンツが見れないじゃないか。お前は胸が小さいんだから、頑張らないと……」


「龍ヶ崎君?何か幻聴が聞こえ出しちゃった。君が何をするべきか分かるよね?」


「……はい。わかります……」


「委員長、今日も今日とて素晴らしい胸だ!俺とともに保健体育を学ばないかい?」


「龍ヶ崎君。私も急に頭が痛くなってきちゃった。どうすればいいかな?」


「少し待っていてください。今すぐそこのクズを黙らせます」


「水無月ぃいい!!今日も君は美しいぃ!罵ってくれぇええ!!」


「…………龍ヶ崎君、何してるの?」


「カスがいい加減にしろやぁああ!!!」


貴也の鳩尾に蹴りを突き刺すように入れる。


ただでさえこの班には問題児が多いのに、僕1人では貴也のセクハラをとてもフォローしきれない。

という事を知ってもらいたかったからだ。


赤羽は女子に壮大な人気を持っているので、敵に回すと残りの2年半以上の学校生活は終わりと言っていいのでフォローは必須。


委員長も先生の信頼があるので、というか個人的に癒し系の委員長には嫌われたくないという気持ちが大きいので、フォローは最重要必須。


水無月は言わずもがな、あの凍てつく視線には耐えられない。フォローは必須。


三人とも魅力的な女性なので貴也の食いつきがすごい。

少し目を離したらすぐにセクハラを行ないやがる。

その度に僕が駆り出されるわけだ。


鳩尾に蹴りを入れて貴也を黙らせるころには掃除の時間は終わりを告げ、終了のチャイムが鳴り響く。僕はこのメンツでマトモに掃除をした記憶がない。


そんなこんなで今日も掃除をすることなく終わった。

と思っていたのだが…………。



「おいおい、いつもここの教室は汚いな。あー、水無月と龍ヶ崎は残ってもう少し綺麗にしていってくれ」


何故か今日は、いつもは来ない担任が様子を見にきていた。


サッサッサッ。


箒で掃く音だけが静かに教室に響く。


サッサッサッ。


はぁ、どうせなら委員長とが良かったなぁ。

水無月と二人きりとか心臓に悪いよ。まぁ天真爛漫な赤羽よりかはいいけどさ。


今日は龍神も家で留守番しているので、本当の意味での二人きりだ。ちなみに龍神は実体化させている。


そのため少し身体は気だるいが、昨日ほどではない。まじでヤバくなったら龍神はすぐに実体化を止めると言っていたので一応安全だ。


サッサッサッ。


「……….…これだけやれば、いいんじゃないかしら」


「え、ああうん。そうだね……じゃあ片付けよっか。箒は僕が片すよ」


「そう。ならお願いするわ」


差し出された箒を掴み取る。


「あっ、少し待っーーー!?」


水無月が何かを言いかけたが、僕はそれよりも早く箒を引っ張るように受け取ってしまった。


それがいけなかったみたいだ。


箒の後ろにある紐が水無月の手にかかっており、引っ張った事によってバランスを崩した水無月は、僕に向かってもたれかかってきたのだ。


そして予期せぬ事態に僕も倒れてしまった。


本来の僕ならこの程度で倒れることはなかったのだろうけど、龍神を実体化するために生気を吸われており、弱っていたので支えることが出来なかったのだ。


それでも僕は意地で、水無月に怪我のないように配慮しながら倒れる。


「うっ、ごめん水無月。大丈夫?」


「ええ平気。私の方こそごめんなさい」


覆いかぶさるように倒れた水無月は、下に僕がいたため怪我はなかったようだ。良かった。

水無月のポニーテイルが顔にかかりくすぐったい。

こんなにも女子が近くにいるのは初めてかもしれない。


「…………立ちたいのだけれど、手を離していただけないかしら」


「え?ああっ、ごめん!気づかなかった」


どうやら僕は無意識に水無月の腰に手を回していたようだ。

守る為にそうしたのか、それとも他の理由だろうか。是非とも前者であってほしいものだ。

気分を悪くしたかな、と確認を取るため水無月を見上げる。

その時、運悪く見上げた先には、すでに立ち上がっていた水無月がいた。


そして、僕の瞳には水無月のスカートの中がバッチリ映り込んでしまう。


この時から、僕は水無月 零奈という不器用な女性を意識するようになっていく。

















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